安藤健 著、曽和利光 監修『誰でも履修履歴と学び方から強みが見つかる あたらしい「自己分析」の教科書』(日本実業出版社 刊)
コロナ禍をきっかけに変わりつつある新卒採用の形
24卒学生は、コロナ禍での厳しい行動制限のなか、大学生活を過ごしています。22卒学生も、23卒学生もコロナ禍で大学時代を過ごしていますが、24卒学生は、大学入学当初(2020年4月)からコロナ禍中であり、それ以前の「ふつうの大学生活」を全く知らない初めての学生なのです。
「ふつうの大学生活」というのは、リアル開催のイベントやアルバイト・サークル活動、留学といった課外活動に十分に力を入れられる大学生活のことです。24卒学生の課外活動は他の世代よりも激減し、実際に就活の中で、異口同音に「就活の際にアピールできるエピソードがない」「ガクチカを話せない」と悩んでいます。
一方で、そんな彼らは課外活動ができない反面、学業にかける時間が相対的に増えた世代でもあります。
この「コロナ禍で課外活動ができない」「学業にかける時間が相対的に増えた」という急な環境変化に合わせるために、これまで課外活動を中心にガクチカを尋ねていた企業は、学生の資質を見極めるために学業に注目し始めているのです。
ただ、実はコロナ禍は、学業に注目を集めるようになった“きっかけ”に過ぎません。近年の大学環境はひと昔前とは大きく変わっており、学業からも学生の資質を十分確認できるのです。さらにいえば、本質的には、課外活動から見える学生の資質と、学業から見える学生の資質は異なり、そのどちらも確認すべき、というのが正しい答えかもしれません。
コロナ禍をきっかけとして企業がそれを認識し始めたことは、24卒「コロナ世代」の採用だけでなく、今後の新卒採用全体のトレンドになると予想されます。
「シラバスの厳格化」による大学環境の変化
近年の大学環境の変化でいえば、2015年頃まで、大学ではほとんど授業に出ずにアルバイトやサークルなどの課外活動ばかりしていても、テストさえ受ければ単位が取得できる状況でした。
しかし、現在の大学では、文科省による大学指導方針の転換いわゆる「シラバスの厳格化」により、成績評価をより厳格に行うことが求められています。これを受け、今の大学生は、単位を取るためにきちんと授業に出ています。ある調査では、履修している授業のうち8割以上に出席している学生の割合は19卒で77.6%、20卒で84.7%と、年々上昇しています。
このような、学業には否が応でもある程度きちんと向き合わないといけない、という状況においては、例えば、
- どうせ授業に時間を使うならば、将来役立ちそうなIT科目を多めに採ろう
- どうせ授業の出席が必須ならば、授業中に集中して全部理解してしまうのが一番効率的だ
など、学業への向き合い方にそれぞれの個性が表れるようになってくるのが自然です。それぞれの個性は、すなわち仕事に活かせる資質(能力、性格、価値観)の源です。
この状況に、コロナ禍による課外活動の制限も後押しして、多くの企業が今、学業から学生の資質を確認しようとしているのです。