なぜ創造性の高い組織がこれから求められるのか
川上氏によると、創造的な組織を研究するきっかけとなった気づきがあるという。
「さまざまな企業のコンサルティングを行う中で、労働分配率は高いのに、給与額は同業種の他社と比べてそれほど高くない企業が最近多くなってきた。何が起こっているかというと、儲かっていない」(川上氏)
原因は労働生産性の低さだという。OECDのデータによると、加盟国の38ヵ国中、日本の労働生産性は29位だ。川上氏は「もっと考えて、もっと新しい価値を生み出すことに力を入れていかなければならない。企業のクリエイティビティを高めていかないといけないのです」と語気を強める。
では、なぜ日本は労働生産性が低く、新しい価値が生まれにくいのだろうか。川上氏はその原因について、「組織の状態」から説明を始めた。
「(フレデリック・ラルー氏が著書『ティール組織』で提唱するところでは)組織の状態は5段階に分けられます。レッドは独裁支配教育的な組織、アンバーは階級とルールが厳密に存在している組織、オレンジでやっと実力主義になります。グリーンは個人の主体性や多様性が重要視されている組織で、いわゆるダイバーシティ&インクルージョンと呼ばれるものです。ティールは階層や階級がまったくなくて、全員が役割の違いだけで存在しています。自立的に活動していく組織です」(川上氏)
川上氏によると、レッド・アンバー・オレンジの3つとグリーン・ティールの2つの間には大きな隔たりがあり、質的転換が起こっているという。
「それは、序列の有無です。レッド・アンバー・オレンジは、序列の中で誰が偉くて誰が偉くないのかが決まっている。つまり縦社会です。反対に、グリーン・ティールは個人の主体性や多様性が重視される横社会です」(川上氏)
そして、グリーンやティールの状態でないとクリエイティビティや効率性は上がらない。グローバルな企業は横社会の組織に変わっている一方で、日本は縦社会で個々の力を引き出せていない現状が、日本の労働生産性の低さにつながっていると川上氏は指摘した。
「ただし、メンバーの能力もそれなりに高まっていないとグリーンやティールにはなれません。たとえば、序列のある組織で、ルールに応じた働き方しかできないような労働生産性を下げる社員がいると、新しい付加価値を生み出す人・組織をつくることはできません」(川上氏)
生産性を高められる組織になるためには、創造性のある人材を採用・育成する必要がある。
「創造的な能力をより多くの人が高められると、企業の1人ずつの労働生産性は大きく変わってくると考えています」(川上氏)
それでは、どうすれば人材の創造性が高まるのだろうか。川上氏は仮説として、組織に求められる3つのCを掲げた。
- Creative Climate(創造的な組織風土)
- Creative Condition(創造性を発揮する状況)
- Creative Competency(創造的コンピテンシー)
次に川上氏は、この仮説について検証した結果を説明した。