総合転職エージェントのワークポートは、全国の転職希望者493人を対象に、「リスキリング」についてアンケート調査を実施し、結果を発表した。調査期間は2021年8月25日~9月2日。
「リスキリング」という言葉を知っているか聞いたところ、「知っている」と回答した人は8.3%、「聞いたことはある」と回答した人が20.5%、「知らない」と回答した人が71.2%という結果だった。「リスキリング」という言葉は、まだまだ働き手にとっては馴染みのない言葉のようだ。
また、「知っている」「聞いたことはある」と回答した人の中でも、リスキリングを企業が推進する背景を「よく理解している」と回答した人は12%、「やや理解している」と回答した人は49.3%という結果で、4割程度の人はリスキリングという言葉は聞いたことがあるものの、それを推進する背景や意味を理解しておらず、取り組みそのものとしてもあまり浸透していない様子がうかがえる。
職場でリスキリングを受けているか聞いたところ、「はい」と回答した人は6.7%、「今後受ける予定がある」と回答した人が1.6%で、「いいえ」と回答した人が91.7%と大多数を占める結果となった。次に、「はい」「今後受ける予定がある」と回答した人にどのような内容を受けている、または受ける予定なのか聞いたところ、「DXやAIのeラーニング」や「UI設計」「ITパスポートの取得」「PC関連のスキル」など、ITスキル向上に関する内容を挙げる人が目立った。また、実際にリスキリングを受けた満足度を聞いてみると「とても満足」(12.2%)、「やや満足」(63.4%)と、7割強の人がおおよそ満足していることが分かった。
一方、リスキリングを受けていないと回答した人にリスキリングを受けたいと思うか聞いたところ、「とても思う」(47.1%)、「やや思う」(38.1%)とする人は合わせて85.2%となり、「あまり思わない」(11.3%)、「まったく思わない」(3.5%)とする人は合わせて14.8%だった。
リスキリングを受けたいと「とても思う」「やや思う」と回答した人にその理由を聞いたところ、「スキルアップ、キャリアアップのため」「仕事に生かしたい」「転職など今後に役立つから」と回答する人が大多数を占めた。また、これらの回答者にどのような内容のリスキリングを受けたいか聞いたところ、IT化やDX化が進んでいるという理由で、プログラミングなどのスキルや、AI、DX関連のスキルが身に付けられるようなリスキリングを受けたいとする人が目立った。そのほかにも、自分が今就いている職種や社会人としてのスキルアップにつながる内容(マーケティングやデザイン、コミュニケーションスキルなど)を学び、自分自身が不足している部分を補いたいという意見も数多く挙がった。
一方、リスキリングを受けたいと「あまり思わない」「まったく思わない」と回答した人にその理由を聞いたところ、「自分自身で勉強しているから必要ない」「業務的負担が増えるため」「実務を通して学べるから」とする意見が散見された。また、「そもそもリスキリングについて理解していないため、メリットが分からない」とする人も多く、働き手へのリスキリングの浸透度合いが低いことが、受けてみたいという意欲につながっていないことが浮き彫りとなった。
また、現在リスキリングは受けていないが今後受ける際にどのような懸念があるか聞いたところ、リスキリングを受けたいと思わないと回答した人が挙げていた「時間の確保ができるか不安」「負担が増えるのではないか」という意見のほか、「会社の自己満足的な内容にならないか心配」「実務と直結した内容が学べるのかが疑問」などのコメントが挙がった。
学び直しやスキルアップのための支援や取り組みを行っている企業に魅力を感じるか聞いたところ、「とても思う」(54.6%)、「やや思う」(34.9%)とする人は合わせて89.5%となり、「あまり思わない」(7.5%)、「まったく思わない」(3.0%)とする人は10.5%だった。ほとんどの働き手は、社員のスキルアップや教育に取り組む企業に好印象を持っていることが分かる。
一方、勤務先で新卒・新人研修とは別に、既存社員の学び直しの機会や新しいスキルを身に付けられるような取り組みなどはあるか聞いたところ、「はい」と回答した人は17.6%、「いいえ」と回答した人は63.1%、「わからない」と回答した人は19.3%という結果だった。「いいえ」「わからない」と回答した人を合わせると82.4%となり、多くの働き手は社内で学び直しやスキルアップができる機会を持っていないことが分かった。
2020年1月に同社が実施した「リカレント教育」に関するアンケートでも同様の質問をした際に、学び直しの機会があると回答した人は24.8%だったことに比べ、7.2ポイント減少している。コロナ禍において経営状況が悪化したために、教育への投資を削減せざるを得ないという企業の声も聞こえてくるが、それを裏付ける結果ともいえる。