相次ぐ離職をきっかけにカルチャーの重要性を認識
——まずは御社のこれまでの経緯と、カルチャーを経営や組織づくりにどう位置付けているのか、お聞かせください。
1999年に会社を設立し、2004年に日本初の結婚準備クチコミ情報サイト「Wedding Park(ウエディングパーク)」をリリースしました。以降、海外・リゾートウエディングのクチコミ情報サイト「Wedding Park海外」やフォトウエディング・前撮りのクチコミ情報サイト「Photorait(フォトレイト)」のほか、ウエディング業界に特化したサーベイと 音声AIを活用し、カップルの“声”を見える化するサービス「survox(サーヴォックス)」など業界で働く方々の支援にも事業を広げています。
現在も「デジタル×ウエディング」の領域で、常に新しい技術や領域にチャレンジし続けていますが、その挑戦を支える基盤が“カルチャー”だと考えています。具体的には、ウエディングパークが掲げる経営理念の体現やビジョンを実現するために大切にしている価値観・価値基準のことを指します。
弊社のカルチャーには2つの軸があります。1つ目の軸は「チーム ウエディングパーク」という“ワンチーム”であるという意識です。うまくいっているときも苦しいときも協力し合い、チームの一員としていっしょに働く仲間を大切にするということ。そうしたメンバーシップを醸成することで、たいへんな時期も一致団結するムードをつくることが、組織づくりには大切だと考えています。
2つ目の軸は「挑戦する」というマインドです。とはいえ、精神的にも安心感を得られていないと、挑戦に前向きになれないときもあるので、「挑戦と安心」を両立させることを意識しています。そのために組織の心理的安全性をどう担保していくかが、“挑戦する環境づくり”には不可欠な要素だと考えています。
——経営や組織づくりにおいて、カルチャーを重視するようになったきっかけは何ですか。
弊社はM&Aにより2004年にサイバーエージェントの子会社になったのですが、すぐに新規事業に対する厳しい「撤退ルール(CAJJプログラム)」を意識する必要がありました。これはサッカーのJリーグのような制度で、事業開始から半年で粗利月500万円というJ3の目標、1年で粗利月1500万円というJ2の目標をクリアしてはじめて、グループ会社の一員つまりJ1として認められるというものです。目標を達成できなければ、その事業は撤退が決まります。
社員にはこのプレッシャーが重くのしかかっていたため、当時は「結果を出さなければ意味がない」「J1に昇格するぞ」という切実な言葉が飛び交い、社内の緊迫感もすさまじかったと聞いています。その結果、2005年に創業者の2人が退社。さらに当時のメンバーの半数が退職していきました。
その直後に、代表の日紫喜(誠吾氏)を中心に、残ったメンバーで苦しい心の内を吐露し合ったと聞きます。その中で、「ありがとうの言葉が足りなかったのでは」「苦しいときに手を取り合えていなかったのでは」という内省が生まれ、そうしたことが自然とできる組織に生まれ変わるには、「会社と事業が誰の役に立っているのか」「何のためにやるのか」「自分はどう貢献するべきなのか」などを考える機会が必要という結論に至りました。うまくいっているときはもちろん、苦しいときにこそ一丸となれるカルチャーを、日ごろの会話や行動の中で醸成する必要があると考えたわけです。
そもそも「ウエディング」という、人生で一番幸せなライフイベントをテーマにした仕事であるにもかかわらず、社内が殺伐としているようでは、サービスにもお客様にも何かしら悪い雰囲気が伝わってしまいます。たとえば、売上ばかりに気を取られていては、どんなに良いサービスを提供していてもマイナスに働くでしょう。経営陣についても、事業を存続させて社員を守るという思いが強すぎるばかりに、プレッシャーや殺伐感を生んでしまっては元も子もありません。思いは同じでも、表現やアプローチを変える必要があると改めて認識することになりました。