採用活動のメッセージをミスリードされていないか
職務記述書や採用広告の作成、イベントの企画など、採用のためのあらゆる取り組みでは、次の4つの観点で一貫したコミュニケーションが必要です。
- 認知自社をどのような企業だと認知してほしいのか
- 興味どのような人材にどのような点で振り向いてもらいたいのか
- 継続性採用したい人材にどのように興味を持ち続けてもらうか
- 行動採用したい人材にいかに応募をもらえるか
一方で、企業から発信したメッセージがミスリードされてしまうことによって、採用候補者(以下、候補者)を遠ざけてしまうケースが往々にして起こっています。
そこでまず、求人広告における表現について、「求人広告上のジェンダー表現は、女性が仕事に興味を持つことを妨げるのか、またそれに影響するのは何か」を研究したGaucher, Friesen, and Kay(以下、GFK)の論文[1]を引用します。
求人広告上で「競争的」「支配的」などの言葉を使用することによって、男性への暗黙の選好が伝達される
注
[1]: Gaucher, D., Friesen, J., & Kay, A.C. (2011).Evidence that gendered wording in job advertisements exists and sustains gender inequality. Journal of Personality and Social Psychology, 101(1), 109–128.doi:10.1037%2Fa0022530
この論文では、求人広告に記載された一定の言葉が、男性が多い職業から女性を排除する障壁として機能していることが述べられています。
英語の論文のため、日本語で捉えづらい言葉も含まれますが、女性は、「Adventurous(大胆な)」「Ambitio(野心)」「Greedy(貪欲な)」「Superior(優れた)」「Force(力)」「Compete(競争する)」などのMasculine words(男性的な単語)が多く含まれる求人広告よりも、「Cooperate(協力する)」「Honest(誠実な)」「Nurture(育てる)」「Support(支援する)」「Together(共に)」「Understand(理解する)」などのFeminine words(女性的な単語)が多く含まれる求人広告を魅力的であると感じたという結果が述べられています。
スキルはあっても「自分の居場所がない」と感じて応募を躊躇する
また、同論文では次のように述べられています。
求人広告に使われているジェンダー表現によって、「自分がその仕事に必要なスキルを持っていない」と思うからではなく、「自分の居場所がない」と思うから応募意欲が下がるのである
つまり、Masculine wordsが求人広告にあると、女性は自分のスキルが職務要件を満たしていたとしても、その仕事は男性優位の仕事であると認知し、応募を躊躇してしまうというのです。「求人広告をみた候補者がその仕事を魅力的に感じるかどうか」に影響しているのは、「個人的スキルの有無」ではなく、「自分と同じような(社会的帰属の)人がその組織にいそうかいなさそうか」であると論文で指摘されています。
さらにこの論文では、企業が「私たちは肌の色にかかわらず採用しています」という主張をしていながら、実際は有色人種の割合が低い組織であることが分かった場合には、その会社に対する信頼感や居心地の良さが低下するという先行研究[2]にも触れられています。
「カラーブラインド」を明示していながら、マイノリティの割合が低いことを示唆する写真が掲載されている会社のニュースレターを読むと、その会社に対する信頼感や居心地の良さが低下することが示された研究もある
注
[2]: Purdie-Vaughns, Valerie, Steele, Claude M., Davies, Paul G., Ditlmann, Ruth, & Crosby, Jennifer Randall. (2008). Social Identity Contingencies: How Diversity Cues Signal Threat or Safety for African Americans in Mainstream Institutions. Journal of Personality and Social Psychology, 94(4), 615-630. doi:10.1037/0022-3514.94.4.615
ここでは肌の色が取り上げられていますが、日本でも、性別や年齢、ケアワークの有無などに関して同様のことがいえるのではないでしょうか。