危機的な時期もワンチームの意識で乗り越えた
——大量離職は2005年だったとのことですが、御社が「カルチャーを中心に据えた組織運営」をより強化されたのは2011年です。そのタイミングになった理由と、具体的な施策をお聞かせください。
それまでも「カルチャー」は存在していましたが、新卒採用を開始した2011年が大きな転機となったと聞いています。どんな会社でありたいか、どんな社員を採用したいか、と会社を見つめ直すきっかけとなり、そのタイミングで、経営陣以下メンバーも含めて「経営理念・ビジョン・行動規範」を改めて認識・設定しました。その3つを社内の共通言語として浸透させていったのが、いまにつながっています。
経営理念の「結婚を、もっと幸せにしよう。」は会社が存在する意味意義、ビジョン「21世紀を代表するブライダル会社を創る」は目指すべき未来の姿、行動規範の「TRUTH(誠実・真実)」は考え・行動においての羅針盤と整理しています。
特に、これらをカルチャーに落とし込んでいくときに直接関わってくる行動規範「TRUTH」については、より具体的な表現で「幸せのための9つのピース」としてまとめています。事あるごとに自身の行動について照らし合わせてほしいと考え、名刺大の大きさで冊子を作成し、入社時に1人ひとりに手渡しています。
実際、入社直後から日常業務や面談で飛び交うことが多いので、9つのピースは自然と誰もがそらんじることができ、それぞれの意味を説明できるようになっています。口に出して言うことはとても大切で、日々の仕事の中でも、意識して行動することが当たり前のようになってきました。たとえば、「1歩踏み込むべきだけど失敗が怖い」と感じたときに「強い翼」を思うことで頑張れる、「憧れになる」は折に触れて背中を押してくれる、というように、日々のコミュニケーションの中でもTRUTHを使うことが多いですね。
——経営理念・ビジョン・行動規範を浸透させるために、どのような施策や工夫を行っているのですか。
経営層はもちろんマネージャーも、普段から意識的に経営理念・ビジョン・行動規範を言葉に出して使うようにしています。メンバーにもその3つを意識したアクションを促すことを徹底しています。
四半期に1回の目標設定と振り返りの面談時には、自分で「注力するTRUTH」を9つのピースの中から選ぶことも行っています。自身の業務や目標とTRUTHを照らし合わせ、中でもいちばん意識していきたいTRUTHを自ら選び、宣言する仕組みです。
また、月に1回TRUTHを最も体現した人を表彰する「TRUTH賞」を設けています。受賞の候補はマネージャーによる推薦です。TRUTH賞では、行動規範に沿った模範的な行動を表彰するので、「どういった行動がTRUTHを体現しているといえるのか」という共通認識が全社で醸成され、結果、「その行動は自分も真似していこう」となって、全社で行動の再現性を高めていくことができます。
このように「宣言すること」や「褒めること」を習慣的に行っていくことで、経営理念・ビジョン・行動規範の浸透を続けられているのだと感じています。
そしてもう1つ、カルチャー浸透の推進役として「ウエディングパークプロジェクト」(現 カルチャー推進室。以下、WPPJ)という組織横断チームを立ち上げ、半年に1回開催する社員総会などの運営を行ってきました。初期においては特にブースターとして大きな役割を担っていたと思います。
——カルチャーの浸透は、御社の業績や競争力、組織運営(採用数・離職率など)にどのような良い影響・成果をもたらしていますか。
まず、ダイレクトかつ顕著に成果があったのが、新卒採用です。ウエディングパークは何を大事にしている会社かを明確に打ち出すようになってから、徐々に「カルチャーに共感して」という応募者が増え、採用人数も2024年度では募集人数25人を超えた27人となりました。入社後も立ち上がりが早く、即戦力となってくれています。また、弊社のカルチャーに共感し重んじる人材を採用しているからこそ、ワンチームで働くという意識も強まっています。
さらに、先輩やマネージャーがメンバー個人の成果と同じだけ、チームに貢献したことやそのプロセスを褒めることから、「こういうマインド・行動がウエディングパークらしい」というカルチャーが強化されているのだと思います。
コロナ禍ではウエディング業界は壊滅的な影響を受け、私たちも取引先を失うなど厳しい状況に置かれました。しかし、カルチャーを大事にする組織運営の成果として、そうした時期でも「『祝う、分かち合う、感動する』未来の結婚式を体験する。」をテーマに掲げるプロジェクト「Wedding Park 2100 ミライケッコンシキ構想」や、冒頭にご紹介したsurvoxなどを誕生させることができました。誰もが業界貢献への高いモチベーションを持ち、一丸となって組織や事業を支えた結果といえるでしょう。また、(リンクアンドモチベーションの)組織エンゲージメントサーベイにおいても例年高水準をキープし続けることもできています。