パーソル総合研究所は、「若手従業員のメンタルヘルス不調についての定量調査」の結果を発表した。
同調査における「メンタルヘルスの不調」とは、生活の質に影響を与えるような強い不安や悩み、気分の落ち込み、ストレスからくる体の不調などを指す。
過去3年以内のメンタルヘルス不調経験者の実態
過去3年以内のメンタルヘルス不調経験者(当時正規雇用者)のうち、勤務先を退職したのは25.3%。「20代」は35.9%と他年代と比べて多く、退職しやすい傾向にある。
部下のメンタルヘルス不調対応の負担感
メンタルヘルス不調になった部下の対応をした管理職の4〜5割が、「業務上や精神面の負担が大きかった」と回答。「業務のしわ寄せで他の部下が疲弊した」との回答も45.2%と多い。
部下のメンタルヘルス不調対応の課題
メンタルヘルス不調になった部下対応の課題は、「他のメンバーの業務量増加」が35.2%と最も多く、次いで「業務の調整負担」が26.2%と続いた。また、「予兆が見抜けない」が20.8%、「仮病が疑われる」が16.6%と、外面から分かりにくい点も課題であると分かる。
病気・けがによる休職における仮病の割合
過去3年以内にメンタルヘルス不調で休職した人のうち、「仮病」を使ったと回答したのはわずか1.0%(105人に1人)であり、身体的な病気やけがによる休職と同程度の割合。一方で、前問にあるように、管理職の16.6%が「部下が本当にメンタルヘルス不調なのか分からない」「仮病が疑われる」と感じている。
実態として「仮病」の割合は低いものの、職場では仮病への懸念が根強く存在し、この認識ギャップが適切なメンタルヘルス対応の妨げとなる可能性が示唆されるという。
「拒否回避志向」が高いとストレス反応が高まりやすい
近年強まっている若者の特徴と指摘される“5つの志向”は、若年層ほど高い傾向にあるという。他者からの否定的評価を避けたい志向が背景にあると考えられるため、同調査ではこれら“5つの志向”を「拒否回避志向」と定義。拒否回避志向が高いと、上司などからの叱責でストレス反応が高まりやすいとしている。
子供~学生時代の経験の年代差
拒否回避志向の高さと関連する「保護」「従順さの期待」「情報過多」の経験は20代で最も多く、世代による違いがうかがえる。そのため、若年層の拒否回避志向の高さは、子供~学生時代に保護的な教育環境やインターネットの利用が広がっていたために、人間関係の対立や叱責、失敗、自分なりに考える機会が減り、またSNSなどで人目を気にする機会が増えたことが一因として考えられると同社は述べる。
スクリーンタイムが長いほどストレス反応も高い
正規雇用者(非管理職)のうち、1週間のスクリーンタイム(スマートフォンなどの画面付きデジタル端末の利用時間)が長い人ほど、脳疲労や眼精疲労が高く、ストレス反応も高い。30代以上でも同様の傾向にあることが分かった。
なお、1週間のスクリーンタイムを職種別で見ると、テレワーク実施者や、情報処理・通信技術職、間接部門、事務職といったデスクワークの多い職種で、特にスクリーンタイムが長い傾向が見られた。
メンタルヘルス不調者の行動
メンタルヘルス不調者の行動として、「職場内での相談・報告」は46.1%と、およそ2人に1人。「上司に相談した」は30.6%で、非管理職者の行動に限定しても同程度であった。なお、「医師やカウンセラーに相談した・治療を受けた」は49.3%で最も多い結果となった。
メンタルヘルス不調者の職場への相談行動(年代別)
メンタルヘルス不調者の「職場内での相談・報告」率の傾向に年代差はないが、職場に相談しなかった20代のうち、35.2%が退職しており、他年代より退職率が高いことが明らかになった。
職場に相談しなかった理由
メンタルヘルス不調者が、不調を職場に相談しなかった理由は、「相談しても解決につながらないと思った」が34.5%と最多となった。他方で、相談者の約8割は「職場からの支援的な対応(相談に乗る、業務負担の軽減、医療受診の勧奨など)を受けた」と回答している。
職場のメンタルヘルス不調対応への認識と低評価予期
正規雇用者の約4割が、「職場で相談しても相談後の職場の対応イメージがない」と回答。20代では特に多い傾向にあった。
また、正規雇用者の約4割が「職場にメンタルヘルス不調を相談したら自身の評価が下がる」「職場に居づらくなる」と認識していることが分かった。20代では他年代よりやや高く、要因として若手で強いキャリア不安や仕事上の失敗への恐れが影響していると考えられるという。
相談後に職場がどのような対応をするかを不安視
メンタルヘルス不調者のうち、職場に「相談後の対応イメージ」がない人ほど、職場にメンタルヘルス不調について相談・報告することに抵抗があることが分かった。また、職場にメンタルヘルス不調を相談したら自身の評価が下がると感じる「相談後の低評価予期」がある人ほど、相談・報告に抵抗があることもうかがえる。
上司・部下間の認識ギャップ
「相談後の職場の対応イメージ」および「職場の対応についての知識」をどれだけ持てているのかを、非管理職と管理職で比較すると、認識ギャップが大きいことが分かった。
相談後の職場の対応イメージを高める施策として、「社内広報やメールなどでの情報提供・啓発」「セルフケア研修」「職場環境改善ワークショップ」といった非管理職向け啓発施策が実施されていると、相談後の職場の対応イメージを非管理職が持っている傾向が強くなるという。
職場のメンタルヘルス対策の実施率
「セルフケア研修」や「情報提供・啓発」といった、非管理職向けの啓発施策の実施率は34.7%と低いことが明らかになった。一方、「ストレスチェック」や「ラインケア研修」といった管理職向けの啓発施策の実施率は79.8%(管理職の回答)と高く、上司・部下間でギャップがあることが分かる。
なお、この設問では、ストレスチェックの集団分析結果のフィードバックを管理職向け啓発施策と捉えており、個人結果フィードバックは職場の対応についての知識を増やさないため啓発施策と捉えていないものとしている。
なお、調査の概要は次図のとおり。
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