施策検討の前に本当に考えるべきこと
100名を超えようとする企業では、社内の機能分化が進み、求める人材像も多岐にわたるようになります。中でも、新規事業や新規商材の企画などを検討している企業では、人事、特に人事企画への期待が高まります。
一方で、人事企画に精通した人は多くないため、人事メンバーの意見がそろわずに施策が進まなかったり、個々人の思い込みや印象に基づいた場当たり的な施策に陥ってしまったりする企業が少なくありません。
「人事の諸施策や企画がうまくいかない」という悩みの根底には、そもそも「人事として何を目指すべきかが分かっていない」という問題があります。Howに悩んでいるように見えて、実はWhatとWhyが存在していないのです。人材をどうやって採用するか・どうやって育成するか、を考える前に、「どのような人を社内に確保するべきか」を考える必要があります。
そこで、人材獲得・育成の指針となるのが、「人材ポートフォリオ」です。人材ポートフォリオとは、従業員のスキル・経験などを体系的に管理し、人的資源を最適化するための戦略的なアプローチを指します。
日本経営者団体連盟(現経団連)が提唱した雇用ポートフォリオ論や、John Atkinsonの柔軟な企業モデル、具体的な職種とレベルで分ける考え方などが有名です。
人材ポートフォリオをつくることで、人事が目指すべきゴールの合意につながり、施策の意思決定が早まります。また、人事メンバーの徒労感や過剰な労働の抑制にもつながります。人事領域は抽象的になりやすいがゆえに、闇雲に働いてしまうことがあるからです。さらに、人材ポートフォリオの作成では経営側の視点を人事業務に翻訳するため、人事メンバーの経営目線の獲得も期待できます。