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二次会でのセクシュアル・ハラスメント(大阪地裁 平成10年12月21日)

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2020/07/08 06:00

 企業は人の集まりです。時には、思いも寄らない事件やトラブルが従業員の間で発生します。そうしたケースへの対応策として、過去の事例を知っておくことが、人事として重要ではないでしょうか。本連載では、訴訟にまで至ってしまったケースを取り上げ、事件の顛末と裁判所の判断およびその要点を説明した上で、訴訟に至った原因とそもそも取っておくべきだった予防策をお教えします。第1回の今回は、セクシュアル・ハラスメントが起こり、訴訟に至った例を紹介します。

1. 事件の概要

 ある運送会社(以下「会社」といいます)の従業員である女性社員(以下「被害者」といいます)が、会社主催の懇親会においてその上司である社員(以下「加害者」といいます)からセクハラ行為をされたことにより争われた事件です。

 加害者はドライバーで、被害者はオフィス・コミュニケーター(男性ドライバーとともにチームを組んで、徒歩でオフィス街にあるオフィスビルを回り、軽荷物、書類、貴重品を集配する業務を行う者)として勤務を行う者であり、被害者にとって加害者は上司の立場にありました。

 事件は、平成9年10月4日(土)に発生しました。

 同日の午後9時頃から、飲み会が開催され、メンバーは加害者、被害者、男性ドライバー7名、アルバイト1名、オフィス・コミュニケーター3名の13名が参加しました。

 午後10時30分頃に飲み会(一次会)が終了し、被害者はそのまま帰ろうとしたところ、加害者に「帰らんとカラオケに行こう。」としつこく懇願されたので、やむなく参加することとしました。二次会のカラオケには、12名が参加しました。

 そして、二次会のカラオケにおいて、セクハラ行為が発生しました。セクハラ行為の主な内容は以下のとおりです。

  • 被害者は、カラオケボックスの部屋に入室後、ある社員の横に着席しようとしたが、ちょうど対面にいた加害者から「命令だ」と自分の横に着席するように命令され、加害者の横に着席しました。
    その後、突然加害者が被害者の前に回り込んで両肩を押さえつけてソファーに押し倒しました。加害者は、ソファーに倒れ込んだ被害者の上に乗りかかり、顔を近づけ、とっさに顔を覆った被害者の左手甲にキスをしました。
  • 被害者は、加害者を避けようと席を移し、しばらく歓談していたところ、1曲歌い終わった加害者が突然被害者の額にキスをし、被害者の右隣に着席しました。
    そして、加害者は、被害者のスカートをめくろうと手をスカートにかけました。被害者がとっさに裾を押さえたので、めくられることはありませんでした。
  • 被害者が体を斜めにして加害者に背を向け、反対側に設置されていたモニターを見つめたところ、加害者は、「何で逃げるの」と言いながら、被害者の服の裾を引っ張り、被害者に無視されると、「そんなんやったらこの会社でやっていかれへんで」と言いました。さらに、加害者は、被害者がある社員に仕事が少ないと相談した件を持ちだし、「まじめすぎんねん。何でもまじめに考えるから、荷物が少ないとか余計なことを言ってしまうねん」などと仕事の話を始めたため、被害者はやむを得ず、その話を聞いていました。
  • 加害者は、今度は被害者の胸元に手を伸ばし、ブラウスのボタンをはずしたので、被害者は、胸元を手で押さえて席を立ちました。
  • 加害者は、「今日のこと旦那に言って、旦那が大阪支店に電話したりなどせんようにしてや」などと話し、加害者は、しばらくして帰り支度を始めた被害者の右隣に寄って来て、「もっと軽く考えないと、この会社ではやっていかれへんで」「この会社は上に行った者勝ちやねん」などと言いました。
    被害者に無視されると、加害者はさらに卑わいな発言を続けました。

 この他にも、加害者はセクハラ行為を被害者に行いました。

 被害者の夫は、同年10月6日夜に被害者から話を聞き、翌7日に、加害者の会社に電話で、被害者が加害者からわいせつ行為を受けた旨の苦情を申し立てました。

 会社の営業二課長は、電話があったことを聞き、午後9時ころ、加害者を連れて、被害者宅を訪問し、被害者の夫および被害者の父母に対し、「ご迷惑をかけたようで誠に申し訳ありません」などと述べて、話し合いで解決したい旨を申し出ました。

 その後、被害者は、同年10月27日、加害者らに対し、200万円の慰謝料の支払、謝罪ならびに本件の概要および加害者が謝罪したことを記載し、かつ、今後このようなことのないように指示する文書を全ての従業員に配布することを求めました。

 しかし、会社において、加害者にわいせつ行為の有無を確認できなかった旨回答したことから、訴えの提起に至りました。

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著者プロフィール

  • 坂本 直紀(サカモト ナオキ)

    人事コンサルタント、特定社会保険労務士、中小企業診断士、坂本直紀社会保険労務士代表社員。就業規則作成・改訂、賃金制度構築、メンタルヘルス・ハラスメント対策社内研修などを実施し、会社および社員の活力と安心のサポートを理念として、コンサルティングを行う。
    ホームページに多数の人事労務管理に関する情報、規定例、書式等を掲載中。
    主な著書に、「ストレスチェック制度 導入と実施後の実務がわかる本」(日本実業出版社)、「職場のメンタルヘルス対策の実務 第2版」(編著、民事法研究会)、『「働き方改革関連法」改正にともなう就業規則変更の実務』(清文社、共著)など。

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2020/07/08 06:00 /article/detail/2241
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