ライフワークスは、法政大学大学院の石山恒貴研究室と共同調査を行い、定年後に再雇用となったシニア社員(以下、再雇用者)で活躍している人が、組織内でどのようにパフォーマンスを上げているのかについて、その要因を明らかにした。本調査は2019年2月~2019年7月の期間において、企業の人事部が人選した再雇用者と役職定年者21名と、その上司18名から回答を得ている。
(同調査の詳細結果はこちらからダウンロードできる)
2021年4月に施行される改正高年齢者雇用安定法による70歳までの雇用延長に対して、企業の約8割は比較的現実的な問題と認識しており、すでに先進的な企業が就業環境や人事制度改定に取り組み始めている。一方で、60代前半層(60歳以上64歳以下)の雇用形態は嘱託・契約社員が57.9%と、多くの人が雇用形態の変更という転機を経て働いている。
同調査は大企業で働くシニア社員とその上司にインタビューし、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて、役割創造[1]に至るプロセスを明らかにした。そして再雇用者の活性化や、効果的なマネジメントの実施に役立つ要素を見出した。
再雇用者が活躍に至るまでに4つの段階があり、第3段階ではコミュニケーションの量・質の調整と、立場に合わせた仕事量の調整・人間関係における調整を行う。これは周囲との調和を図るための戦略であり、職場での再雇用後の活躍にあたっては、新たな居場所を作るこのプロセスが非常に重要であることが発見できた。
再雇用者の活躍は本人の努力次第だけではなく、上司の関わりが大きく影響する。パフォーマンスを上げている再雇用者の上司には共通する行動とスタンスがあることが、本調査で確認できた。
短期・中期・長期での再雇用者への働きかけの方向性
短期:上司ができる働きかけ
定年退職という節目で、上司は対話を通して再雇用者の経験や強みの棚卸を支援する。そのなかで再雇用者と役割を発揮する方向性を握り、それを職場内に周知する。
中期:人事部門ができる働きかけ
職域開発と、組織横断的なテーマを与えること、個々の専門性を把握し活用する仕組みを構築することを意識した職場づくりに継続的に取り組む。
長期:人事部門ができる働きかけ
活躍の場や選択肢を増やすための越境経験を、シニア期を迎える前から徐々に取り入れる。社外でも通用するという意識を持つことで、将来の選択肢が増え、それが能力開発を促進することにも繋がる。
注
[1]: 同調査では「組織において、自ら置かれた環境を理解し、経験や学習から仕事の意味付けを行い、組織内で新たな役割を作り出しパフォーマンスを上げている状態」を役割創造と定義している。