会社にとって優秀な人材とは?
「優秀な人材を獲得したい」という経営者にとって、その“優秀さ”が「素晴らしいスキルを持ち、大きな成果を上げてきた経験があること」であれば、本当の意味で会社に利益をもたらす優秀な人材とは出会えないでしょう。会社がその「能力が高い有能な人材」にとって良い条件を与えられる環境であれば成立しますが、景況感が変化し、他にもっと好条件・好待遇の会社に出会うなどした場合、離職の可能性は高まるからです。
私は起業当時から「会社としてやりたいこと・方向性」を言語化し、従業員に伝え続けてきました。その背景にあるのは、「誰と働くかが大切」という想いです。会社を拡大・成長させていくためには“何のためにやっているのか”に共感している人といっしょでなければ難しいからです。
つまり、会社にとって“優秀な人材”とは「会社が目指す目標に向かって共に歩み続けてくれる人」であり、そのような人材を採用するためには“理念(企業の存在意義であり根幹となる想い)に共感した人材”が最も有効であると考えています。当社はこの考えに基づいて「理念共感型採用」を提唱しています。
採用に苦戦する会社が「理念共感型採用」を取り入れるべき4つの理由
理念共感型採用を改めて説明すると、給与や福利厚生、勤務地といった条件に納得すること以上に、会社の理念やカルチャー・ビジョンに共感することを優先して人材を採用するという手法です。「会社の想いや価値観を伝えても、条件や待遇の差で他社に負けてしまうのでは」と考える方もいらっしゃるでしょう。しかし実際には、理念共感型採用を取り入れることのメリットはとても大きいのです。
理念共感型採用が会社にもたらすメリットには、大きく4つあります。
①採用のミスマッチを防げる
入社後のミスマッチの要因となるのは、応募の際の「イメージ」と「実際の働き方や仕事内容」とのギャップです。たとえば、給与面や待遇面での魅力を感じて入社を決めても、「想像していた業務内容と違った」「会社の雰囲気・カルチャーが合わない」などの理由でギャップを感じ、結果的にミスマッチだったと判断するケースは少なくありません。会社の理念・カルチャーを事前に理解・共感した人材を採用できれば、こうしたミスマッチは事前に防ぐことができるのです。
②早期離職や離職率の課題に対しても効果的
採用の段階で給与や待遇・福利厚生をいくら伝えたとしても、条件面は会社の状況やその人自身のスキルなどで、入社後に変動する可能性が大いにあります。そのような条件などの“有形”の価値に重きを置いてしまうと、条件が変わった場合や、先述のような「実際に働いて気づくギャップ」による離職のリスクを防ぐことができません。
一方で、企業理念や経営者の想いやビジョンの「何を目指しているのか」「何のためにやっているのか」という点は、その会社の唯一無二であり、簡単に変わることのない“無形”の価値としてあり続けます。“有形”の価値に捉われた状態で採用活動を行って人材を獲得するよりも、“無形”の価値に共感した人材を採用するほうが離職の可能性が低いといえます。
③モチベーションの高い人材を獲得できる
先述の“有形”の価値を重視した採用活動では、会社側が求職者の志向性や価値観を理解できず、本当にこの会社で活躍できる人材なのかの判断が難しくなります。しかし、理念共感型採用を取り入れることで、企業の理念やカルチャー・ビジョンに共感しているかが判断軸になり、結果的に会社への貢献意欲や帰属意識を高く持って活躍するポテンシャルを持った人材と出会うことができます。
④定着につながる
採用に苦戦する会社の多くが「企業の知名度が低い」「人手不足」「採用のノウハウがない」という課題を抱えています。そして多くの場合、採用戦略を考えるうえでは、どんな趣向を凝らして求職者にアプローチをしていくか、人材獲得競争をどう勝ち抜くかというポイントに、どうしても目が向きがちです。
しかし、経営者が本当に取り組むべきなのはそういった“入口”だけを整えることではありません。「人手不足」の根幹にある課題は人が根付かないこと、つまり「定着」しないことです。本質的に人手不足を解消するためには、採用成功=ゴールと考えるのではなく、定着し活躍し続けられる環境・制度を整えることが重要です。
その点でも、理念共感型採用は有効です。入社時点から1人ひとりが理念を“自分事”と捉えて仕事に取り組むことになるからです。自分事として捉えるからこそ、会社と同じ想い・考えを持ち会社に貢献する“人財”となって定着していきます。
そして、理念共感によって採用した人材が定着すれば、理念を体現する“人財”として育成・成長させることができます。