EYは最新の働き方に関する調査「EY 2023 Work Reimagined Survey(EY働き方再考に関するグローバル意識調査2023)」を実施した。
企業の最優先課題は「人材の惹きつけや維持・確保」
企業の最大の課題は、「人材の惹きつけと維持・確保」であった。それを裏付ける結果として、従業員の3分の1以上(35%)が、今後12ヵ月以内に現在の会社を辞める可能性が高いと回答している。世代別に見ると、退職する可能性が高いと回答した人が最も多かったのは、Z世代(38%)とミレニアル世代(37%)であった。これは、期待の矛先とモチベーションに対する従業員と企業の考え方にギャップが生じていることが要因だと同社は分析している。
また、経済成長の減速により従業員の離職の可能性は低いと考えている企業は半数以上(58%)である一方、従業員は半数以下(47%)であった。
リモートワークの考え方に企業と従業員間でギャップ
昨年度の調査結果と同様、今回も、従業員の最大の関心事は賃金(35%)であった。企業にとっては3番目の関心事となっている。企業は、新しい人材の惹きつけ(37%)や人材の維持・確保(34%)に高い関心を示しており、企業側と従業員の優先事項にギャップが見られた。
加えて、企業は、人材を惹きつけるためのインセンティブとして柔軟性を過大評価していることが分かった。調査結果によると、企業の84%が、柔軟性を提供すれば採用力を強化できると考えているが、これに同意している従業員は63%であった。
従業員にとって柔軟性は基本的な期待事項であり、フルリモートでの勤務を望んでいる従業員は3分の1以上となった。企業の47%は、従業員が週2~3日職場に出社することを望んでいるが、従業員の50%は週1日出社までにとどめたいと回答している。リモートワークとオンサイト勤務について、柔軟性やオフィス復帰ルールなどの観点から企業側と従業員の考え方に差が生じていることが分かる。
他方、従業員は、「ソーシャルなつながり」(36%)、「コラボレーション」(30%)、「関係の構築・維持」(29%)など、職場におけるエンゲージメントを求めているようだ。調査結果から、高品質なオフィス環境への投資は、組織文化、生産性、人材の維持・確保などの成果全般と良い相関関係があることが明らかになった。
信頼・エンパワーメントなどにより離職の可能性は40%低下
企業と従業員が期待する、新しい働き方への対応にも明確なギャップが見られた。調査では、企業の73%が管理職や経営幹部は新しい働き方(勤務スケジュール、休暇、リモートワーク、ハイブリッド勤務など)を受け入れ、相応の対応を行っていると回答したが、同様に感じている従業員は55%であった。
一方で、リーダー層から高いレベルの信頼、エンパワーメント、心理的サポートを得ていると回答した従業員は、過去2年間の外的プレッシャーに対する企業の対応を高く評価する傾向がそうでない従業員に比べて2.3倍高く、離職の可能性は40%低くなっていた。
生成AI関連のスキル研修を予定している企業は18%
従業員の48%が、生成AIによって柔軟性が向上すると予想している。また、企業の84%が、生成AIをすでに活用、あるいは今後12ヵ月以内に活用する予定と回答した。
しかし、生成AI関連のスキル研修を予定している企業はわずか18%であった。従業員、企業ともに、新しい働き方の下で従業員が能力を発揮するためには、「学習とスキル」が何よりも重要であると考えているが、生成AIを利用する準備はまだ模索状態だと分かる。
なお、調査の概要は次のとおり。
- 調査期間:2023年5月から2023年7月まで
- 調査対象:日本を含む22ヵ国、25産業セクターの計1万8625人(従業員1万7050人、ビジネスリーダー1575人)
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