●Persons
新田章太氏:株式会社ギブリー 取締役
池田秀行氏:株式会社ギブリー 取締役CTO
山根淳平氏:株式会社ギブリー 執行役員
エンジニアが走り続ける陸上競技場でありたい
――「track」のお話に入る前に、まずは「codecheck」と「CODEPREP」でどんな課題を解決されてきたのか、教えてください。
新田章太氏(以下、新田):先にCODEPREPをリリースしました。2013年のことです。当時はまだ世界的にもオンラインのIDE(開発統合環境)やPaaSが珍しかった中で、初心者が手軽にオンラインでプログラミングを学べるサービスを目指して開発しました。シングルページアプリケーション(SPA)のフレームワークやVue.js、Reactといったフロントエンドのモダンテクノロジーまで学習できる点が特徴でしたね。
山根淳平氏(以下、山根):一方、codecheckはエンジニアの採用市場の課題を解決するものです。人事や経営者のような非エンジニアの方は、エンジニアのスキル評価がうまくできないために、正しいスキルマッチングができなかったり、あるいは現場任せになって、余計な工数がかかりすぎてしまうといった課題をお持ちでした。そこでスキルを可視化することと、社内の工数を削減することを目指したソリューションがcodecheckです。
池田秀行氏(以下、池田):実は、私は昨秋にギブリーにジョインしたばかりです。前職はゲーム会社でしたが、エンジニアを数百人採用してきました。当時はエンジニアのスキルを見るために、面談でホワイトボードコーディング[1]などを行っていましたが、それなりにエンジニアリングマネジャーの工数が取られていましたし、自動化できればいいなという思いはありました。
新田:codecheckの導入シーンで最も多かったのは、まさにエンジニアの新卒採用です。新卒採用を受ける学生候補者のうち、50%以上は地方在住というケースもあり、従来は企業が地方へ出張して、会社説明会やプログラミングテストの受験会を行うか、もしくは学生が何度も地元と東京を往復しながら選考を進めていく必要がありました。しかし、codecheckを利用すれば、地方在住の学生であっても、オンラインでいつでもテストを受験することができ、スキルフィットした企業の選考だけを効率的に進めることができるようになります。
池田:企業にとってみれば、広くリーチしやすくなったと思いますね。
山根:新卒採用以外では、社内アセスメントや中途採用、インターン選考でもご利用いただいています。プログラミングスキルを評価できるオンラインサービスは他にもありましたが、特定の領域に偏っていたり四択のクイズ形式であったりで、実務力を適正に可視化できているようには思えません。企業の採用担当の方からも「知識だけを評価しても、活躍できるかどうかという判断にはつながらない」という声が聞こえていました。その点、codecheckなら、Webアプリケーションの実装といった状況を設定してコードを書かせるという問題まで出せるということで、評価いただいてきたのだと考えています。
――CODEPREPとcodecheck、それぞれに特長があって良いサービスのように思いますが、なぜ今回trackへリニューアルされたのでしょうか?
新田:池田のジョインを機に、改めて僕らが向き合いたい社会課題は何なのかについて、時間をかけて話し合ったんです。プログラミング必修化の流れに伴い、最近ではプログラミング学習を支援する事業者が増えてきて、裾野を広げる活動がすごく進んでいる。一方で、プロのエンジニアとして活躍できる人材は、まだまだ足りていない現状があります。僕らが解決すべきは、この後者だろうと考えました。
企業のタレントマネジメント・採用・育成・評価を改善して、プロフェッショナルなエンジニアが働きやすい環境を増やしたい。エンジニアの自立を応援するサービスを提供して、国内のエンジニアリング力を高めるお手伝いをしたい。リニューアルに至った背景にはこのような想いがあります。
山根:その想いが「track」という名前にも込められているんだよね?
新田:そうですね。trackという名前の由来は、まずコンテンツの多様性ということで録音した楽曲を意味する“track”、あとは学習コースも“track”と言いますし、データを追跡するということで動詞の“track”でもあります。そして、シンボルマークにもなっている陸上競技場の走路としての“track”であり、エンジニアの成長の証として軌跡を意味する“track”です。エンジニアとは、技術や方法の進化を追い続けるアスリートではないかと、僕らは思っているんです。エンジニアが生涯にわたって走り続けられる陸上競技場でありたいというビジョンを、trackは表しています。
注
[1]: エンジニアの面談などで、指示したプログラムをホワイトボードなどに即興で書かせるテストのこと。池田氏がホワイトボードコーディングで主に見ていたのはアルゴリズムの知識、理解だったという。
ITエンジニアの選考時の能力把握・社内でのスキル評価・人材配置に悩む
リーダー・マネージャー・人事様へ
スキルチェックのデモにうかがいます!
ギブリーでは「」によるスキルチェックのデモにうかがっております。「採用におけるスキルのミスマッチをなくしたい」「自社のITエンジニア、ならびにエンジニアチームのスキルがよくわからない」「エンジニアを適材適所で活かし、生産性を高めたい」といった悩みを解決する糸口を、trackのデモからつかんでみませんか?
下記のWebページにtrackのサービス詳細がございます。そちらをご確認いただいた上で、デモをご希望される方は、同ページの「体験版デモ」よりご相談・お問い合わせください。
>>> track「サービス」ページ
他社の採用管理/タレントマネジメントツールとの連携も強化していく
――「track」になったことで、採用だけでなく育成にまで活用の幅が広がるということですが、企業にとってのメリットはどんなところにありますか?
池田:企業にアセスメントの話をうかがっていると、「学習の可視化のためにテストは必要。けれども、その次にはテストの結果をラーニングへとつなげたい。テストとラーニングをグルグル回しながら、エンジニアのスキルアップを図りたい」というニーズがありました。これらを1つのプロダクトでカバーしていけるのが、track最大のポイントではないでしょうか。
山根:「入社後何年で、どのくらいのスキルを身につけておくべきか」という基準や指標が、企業ごとはもちろん業界ごとにもあまり定まっておらず、キャリアマップやスキルマップを描けていない、という課題もあるんですよね。とはいえ、技術的な知識が不足している経営者や人事だけでは、どうしても対応が難しい領域。この課題に対して弊社では、trackの提供を通じてさまざまな企業で使われている技術などのスキルデータを集約し、業界ごとに標準化されたロードマップのようなものを提供できるのではないかと考えています。
池田:企業側のニーズとしても、HR(人事)領域のデータの蓄積は強く求められています。研修プログラムがしっかり整っているところであっても、テストしてデータ化して分析して評価するところまでをきちんと網羅できている企業は多くないと思います。そうしたところもサポートしていけるといいですね。
新田:trackへのリニューアルでは、システムも大幅に更新しました。例えば、trackを利用する中で蓄積された人材データを、人材の最適配置のためにも役立てていただけるように、データの持ち方や構造、分析できるデータセットを再設計しました。これにより、内定者のスキルセットに合わせて配属する部署を選定したり、特定のスキルを持った人を探して新プロジェクトにアサインしてみたりといったことが可能になりました。
これまで感覚的に行われてきた人事に、trackの定量的なデータをもとにしたアセスメントを加えることで、マッチングにおいて寄与できるものが大きくなったかなと思います。
――ただし、エンジニアのHRデータだけが切り離される恐れはありませんか? 他の部門も含めた人材管理という点から、他社のHRサービス/製品の連携についてどのようにお考えですか?
山根:まず、PMP資格[2]のようなエンジニアの周辺領域にあるコンテンツをカバーしていきます。また、採用管理ツールやタレントマネジメント系の外部サービスとの連携も視野に入れてtrackの開発を進めています。
池田:trackのデータをエクスポートして、外部サービスのほうでマージ(連結)してもらうイメージですね。
山根:タレントマネジメントシステムの中にはスキルチェック機能を備えているものもありますが、四択のクイズ形式で知識を問うだけだったりします。あるいは自己申告したスキルを登録するだけだったりとか。これではエンジニアの実務力を正しく管理することはできません。そのため、採用管理ツールやタレントマネジメント系のサービス/製品ベンダーさんから、trackと連携したいというお問い合わせをいただいています。
池田:今年度からは、そうしたアライアンスを大きく強化していこうと考えています。今後、trackはより使いやすくなっていくと思います。
注
[2]: PMP(Project Management Professional)はプロジェクトマネジメントに関する知識や経験を認定する国際資格。PMI(Project Management Institute)本部が認定している。
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他社・業界全体とスキルを比較する機能も標準で提供
――前身のcodecheckはプログラミングスキル評価を出力する“ツール”でしたが、trackでは評価データをさらに採用や育成などに利用するなど、エンジニア人材管理を効率化する“プラットフォーム”としての色合いが強まりました。これにより、ユーザーさんとの付き合い方も変わってくるのではないでしょうか?
新田:はい。私が昨年の10月からカスタマーサクセスチームを立ち上げ、個々の企業をきちんとサポートしていく体制を整えました。弊社のカスタマーサクセスチームは、ほぼエンジニアで構成されているのが特徴で、カスタマイズや実装のお手伝いをさせていただいています。データの比較・分析や、自社の課題の抽出、あるいは独自の技術をコンテンツ化したいといったご要望にお応えしています。
お客様からの期待としては、エンジニアと人事の橋渡しをするところが大きいですね。僕らは技術がわかるだけでなくHRの領域もカバーしていますので、企業の形式知としてデータやコンテンツを蓄積するお手伝いができるという点に、非常に価値があると考えています。
池田:codecheckで出せるレポートは企業内に閉じたものでしたが、trackではオフィシャルコンテンツとして、標準化されている技術領域についての業界比較ができるようになっています。加えて、お客様独自でスポットで強化したいところ、例えば「ゲームに特化したAIのアルゴリズム」を比較するコンテンツなどを、独自で作り込むことも可能です。どちらかだけでは足りません。二段構えでできるというのが大きいですね。そのバランスは企業によって異なると思いますが、複合的に見られるというのは優位性があると思います。
山根:そうですね。社内の橋渡しだけでなく、業界内のエンジニア同士の横のつながりを強めるハブになるような動きも最近は出てきています。エンジニア育成について迷っている企業同士が情報交換するだけでも、業界としてもっとこうなっていくべきだよね、という価値観のすり合わせができるので。
新田:お客様の中には、僕らのプラットフォーム上で“過去問題”をシェアしてくださっている企業もあります。オフィシャルコンテンツを僕らが提供していくだけではなく、trackを通じてお客様同士でナレッジシェアしていただけるようになると最高ですね。
山根:前身のcodecheckは、もともとテック系の有名企業で多く導入いただいてきましたが、去年あたりからメーカーや新聞社、金融系の企業などのご利用も増えています。もう、業界を問わずITエンジニアが必要な時代に入っているので、業界ごとのナレッジを溜めていくことは重要でしょうね。
池田:僕らはITエンジニアの定着や即戦力化も含めたオンボーディング(自立支援)を得意としています。採用から入社後数年くらいの若手エンジニアが自立自走できるようになるところまでを一貫して支援していきたい。そのためにも、将来的にはtrackがハブとなって、エンジニア同士がスキル情報を交換するようなコミュニティづくりも支援したいと考えています。
――なるほど、trackのスキル評価は展開力のあるコンテンツとなっていきますね。本日はありがとうございました。
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