Voicyが採用広報で意識していること
石原千亜希氏(以下、石原) 社外向けの採用広報を行う際、誰に何をどのように伝えるかなど、意識していることはありますか。
勝村泰久氏(以下、勝村) Voicyでは、企業と候補者が相互選択するというスタンスで採用広報に取り組んでいます。5~6年前に採用広報という言葉が出てきてから、その役割は時代とともに変化してきました。振り返ると、「候補者が企業を選ぶ」という関係性から、氷河期やリーマンショック期を経て「企業が候補者を選ぶ」という関係性に変化してきました。現在は、どちらか一方が見定めるのではなく、「相互選択する時代」に突入したと感じています。相互選択の関係を前提とすると、候補者に広く認知してもらう採用広報ではなく、お互いがコミュニケーションをとれる施策を考えて設計することが重要だと思います。
石原 採用広報だけでなく、面接も相互に選ぶ時代になってきましたよね。相互選択を意識した上で、具体的にどのような訴求をしていますか。
勝村 弊社では候補者の認知から応募~内定にかけて、どのフェーズで何を発信するかを詳細に設計しています。各フェーズでは目的や訴求ポイント、訴求内容に合わせた手段のほか、訴求にかける時間まで考えて戦略を立てています。「多忙な候補者が時間をかけて長文の採用広報記事を読んでくれるのか?」という視点は重要だと考えたためです。
また、採用活動時に候補者の人材像を細かく設計して、独自のペルソナ像に落とし込む企業は多いのですが、自社が外部からどう見られたいかというペルソナ像を用意するのも大事だと考えています。発信するコンテンツも、外部から見られたい姿(ペルソナ像)に近づくようにつくることが必要です。弊社の目下の課題は、「プロダクトが魅力」というペルソナ像で見てもらうためのコンテンツが手薄なことです。ここの発信を強化していかなければなりません。
石原 プロダクトに関する発信を強化したいとのことですが、プロダクトの発信をするということは、採用広報が一般の広報(広報部が行う広報)と重なることにならないでしょうか。
勝村 一般の広報と情報が重なる部分もありますが、採用広報の対象者はあくまでも候補者です。選考フェーズが進んでいくと、一般の広報資料が候補者のアトラクトにも役立つと考えています。
また、一般の広報と採用広報のどちらにもいえるのは、企業が選ばれるために提供すべき情報の質が変わってきている点です。現実よりも盛った情報を伝えるのではなく、きちんとファクトを伝える。悪い面も含めて情報提供した上で、相手がどう判断するかが重要になってきています。