パネリスト
最上 千佳子氏
日本クイント株式会社 代表取締役社長
システムエンジニアとしてオープン系システムの提案、設計、構築、運用、利用者教育、社内教育など幅広く経験。顧客へのソリューション提供の中でITサービスマネジメントに目覚め、2008年ITサービスマネジメントやソーシングガバナンスなどの教育とコンサルティングを提供するオランダQuint社(Quint Wellington Redwood)の日本法人 日本クイント株式会社へ入社。ITIL認定講師として受講生・資格取得者を輩出。2012年3月、代表取締役に就任し、これまで以上にITとビジネスとの融合に貢献していくことを目指し、講師・コンサルタントとしての活動も続けている。[主要資格]ITIL Expert認定講師
大場 光一郎氏
株式会社クラウドワークス 執行役員 CTO
2001年、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社へ入社。在職中、Rubyの導入支援やRubyを用いたクラウドサービスの開発・運用に従事。グリー株式会社インフラストラクチャ部門にて、開発環境からプロダクションをつなぐDevOps周りを担当し、GitHub Enterpriseの導入による開発品質の向上や、デプロイメント支援システムをRubyで開発。Rubyやソースコード管理に関する講演、著書多数。2014年1月、株式会社クラウドワークスに参画、執行役員CTOに就任。
城 尚志氏
株式会社富士通ラーニングメディア
ナレッジサービス事業本部 第一ラーニングサービス部
2000年に株式会社富士通ラーニングメディアに入社し、Javaやオブジェクト指向設計などアプリケーション開発技術の教育を講師として担当。その後、富士通グループの開発現場に出向し、電子申請システムといったWebシステム構築プロジェクトやパッケージ開発プロジェクトを経験。現在は、富士通ラーニングメディアに復職し、現場で感じたプロジェクトマネジメントの重要性を伝えるため、プロジェクトマネージャの人材育成に携わっている。[主な取得資格] Sun認定Webコンポーネントデベロッパ、PMP
モデレーター
市古 明典
資格Zine編集長
宝飾店の売り子、辞書専門編集プロダクションの編集者(兼MS Access担当)を経て、2000年に株式会社翔泳社に入社。月刊DBマガジン(休刊)、IT系技術書・資格学習書の編集を担当後、2014年4月より開発者向けWebメディア「CodeZine」の編集に参加。2015年11月、資格学習書と開発者向けWebメディア両方の経験を活かして、ITエンジニアのスキルアップを支援できればと思い「資格Zine」を立ち上げた。うさぎ姿は「ホップ・ステップ・スキル/キャリアアップ」の願いを込めて。
クラウドソーシングでこれから仕事をする人にも資格が効く
市古:2015年11月に立ち上がった「資格Zine」では、資格情報はもちろんですが、「取った資格をどう活かすか」「なぜ資格を取るのか」などについても様々な知見や意見を掲載しています。今回は、まさにその本質的なところを、それぞれの立場の皆さんにざっくばらんに、かつガチでうかがえればと思っています。
城:私自身は入社してまずJavaの講師となり、それから現場でエンジニアを経験した後、再び講師職へ戻ってきて、現在は特にプロジェクトマネジメントの人材育成に携わっています。そんな教育と現場を行き来した私は、資格を「ITスキルを効率的にのばしていく『ツール』」として大変価値のあるものと認識しています。
最上:ITに関連した教育およびコンサルティングを提供するオランダQuint社の日本法人で、代表を務めております最上です。主に講師・コンサルタントとして活動し、実際に資格取得を目指される方々と多く触れ合ってきました。資格の重要性を実感しているので、「資格ドリ」なんて揶揄されているように、資格を取得することが目的になっているのは大変もったいないと感じます。ぜひとも、自らの仕事のステップアップのためにアピールし、活用してほしいと思いますね。
大場:クラウドワークスの大場です。仕事を依頼したい企業と仕事を受けたい個人をマッチングするクラウドソーシングサービスプロバイダのCTOとして技術領域を担当しています。自分でもRuby認定資格のゴールドを持ち、Rubyのキャリアを作ってきました。やはりキャリアと資格が一致していることは大切だと思います。自分ももちろんですがまわりからも進む先が分かりやすくなります。クラウドソーシングでも、スキルのある人がサービスに登録直後で実績がない状態のときに、プロフィールに資格情報を掲載し対応できる仕事を明示すると、仕事を依頼されやすくなります。
資格で得た知識・スキルのうち実際に現場で役立ったのは何?
市古:なるほど、皆さんそれぞれの立場から資格についてお考えがあるんですね。でも皆さん共通して「現場で活かすために利用すること」を重視されている印象があります。その意味で、城さんは講師として教える立場から現場に行かれた希有な(?)ケースとして、ご経験を伺えたらと思うのですが。そもそもきっかけはどんなことだったんですか。
城:研修でどんなに知識やスキルを積んでも、やはり机上のものという印象が否めず、「本物」の現場を体験したいと常に思っていました。当時はJavaとWebコンポーネントのデベロッパー関連の資格を持ち、講師も務めていたのですが、自分が培ってきた技術が本当に現場で通用するのか試してみたくなったんです。そこで、自ら現場に出ることを希望しました。
最上:それは、上司のほうから打診があったんですよね。私が上司だったら、正直心配ですよ。すぐ戻って来ないか、鬱にならないかとか……。
城:まあ、上司はそれなりに心配したでしょうけど(笑)。希望するなら、やってこいと。
市古:ちなみに現場の反応って、どんな感じだったんですか。
城:「講師が来た!」って感じでした。で、「本当にできるのかな」と観察されていたと思います。それで入って翌日くらいにいきなり客先に連れて行かれて、「はい、要件定義やって」みたいな……。最初は戸惑いましたが、1週間ほどでだいたいやるべきことはつかめましたし、教育で教えていたこととさほどギャップはなかったですね。
市古:それは、順応性が高いですね(笑)。また、現場の人もすぐに仕事を割り振るとは、なかなかタフというか……。皆さんどのような評価をなさっていたと思われますか。
城:あえていうなら、自分が現場で評価されたとしたら、「技術の原理原則がわかっていること」にあったと思います。スケジュールに追われる現場では、どうしても動かし方ばかり考えがちです。でも、「なぜこう書かなくてはならないのか?」「なぜこう設計するのか?」などを考えてきた経験が活きることも大いにあるんです。
実際、プロパティを設定すれば動くものも多いので、原理原則がわからないまま作業している人も多いんです。それで動かなかったときに「なぜ動かないのか?」が究明できない。原因を特定するには、仕組みを深く理解している必要があります。幸い私は原因究明に必要な知識や考え方を、人に教える講師という職務を通じてもつことができていました。現場でもそれが評価されたのだと思います。