ビジネスと組織の成長スピードに、人事や組織が追いつけないという危機感
――CSEの立ち上げの背景に関する記事の中で、「組織のきしみ」や「このままいくと組織が破綻する」という切迫した表現を使われていました。そこまで危機感を抱かざるを得ない状況というのは、具体的にどんなものだったのでしょう。
メルカリのビジネスが成長していく一方で、メルカリで働く人の数も急激に増え続けています。もちろん、これまでもコーポレートサイド(人事や総務といった管理部門)では、業務の生産性を上げるために様々なサービスやシステムを導入してきました。しかし、社員数が増えるにつれ、いくつかの業務は複雑さが指数関数的に増えてきました。
そのような状況にあった2017年秋、CSEの前身であるCET(Corporate Engineering Team)を立ち上げた柄沢聡太郎(現Corporate Solutions Engineeringマネージャー)と社長の小泉で話し合ったところ、「このまま組織が成長し続けると、会社の仕組みや運営はどんどん厳しくなっていくだろう」という見解で一致したのです。
具体的な問題としては、例えば、いくつもあるシステム間の連携。今までは、CSVファイルを介して人手で行っていました。また、人員の管理もスプレッドシートでやっていたので、社員の増加や異動に追いつけず、人事のマスターを含めどれが最新のデータか正確に把握できなくなることがいつ発生してもおかしくない状況でした。「これはかなりまずい!」という危機感が管理者全員にありました。
――組織の実態が正確に把握できないのは、とりわけ人事管理には大きな問題ですね。
一方、人事評価についても課題が顕在化してきていました。組織が増えれば、その分レポートライン(この人の担当マネージャーは誰という評価ライン)も増えますが、組織が流動的だったため、不明瞭になる場面もありました。
――ビジネスの成長速度が、それを支える人や組織を追い越してしまっていたのですね。
拍車をかけたのが、メルカリならではの前向きな企業風土です。必要であると判断されれば、大胆な組織変更も躊躇せずに行われます。また、原則として 「メンバーが8人以上になったらチームを分ける」基本ガイドラインがあるため、チームの数もどんどん増えていきます。
あと、評価制度も「絶対評価」を採り入れています。全員の中での相対的な評価ではなく、市場におけるその社員自身の価値を評価するのですが、これも大変でした。40~50あるチームで行った各メンバーの評価に対し、複数の上長でキャリブレーション(調整)を加え、最後に経営陣が確定させるという評価フローを、当時はスプレッドシートで管理していた。2017年の時点で、これはもう来年には限界が来ると感じ、根本的な改革に着手しました。