留学生の前に立ちはだかる就職の壁
私は現在、大学卒業後に日本での就職を目指している海外(中国、ベトナム、スリランカ、ウズベキスタン、ネパール、モンゴル)からの留学生24名が集うゼミで、日本での就職活動や就労に伴う在留資格変更の方法、ビジネス日本語などを教授しています。就職活動については、アルバイト先の社員などからの紹介や推薦による就職、つまりリファラル採用による就職を推奨しています。
留学生にリファラル採用を推奨する背景には2つあります。1つは「留学生の前に立ちはだかる就職の壁」です。
留学生も就職に際しては、日本人学生と同様に新卒向けの就職情報サイトなどを閲覧します。そこで、留学生向けの求人を探すのですが、留学生向けの求人や募集枠はとても少ないのが現状です。また、留学生向けの求人を見つけたとしても、「会社説明会参加⇒エントリーシート提出⇒書類選考⇒適正検査⇒1次面接⇒2次面接⇒最終面接⇒内々定」という採用プロセスの中で、内々定を目指すことは容易ではありません。
最初の壁は、エントリーシートに「志望動機」を書くことです。志望業界を理解した上で応募する会社のホームページを閲覧し、それから競合他社との違いを意識しながら書くわけですが、これらをすべて日本語で行うのは想像以上に時間を要します。
また、書類選考通過後の適性検査も、日本語で行われる場合にはやっかいです。限られた時間で日本語を理解し回答しなければならず、留学生にとってとてもハードルが高いものとなっています。
それ以外にも、留学生は学業に加えて放課後に留学生活費を賄うためにアルバイトをしなければならず、就職活動の準備を円滑に進められないことがしばしばです。
留学生向けの求人を探すには、外国人雇用サービスセンターなどを利用するという方法もあります。求人も多くてよいのですが、多くの留学生が利用するため、留学生同士で競争が起きてしまうことがあります。また、求人に応募条件などが設けられている場合も散見されます。
このような状況は、留学生の日本国内での就職率に表れています。図1は、独立行政法人日本学生支援機構が公表している2011年度から2020年度の計10年間の「外国人留学生進路状況・学位授与状況調査結果」をもとに、留学生の卒業・修了者数(大学:学部・院)における日本国内就職者数(大学:学部・院)から就職率を導いたものです。
この図を見ると、留学生の日本国内での就職率は、2011年度から2013年度まで30%に届いていません。2014年度から2019年度までは30%台を推移したものの、2020年度には再び30%を切りました。つまり、留学生の日本国内での就職率は、2011年度から2020年度の計10年間においてせいぜい3割程度なのです。日本政府が2016年に公表した「日本再興戦略2016」の中では、留学生の日本国内での就職率を3割から5割へ向上させることを目指すとしています。しかしながら、図1が示すように、2017年度以降も留学生の日本国内での就職率は3割程度で推移しています。このことから、留学生の日本国内の就職は、容易ではないことが分かります。