サブネットマスク
IPアドレスでわかりづらい点が、ネットワークアドレスとホストアドレスの区切りが一定ではないことです。32ビットのうちどこまでがネットワークアドレスでどこからがホストアドレスであるかがいつも同じではありません。IPアドレスのうち、どこまでがネットワークアドレスでどこからがホストアドレスであるかを表すためにサブネットマスクを利用します。
サブネットマスクはIPアドレスと同じく32ビットで0
と1
が32個並びます。1
はネットワーク部を表し、0
はホスト部を表します。サブネットマスクは、必ず連続した1
と連続した0
です。やはり、ビットの並びではわかりづらいのでIPアドレスと同じようにサブネットマスクも8ビットずつ10進数に変換して「.
」で区切って表記します。または、/
のあとに連続した1
の数で表記する場合もあります。この表記はプレフィックス表記と呼びます。
原則として、IPアドレスにはサブネットマスクも併記して、ネットワークアドレスとホストアドレスの区切りを明確にするようにします。サブネットマスクを変更することで、ネットワークアドレスの分割や集約を行うことができます。CCENT試験では、ネットワークアドレスの分割を行うアドレス計算の問題が非常に重要です。具体的なアドレス計算について、次回詳しく解説します。
ネットワークアドレスとブロードキャストアドレス
サブネットマスクによって、IPアドレスのネットワークアドレスとホストアドレスの区切りがわかるようになります。ホストアドレスに注目して、以下の特別なIPアドレスがあります[7]。
-
ネットワークアドレス:ホストアドレスのビットがすべて
0
-
ブロードキャストアドレス:ホストアドレスのビットがすべて
1
ホスト部のビットがすべて0
はネットワークアドレスで、ネットワークそのものを識別するためのアドレスです。同じネットワーク上のホストには、共通のネットワーク部のIPアドレスを設定していることになります。そして、ホストアドレスのビットがすべて1
はブロードキャストアドレスです[8]。同じネットワーク上のすべてのホストにデータを送信するブロードキャストの通信を行うときに宛先IPアドレスとして指定するアドレスです。
IPアドレスを設定することでネットワークに接続する
ここで「ネットワークに接続する」ということについて、詳しく考えておきましょう。ネットワークに接続するときには、
- ①物理的な接続
- ②論理的な接続
という2つの段階があります。TCP/IPの階層でいうと、物理的な接続はネットワークインタフェース層で、論理的な接続はインターネット層です。
物理的な接続とは、物理的な信号をやり取りできるようにすることです。イーサネットのインタフェースにLANケーブルを挿したり、無線LANアクセスポイントへ接続したり、携帯電話基地局の電波を補足するなどして、物理的な信号をやり取りできるようにしなければいけません。ただ、それだけではなく論理的な接続としてIPアドレスの設定も必要です。
現在は、TCP/IPをネットワークの共通言語として使っていて、TCP/IPではIPアドレスを指定して通信を行います。そのため、IPアドレスがなければ通信できません。ホストにIPアドレス192.168.1.1/24を設定することで、そのホストは192.168.1.0/24のネットワークに接続したことになります。
IPアドレスの設定は、IT技術にあまり詳しくないユーザにとっては敷居が高いことがあります。DHCPなど自動設定を行い、ユーザにIPアドレスの設定を意識させないようにしていることが多いのですが、IPアドレスの設定まで行ってはじめて「ネットワークに接続」したことになるということをぜひ知っておいてください。
グローバルアドレスとプライベートアドレス
IPアドレスはその利用範囲によって、以下の2つの分類もあります。
- グローバルアドレス
- プライベートアドレス
グローバルアドレスは、インターネットで利用するIPアドレスです。インターネットでの通信を行うためには、必ずグローバルアドレスが必要です。グローバルアドレスは、インターネット全体で重複しないように管理されています。インターネットに接続するためにインターネット接続サービスを契約すると、グローバルアドレスが割り当てられるようになります[9]。
一方、プライベートアドレスは企業の社内ネットワークや家庭内ネットワークなどのクローズドネットワークで利用するIPアドレスです。プライベートアドレスの範囲は以下のとおりです。
- 10.0.0.0~10.255.255.255
- 172.16.0.0~172.31.255.255
- 192.168.0.0~192.168.255.255
このプライベートアドレスの範囲は、IT技術者の常識として知っておいてください。CCENT試験でも重要です。プライベートアドレスの範囲のIPアドレスは、クローズドネットワークの中で自由にどの範囲を利用するかを決めることができます。ただし、プライベートアドレスを設定しているホストからインターネットへは直接通信できません。プライベートアドレスはあくまでもクローズドネットワークの中だけで使うIPアドレスだからです。プライベートアドレスを設定しているホストからインターネットへ通信するためには、プライベートアドレスとグローバルアドレスの相互変換を行うNAT(Network Address Translation)が必要です。NATは主にルータなどのネットワーク機器で行う機能です。
注
[7]: これらは、ユニキャストIPアドレスではありません。そのため、PCやサーバなどにネットワークアドレスやブロードキャストアドレスを設定することはできません。
[8]: ブロードキャストアドレスとして、32ビットすべて1
である「255.255.255.255」を利用することもあります。
[9]: インターネット接続サービスの種類によっては、グローバルアドレスが割り当てられないものもあります。