カルチャーオンボーディングとは
「カルチャーオンボーディング」は、入社者と会社・部署の間にあるカルチャーのギャップや、それをつかめないことが原因で実力を発揮できずにいたり、離職したりすることを防ぐために、「タテマエ」ではない会社の独自な文化について、入社者に理解・共感してもらうための施策です。我々HR Design Lab.は、カルチャーオンボーディング施策の切り口として、大きく7つを提案していますが、今回はその中から、最も分かりやすい代表的な3つの施策に絞って紹介します。
①カルチャーコードの作成・運用
「カルチャーコード」とは、日本企業においてよく見かける「社是」などの、いわゆる行動規範的な概念ではなく、日々の業務の中で発露される、自社らしい考え方や行動のクセを、「現場のわかりやすい言葉」で言語化したものです。
行動規範とは、「こう行動するべき」という、社会人としての模範的な行動の定義で、どちらかといえばトップダウン的に決まるものです。ここには「固有の文化」をつくるということはあまり意識されません。カルチャーコードとは、それをつくることを目的に、現場から「内発的」に導かれるものです。
しかし、これだけだと、今までの概念とあまり変わらないかも知れません。大きく異なるのは、社是や行動規範のように、一度コトバを決めたら長期間触らない、とするものではなく、内容を臨機応変に改編していくことを前提に運用する点です。会社にとって運用ポリシーは異なるかもしれませんが、カルチャーコードの使い方としてはこのような方法が正しいと考えています。
ではなぜ、オンボーディングにカルチャーコードが必要なのでしょうか。その目的とは、前職との「カルチャーギャップ」を感じることによる、入社後のストレスや、それに起因する早期退職が現場で生じないようにすることです。ギャップがあるのは当然なので、入社する前にそれを正しく伝えるべく、まずは自社として「自覚的」であることが求められます。また、組織カルチャーに基づいた「働き方」を早期に理解できることで、本人および組織全体の生産性向上につなげていきます。
カルチャーコードといえば、米Netflixの取り組みが一つの代表例でしょう。
米Netflixのカルチャー
- 各従業員の独立した意思決定を奨励している
- 情報をオープンに広範囲に意図的に共有している
- 驚くほど公平で、お互いに遠慮しない
- 非常に効果的なスタッフだけを雇用し続ける
- ルールを避ける
非常に具体的で、意図していることが非常に伝わるこのステートメントの背後には、膨大なカルチャーの解説資料があります。これは、2009年に発表されたVer.1で、「シリコンバレー史上最も重要な文書」とバイブルとして扱われています。
同社は、継続的に改編を行いながら運用を続けています。同社の事例は、カルチャーコードの参考事例としてもよく使われているので、一読の価値は大いにあるでしょう。
カルチャーを言語化するためのヒントを少しだけ紹介します。カルチャーとひとことで言っても、かなり幅広い概念であり、いろいろなレイヤーで定めることができます。いったん網羅的に並べてみると、恐らく以下のように整理ができると考えます(これら全て言語化すべきとは言っていませんよ!)。
- 創りたい社会の姿
- 変革したい何か
- 顧客への向き合い方
- 同僚との関係性
- 仕事に対する捉え方
- 働き方のスタイル
- 有している個人の資質
個人的に大好きなカルチャーコードの一つは、リクルートの旧社訓「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」というもの。創業者である江副さんがつくったもので、今でも同社社員の方に受け継がれている素晴らしい言葉です。
この旧社訓は「仕事に対する捉え方」というレイヤーに該当するものです。あれこれ語らなくても、これだけで強烈な「独自の臭い」を感じさせます。長い歴史の中で、企業文化に関連する概念の変更や新設が行われてきましたが、結局この言葉が根付いているというのは、それが紛れもないカルチャーになっていることの証左ではないでしょうか。