同調査は、KPMGグローバルが世界55か国・1362社(日本企業は65社)のHRリーダーを対象に、人事部門の現状と未来への展望を明らかにすることを目的として、2019年6月27日~8月4日にオンラインで実施したもの。世界全体と日本企業の結果を比較した内容をまとめている。
調査の結果、日本の人事部門の現状については、次のような特徴があることが分かった。
- 人事部門は「価値提供部門」ではなく「管理部門」とみなされている
- タレントマネジメントに関する自信度が低い
- 社内において人事が創出すべき新たな価値を模索している
このような現状の背景について、KPMGコンサルティングは、従業員が類似の価値観や能力を持つ「集団」から、異なる価値観や能力を持つ「個」にシフトしており、経営陣や従業員から人事部門に対するニーズに大きな変化が起きているという見解を述べている。
同調査の主な結果は以下のとおり。詳細な結果は、同社のWebページからダウンロードできる。
人事部門は「価値提供部門」ではなく「管理部門」とみなされている
「人事部門は、価値提供部門(バリュードライバー)ではなく管理部門(アドミニストレーター)としてみなされているか?」という設問に対して、日本ではグローバル平均を14%上回る60%が「強く同意する・同意する」と回答している。
タレントマネジメントに関する自信度が低い
タレントマネジメントに関する自信度の度合いについては、「(必要な人材の)惹きつけ」「離職防止」「育成」の項目において、日本の結果はいずれも「とても自信がある・自信がある」の割合が、グローバル平均より低いことが分かった。
社内において人事が創出すべき新たな価値を模索している
「現在多くの時間と労力を注いでいる施策」について、日本はグローバルと異なり、回答企業の57%が「組織内で価値を創出するための新しい方法の特定」と回答していることが分かった。
さらに、今回の調査結果に基づいた日本の人事部門変革に向け、同社からは以下のような示唆が出されている。
高まるエンプロイーエクスペリエンスへの関心
従来の日本企業は、従業員を「集団」で捉える傾向が強くあったが、労働市場が流動化し、労働者の価値観も多様化してきたことで、会社と従業員の関係が変化してきた。このような変化に対応するために、従業員個人のエンゲージメント(働きがい)を高める大きな要因である「エンプロイーエクスペリエンス(EX)」に関心が高まっている。魅力的なEXを提供するには、従業員の期待と実態との間に生じているギャップを把握した上で、人事と現場が一体となり解消していく事が重要である。
重要視されるビジネスパートナーとしての役割
多くの日本の人事部門は、これまで人事制度の運用などのオペレーショナルな業務を中心に担ってきたが、企業が従業員に求めるスペックの高度化・多様化により、従来型の人事業務の遂行だけでは経営や従業員への価値を発揮できなくなっている。今後、現場で求められる人材のニーズを把握し、量だけでなく質も見合った人材をタイムリーに供給できる必要性が高まってくることから、現場に寄り添いながら人的問題を解決できるビジネスパートナーとしての役割が重要になってくる。
人材データ分析の必要性を強く認識
これまでの日本企業の人事(異動配置などの要員構成)は、“勘と経験”に基づいた案の作成と現場間の利害調整が主な役割だったが、これからの不確実性の時代においては、データによる明確な根拠を基に提言し、意思決定を促すことが求められる。特に優秀な人材のエンゲージメントを高めるためには、従業員の「個」を適正に把握し異動・配置に活かすといった人材マネジメントの高度化は不可欠であり、人材データの活用は例外なくすべての人事部門の重要な課題となっている。