マーサージャパンは、7月6日時点での厚生労働省 女性活躍推進企業データベースを基に、男女の賃金差異について分析を行った。
全企業平均における女性賃金は男性賃金の74%
2023年7月6日現在、厚生労働省のデータベースに男女の賃金差異情報を公表している正社員301人以上の企業は5520社であった。正規雇用従業員における男女の賃金差異の業種別・規模別を集計したところ、全企業平均では女性賃金は男性賃金の74%という結果であった。
業種別では、福祉・教育・医療業では男女の賃金差異が小さく、銀行・保険業では差異が大きい傾向が見られた。これを受けて同社は、次のように解説している。
「同業種でも企業によって置かれている状況は異なり、男女の賃金差異解消に向けた施策には差があるものの、このランキングは、日本の社会規範の中で確立されてしまった性別職種分業の影響が根強く残っていることを感じさせる結果と言えるかもしれません」
企業規模別では、企業規模が小さくなるほど男女の賃金差異が縮小する傾向が見られたという。同社の解説は次のとおり。
「この傾向にはさまざまな要因が考えられますが、日系企業が海外企業に比して女性活躍推進の遅れを指摘される中、公表データの小規模企業として多くの外資系日本法人データが含まれていることが、小規模企業における賃金差異の縮小に影響を与えている可能性があります」
男女の賃金差異と女性の昇進しやすさとの関係を分析
厚生労働省のデータベースでは、企業は公表した男女の賃金差異データに対して説明を付記できる。多くの企業が男女の賃金差異要因として「女性の管理職登用の遅れ」を挙げていた。これを受けて同社は、男女の賃金差異(縦軸)と、「女性の管理職への昇進しやすさ」(横軸)の業種別にプロットして相関を確認することで、「女性が管理職へ昇進しやすくなれば、男女の賃金差異は解消されるのか?」を考察した。
同社の考察は次のとおり。
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- 女性の管理職への昇進しやすさと男女の賃金差異には正の相関があり、女性の管理職登用が進めば男女の賃金差異は解消される可能性がある
- 全体として、男性と女性の管理職への昇進しやすさが同等な業種では、男女の賃金差異も小さくなる傾向がある。一方で、男女の賃金差異が74%(全企業平均)のとき、女性の管理職への昇進しやすさは男性の0.35倍であった。これは、男女同数の従業員がいても、その中で管理職になっている女性の数は男性の35%にとどまっていることを示している。
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- 非製造業・サービス業は製造業に比べて女性が管理職へ昇進しやすく、男女の賃金差異が小さい傾向が見られる
- 多少のばらつきはあるものの、非製造業・サービス業と製造業では分布に差が見受けられ、非製造業・サービス業は製造業に比べて女性が管理職へ昇進しやすく、男女の賃金差異が小さい傾向が認められる。総合職・一般職や営業職・事務職などの職群構成、採用市場における技術系職種人材の女性比率の低さなど、それぞれの業種が抱える背景はあるものの、製造業における女性登用には改善の余地があるといえる。
なお、同分析における「女性の管理職への昇進しやすさ」の定義は次図のとおり。
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