坂東 龍(ばんどう りょう)氏
デライト・ベンチャーズ プリンシパル
2003年にDeNA入社し、広告営業やネットソリューション事業でのコンサルタントを経て、「みんなのウェディング」を立ち上げスピンアウトまで事業責任者を務める。その後ソーシャルゲーム事業の企画部長、ペイジェント取締役、インキュベーション事業部長、SHOWROOM取締役等を務め、2019年10月からデライト・ベンチャーズに移籍し、ベンチャー・ビルダーの責任者として新規事業・スタートアップの創出・育成全般に尽力。
菅原 啓太(すがわら けいた)氏
株式会社ディー・エヌ・エー グループエグゼクティブ ヒューマンリソース本部 本部長
IT系ベンチャー企業での勤務を経て、2009年にエンジニアとしてDeNAに入社。Mobageの事業責任者や新規事業の立ち上げを経験した後、2015年から人事領域へ。2017年からゲーム・エンターテインメント事業本部の組織開発部 部長 兼 HRBPを経て、2020年4月よりヒューマンリソース本部長として全社人事総務領域を統括。
DeNAから生まれた“起業家支援”のための独立組織
――デライト・ベンチャーズは一見DeNAの中の組織のようですが、株式会社デライト・ベンチャーズという独立した会社です。両者の関係を改めて説明していただけますか。
坂東龍氏(以下、坂東) デライト・ベンチャーズは、起業家を支援する、いわゆるベンチャーキャピタル(VC)です。そしてDeNAは、リミテッドパートナー(LP)と呼ばれるデライト・ベンチャーズの出資元。すなわち、デライト・ベンチャーズが起業家に投資する資金を提供しているのがDeNAという関係です。
また、デライト・ベンチャーズには「ベンチャー・ビルダー」と呼ばれる、新規事業を立ち上げるための機能がありますが、ここにはDeNAのエンジニアやデザイナーなどの人材も参加して、一緒にチームを組んで事業の立ち上げをサポートします。このようにDeNAには、お金と人材と両方の面で支援してもらっている関係なのです。
もともとDeNAには新規事業を立ち上げる事業部があったのですが、現在はこのベンチャー・ビルダーがその後継版の役割を果たしています。デライト・ベンチャーズは、基本的に独立起業したい人を広く支援するのを目標にしているので、DeNA社内の起業希望者はもちろん、社外からも希望者を受け入れています。最初は社内で起業したい人材を中心に1年くらい試してみた結果、成果が見えてきたこともあって、社外の人も含めてオープンに募るようになりました。
ちなみにデライト・ベンチャーズ設立後に、ベンチャー・ビルダーの中で一緒に事業を作り上げて独立したのは3社。また、事業案を作って検証だけしてすぐに独立するパターンもあり、そちらは6社。合計9社が独立を果たしています。
――すると現在、DeNA本体の新規事業立ち上げは、完全にデライト・ベンチャーズに移管されているのでしょうか。
菅原啓太氏(以下、菅原) DeNAの各事業部門では、現在も事業戦略に応じた新規事業の取り組みを行っていますが、まったく新しい分野や発想のベンチャービジネスを専門にしている部署は置いていません。なので、既存の事業の延長線上にあるものは各事業部が、それ以外の新しいものはデライト・ベンチャーズがやりましょうという棲み分けです。例えばDeNA出身で現在飲食に関わるビジネスを手がけている起業家も多いのですが、彼らはデライト・ベンチャーズ経由で独立した例が少なくありません。
本業の規定路線から異なるものをどんどん社外に出してしまうと、DeNAの事業範囲が限られてしまうのではと聞かれることもあります。しかし、彼らがすばらしい企業に成長して、当社の既存事業とのシナジーが期待できるのであれば、再びグループにジョインしてもらって拡大していく可能性も十分にあると考えています。
DeNAがデライト・ベンチャーズに出資するのも、社内からだけでは生まれてこない新しい事業がそこから出てきて、将来的にDeNAの事業に関わってきてくれることで、当社の裾野が広がる機会が増えていく可能性を、むしろ大いに期待しているからなのです。