令和に直面する人材難の原因とは
コロナ禍を脱した現在、多くの日本企業が人材確保に動いている。大卒求人倍率(就職を希望する大学新卒者1人あたりの求人企業数)の推移で確認してみよう。
2008年のリーマンショックで大きく下がった大卒求人倍率は、その後回復して2016年3月卒~2020年3月卒まで1.73~1.88倍で推移してきた。コロナ禍によって2021年3月卒は1.53倍、2022年3月卒は1.50倍と下がったが、2023年3月卒で1.58倍、そして、2024年3月卒では1.71倍と一気に回復して、ほぼコロナ禍前の水準に戻っている。2023年3月卒ではまだ採用拡大に慎重であった従業員300人未満の中小企業における採用意欲が回復したことが、2024年3月卒の求人倍率の急上昇につながった。
すべての従業員規模で求人総数が増加し、コロナ禍前の売り手市場に戻ったことに加えて、今後は少子化の影響が採用マーケットに影響してくることも想定されている。これまで少子化によって18歳人口が減少する一方、大学進学率が上昇することで、大卒の人数は横ばいとなってきた。
しかし、大学進学率が頭打ちとなりつつある中で、今後は少子化の影響が大卒の人数減少としてダイレクトに現れるようになる。文部科学省では2040年には大学の入学者数が2022年対比で約20%減、年間11.6万人減少するという推計結果を発表しており[1]、今後は、新卒また第二新卒の採用において慢性的な売り手市場に陥ると予測される。
注
[1]: 文部科学省「大学入学者数等の将来推計について」
さらに現在、新卒採用の対象から20代中盤までを占めるZ世代は、雇用に対してこれまでの世代と異なる価値観を持っている。終身雇用の崩壊を目の当たりにして育ってきたZ世代は、会社に依存する働き方ではキャリアをつくれないと考えており、「成長できない会社は早期に見切って転職する」ことでキャリアを形成していく必要があると思っている。この価値観を反映した結果として、たとえばOpenWorkが発表した「新卒入社で3年以内に退職した平成生まれの若手社会人の退職理由ランキング[2]」では、1位は「キャリアの成長が見込めない」となっている。
注
[2]: OpenWork 働きがい研究所「就活生のための後悔しない会社えらび 平成生まれの退職理由って」
このように新卒や若手層の採用難易度が高まり、育成対象となるZ世代が持っている価値観も従来までと異なる中で求められているのが、管理職のリスキリングである。苦労して採用した新卒や若手を定着・活躍させるうえで、管理統制・トップダウン・説得中心の昭和時代のマネジメントから抜け出せていない管理職には、すぐにでも改善に取り組んでもらう必要がある。