手軽で人材情報の透明性が高い転職サービスを作りたかった
――「ミイダス」はこれまでにないタイプの転職マッチングサービスという印象を受けますが、その開発の目的や背景について聞かせてください。
結論から先に言うと、「手軽で工数がかからず、なおかつ情報の透明性が高い転職サービスを作りたかった」というのがねらいでした。
ご存知のとおり、人材紹介というのは料金がかなりかかるので、企業の担当者にとっては大きな負担です。一方で人材紹介業者の中には、企業の希望に沿うような面接対策をあらかじめ応募者にインプットして送り出すところもあります。これだと、たしかに採用されやすくはなりますが、入社してから「希望の人材と違う」ということになりかねず、お互いに良い結果を生むとは思えません。
また、従来の求人広告サービスでは、そのサイトの会員の中に欲しい人材がどれくらいいるのかわからない。明らかにマッチしない人が来たときには外さなくてはならない罪悪感もあります。
――その点、ダイレクトリクルーティングなら、欲しい人にしか声をかけないから確実だし、情報も正確に伝わりますね。
ところが、その割に日本で浸透しているかというと、そうでもありません。というのも、ダイレクトリクルーティングというのはものすごく工数がかかるのです。たとえば候補者が100人いるとして、一人ひとりのレジュメ情報を読み込んで、何とか10人くらいに絞り込んでオファーして、またそこから詰めていくとなると、人事担当者としてはもうそれだけで手一杯です。有効な採用方法とわかっていても、なかなか手を出せないのです。
求人広告の営業をやっていたので、こういう課題を解決できる良いサービスが出てこないかと思っていたのですが、10年経っても何も変わらないので、それなら自分で作ろうと立ち上げたのが「ミイダス」です。
企業と求職者双方が本当に知りたい情報をデータベース化して提供
――後藤さんが考える「良い転職サービス」の条件を、もう少し具体的に教えてもらえますか。
やはり、企業と求職者双方が知りたい事実(ファクト)を届けたいという思いが強くありました。両者とも、相手が本当に知りたい情報が何かを理解しないまま、一方的にアピールして失敗するケースが本当にこれまで多かったのです。
企業が求めている情報というのはほぼ決まっていて、たとえばIT人材なら「どこで、どういう開発を経験してきたのか」を知りたい。でも本人からは、それ以外の「根気があります」とか「協調性があります」とか、こちらが求めていない情報を一所懸命PRされたりすることがしばしばです。職務経歴書などは、特にそういう傾向がありますね。しかし、そんな欲しくない情報を延々とアピールされても、お互いに時間や労力がもったいないだけです。
反対に、企業から求職者に向けて情報発信する際も、まったく同じことがいえます。「当社は親睦に力を入れて、毎月バーベキューをやってます」みたいなことを言われても、そんなことに関心がなければ応募してみようという気になれません。
――肝心の欲しい人材のスキルや、一方で自分が入社した場合の待遇条件など、一番大事なことに直接関わる情報がなければ、次のステップに進むきっかけは作れませんね。
そこでミイダスでは、求職者がユーザーとして自分の情報を登録する場合に、企業が本当に聞きたい項目だけをピンポイントに絞った質問項目を用意して、それに沿って答える形で記入してもらいます。こうして企業が知りたい情報をあらかじめ登録しておけば、いきなり面接で的外れな自己アピールをしなくても済みます。つまり、「聞かれた項目に答えていけば、ちゃんとあなたの魅力が企業に伝わりますよ」というコンセプトなのです。
反対に企業側が募集を出す際も、求職者が強い関心を持っている情報を、業種や職種ごとに絞り込んで提示します。たとえば募集職種がエンジニアだったら、エンジニア出身の役員がいるかどうかはかなり重要なポイントです。あとは開発環境などの技術的な事柄はもちろん、自分の必要なソフトをインストールできるか、椅子にこだわっているか、就業中のイヤホンは許されるか……。些末なことですが、エンジニアにとってはバーベキュー大会よりも切実に知りたい話題です。
――それらを事前に知っておくことができれば、実際に面接に行くモチベーションも違うし、会った時点でお互いに「こんなはずじゃなかった」というミスマッチも減らせますね。
そういった一連のやりとりを、今まではずっと人間が行ってきたわけですが、そのノウハウは人材会社にしかなかった。その結果、企業も求職者も理由がわからないまま、同じミスマッチを繰り返していたわけです。そこで双方が必要な情報を効率よく知ることができるように、仲立ちのサービスとしてミイダスを作ったのです。