前編はこちらから。
HR Tech普及の足がかりは採用から?
――前編でご紹介いただいたオデッセイが実施したアンケートで、他に気になった結果はありましたか。
秋葉尊氏(以下、秋葉):「どのような業務でHR Techを活用できると効果的だと思いますか」という問いに対し、最も多かったのが「採用」でした。採用の領域は人手による作業が多いので、「新しい技術によって、自分たちの仕事を変えられるのではないか」という期待が読み取れた気がしています。
岩本隆氏(以下、岩本):採用は毎年あることなので、取り組みやすいのかもしれませんね。もともと予算がついているところでもあるので、部門長の権限内で導入できるという側面もあるのかもしれません。
秋葉:経営課題として人手不足もあるので、いい人材を効率的に採りたいという思いもあるのでしょう。
また、米国では以前からATS(Applicant Tracking System:採用管理システム)が非常に普及し、応募から内定までをフォローする仕組みが発達しています。応募者をきちんと管理する、もしくは応募者に応募意欲を衰えさせないようにうまく情報提供するといった仕組み作りや、面接のデジタル化にもHR Techが寄与できるところは大きいのではないでしょうか。
――採用の母集団形成で効率化を図るために、HR領域でマーケティングオートメーションを活用する動きも見られますよね。採用プロセスはマーケティングによく似ているということから、採用マーケティングという言葉も出てきました。
岩本:私のところにも、そうした研究依頼は来ていますね。テクノロジーが割と近いですから。採用のデータ化が進んでいる企業ではアドテクを使ったりしながら、母集団を集める取り組みを始めています。ただ、大企業では母集団の数を増やすことは容易でも、実は欲しい人材が来ていないことが往往にしてあるんですね。
秋葉:新卒採用の場合、社会人経験のない学生に対し、「この人は入社してうちで活躍してくれる人材なのか」を見極めなければなりません。そうしたポテンシャルを調べるハイパフォーマー分析をするところでHR Techを活用する企業もこれから出てくると思います。
岩本:国内では、介護や看護など、各領域に特化した採用関連のマッチングツールもいろいろと出てきていますよね。
採用といえば、新卒一括採用を廃止する動きがあります。そうなると、人事は応募者全員の能力を個々に把握しなくてはいけなくなります。もはや人力では難しいですよね。まだ何からどう手をつけてよいかが分からない状態ではあるものの、人事が持っている情報をデータ化しなければならないという機運だけは高まりました。