多様な人材を採用するために考慮すべき3点
最後に、優秀で多様な人材を採用してタレントプールを育てるために、企業は何を考慮すべきなのかを、GFKの研究論文による見解と筆者の経験を踏まえて3つにまとめました。
1. 採用したい人材の要件を見直し、情報発信における言葉の偏りを修正する
今回取り上げたGFKの研究論文は10年ほど前に発表されたため、Masculine words/Feminine wordsという言葉自体に違和感があったかもしれません。しかし、ここで述べられているFeminine wordsは、支援型のリーダーシップスタイルが求められる昨今において、女性だけでなく、ワーキングペアレントをはじめとしたあらゆる候補者層に響きやすくなっています。
すべての企業やポジションで支援型リーダーシップが最適とはいえませんが、発信情報がMasculine wordsで埋め尽くされている場合には、優秀なタレントプールに多様性が確保されることは難しいでしょう。
まずは採用したい人材の要件に、暗黙知的に性別や年齢、ケアワークの有無などが含まれていないかを見直し、そのうえで発信情報における言葉の偏りを修正することで、候補者のミスリードを避け、優秀で多様なタレントプールを形成できる確率は高まるでしょう。
2. 候補者が「私と同じような人が組織にいる」「私の居場所がありそう」と感じられる情報発信をする
残念なことに、多くの候補者が、スキル・人材要件ともに合致していても「私のような人がいなさそうだから」という理由で応募を踏みとどまっています。企業側が意図せず発信した求人広告や募集要項の言葉、採用ページのコンテンツをみた優秀人材が、ミスリードによって応募を見送ってしまうことは大きな機会損失です。とはいえ、「ワーママ活躍中」といったようなあからさまな表現は逆効果であることもお伝えしたとおりです。
求人広告や募集要項を作成するときは、それを見た候補者に、自分の社会的帰属(バックグラウンド、育児や介護のケアワークの有無、性別、年齢など)をマイノリティとして特別視されずに、包含してもらえそうというイメージを持ってもらえるかどうかに留意するとよいでしょう。
3. 企業の外面と実態に二面性がある場合、その矛盾を課題と捉えて解決へのリソースを惜しまない
いち企業なのだから二面性があって当たり前だろう。経営層やマネージャー層がそう思っている限り、優秀人材の採用・定着は難しいままです。採用・育成コストをペイできないまま人が離脱してしまう企業はコストがかさみ、レピュテーションリスクも高まります。特に、育児などのライフイベントが重なりやすい30〜40代のミドル層がいかに定着し、活躍できるか。それはとても重要な論点で、その人材をロールモデルとする20代の定着にも関わります。
組織課題への対策は、「投資対効果が見込みづらい」といった理由で優先順位を下げられてしまうケースが往々にして起こりますが、外面と実態の二面性という歪みは、中期的に企業の成長をむしばむ要因となります。まずはその認識を経営と人事が持ち、課題解決のためにリソースを投下することが重要です。
おわりに
今この記事を読んでくださっているあなたの企業では、このような観点から自社の採用や情報発信のあり方を考えたことはありますか。今後、人材獲得競争は間違いなく激化します。この市場変化を鑑みても、見直すべきことや変えていくべきことがあるのではないでしょうか。