今回の話者
人事
藤原 広行(ふじわら ひろゆき)
パーソルキャリア株式会社 人事本部 人事マネジメント統括部 エクゼクティブマネジャー
大学卒業後、大手住宅設備機器会社へ入社。新卒から人事職へ配属となり、工場人事から本社、子会社人事を経験。その後、メガベンチャーへ転職し、人事領域において、労務・制度企画、M&AやIPOなど幅広く担当。2018年7月にパーソルキャリア株式会社へ入社。現在は、人事のCoE機能を担う部署の統括責任者として、労務・制度企画・データ活用・組織人材開発・DEI推進などを管轄し、社内にとどまらず社会のロールモデルを意識した人事施策を検討・推進。
山口 拓人(やまぐち たくと)
パーソルキャリア株式会社 人事本部 人事マネジメント統括部 人事デザイン部 人事データ推進グループ エキスパート
大学卒業後、システム会社、外資系コンサルティング会社、製造業で人事領域のみならず全社DXの推進や業務プロセス改善のコンサルティングを担当。2024年1月からパーソルキャリア株式会社に入社。現在は、人的資本最大化のため、システムやデータを活用したデータドリブン人事を推進。
ITエンジニア
柳澤 寛光(やなぎさわ ひろみつ)
パーソルキャリア株式会社 テクノロジー本部 デジタルテクノロジー統括部 デジタルソリューション部 人事エンジニアグループ エンジニア(データ)
修士課程卒業後、2020年にパーソルキャリアのデータサイエンス職に新卒入社。アナリティクスグループを経てエンジニアとして活動。現在はテック組織に所属しつつ、人事部の現場に兼務しBIの開発・運用保守を担当。ピープルアナリティクス領域に関心。
人事も含めた全員でダッシュボード開発を習得
——ダッシュボードの大規模移行プロジェクトは何がきっかけで始まったのか。
藤原 当社では2年前から人事組織内にデータ基盤を開発するとともに、ビジネスインテリジェンス(BI)ツールとしてGoogleの「Looker」を導入しました。
既存システムでもダッシュボードを開発していたのですが、利用するデータが複数のシステム・ファイルに散在しており、それぞれのシステムから人事担当者が手動でデータを取得し、加工・投入する必要がありました。そのため、ヒューマンエラーが発生する恐れがあるほか、アウトプットされたデータには一貫性が保たれない不安もありました。また、各人がそれぞれで対応するために無駄な工数が発生しており、それが人事領域の人材不足につながるという悪循環にもなっていました。
そこで、人事データ基盤へのデータ取り込みを自動化するとともに、Lookerを活用してダッシュボードを移行するプロジェクトを始めることにしました。
またこの移行プロジェクトは、それまで一部でしか行われていなかった人事データ基盤のデータ活用を、人事組織全体やそれ以外の組織にも広げていくことも織り込み、かなり重要な位置付けとなっています。また、人事とIT部門での初めての大規模な協業プロジェクトでもありました。
——移行プロジェクトはスムーズに進んだのか。
山口 プロジェクトは納期までに完了させることができました。しかし、プロジェクト開始当初、通常業務に支障をきたさないようにするために移行が必要なダッシュボードは40個以上、テーブルは220テーブルもあり、それをスケジュールどおりに完了させるため、できる限りの工夫を行いました。
まず、データインフラ、BI開発、テストに分けてチームを編成しました。開発は、開発予定物に優先度(高中低)を付け、段階的に進めることに決めました。移行するダッシュボードの数が多かったのと、その当時はLookerでのダッシュボード開発に詳しいメンバーが少なかったためです。さらに、優先度“高”としたダッシュボードの中でも比較的簡単に開発できるものから着手し、アサインされたメンバーにLookerでのダッシュボード開発に慣れてもらえるようにしました。
人事のメンバーもITエンジニアに頼りっきりになるのではなく、Lookerでのダッシュボード開発を学んで、ITエンジニアといっしょにダッシュボードの開発を行い、完成ダッシュボードに表示される数値やグラフの確認は、人事業務を理解している人事のメンバー中心で行いました。
また、通常は「データインフラチームにデータとテーブルの移行と整備を進めてもらいつつ、BIチームが出来上がったテーブルをもとにダッシュボードを開発し、できたダッシュボードから順にテストチームで確認する」という順で開発していくのですが、このプロジェクトではこれらを同時並行で進めていく形式をとり、納期までの完成を目指しました。
途中、コミュニケーションの齟齬によりメンバー間で認識がずれていくこともありましたが、定例会や分科会をこまめに開くことで改善を図りました。ITエンジニア・人事問わず主要なメンバーは会に出席するようにしたほか、Lookerに知見がある外部ベンダーの方にも参加いただいて、開発のノウハウなどを録画しながらみんなで共有し、ナレッジをためていきました。