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高柴 慶人(たかしば よしひと)氏
株式会社ハイヤールー 取締役COO
大学卒業後、ソフトウェアエンジニアとして4社に渡り開発に携わる。2018年LINE株式会社にプランナーとして入社。2020年同社のコマースメディアの事業責任者に。その後Opn株式会社でGlobal PdMを経て、2022年に株式会社ハイヤールーに参画。2023年1月に同社取締役COO就任。ハイヤールーではITエンジニア採用におけるミスマッチの防ぎ方を主に提案。
難しくなるITエンジニア採用、ミスマッチによる対応コストは500万円以上に
「人材不足が課題となって久しいITエンジニア採用において、企業は採用したい人材に出会えていない」
そう語るのは、ハイヤールーで取締役COOを務める高柴慶人氏。自身もITエンジニアとしてのキャリアを持ち、ITエンジニアの選考・採用・人材評価を支援する同社で、500社以上にヒアリングを行ってきた。その結果、8割以上の企業がミスマッチを経験し、1件あたりの対応費用に500〜700万円もかかっているという。

その理由として、従来のITエンジニア選考プロセスが十分にアップデートできていないことが挙げられる。たとえば、従来のITエンジニア選考プロセスでは、面接官次第で面接で聞く内容も評価も変わることが多い。そもそも口頭でスキルを確認する場合、職務経歴書をベースに面接するためにスキルが見えにくいという弊害がある。その結果、入社後のパフォーマンスが悪く、最悪の場合は早期退職につながることもある。そこで、面接の品質を担保して属人化を防ぎ、スキルを的確に把握することが重要というわけだ。
また、ITエンジニアの求人倍率は12倍と非常に高い。とりわけソフトウェア人材の求人数は増加傾向にあるうえ、転職者数も増えている。そのため、大企業はDXやリスキリングに投資し、新興企業はグローバルで採用を行うなど、ソフトウェア人材の確保に向けてさまざまなアプローチが試みられている。
しかし、それでも求める人材を採用することはなかなか難しく、うまくいかないことが多い。だからといって、採用数を増やすために評価基準を下げるようでは、オンボーディングなどによる現場へのしわ寄せや、既存社員のモチベーション低下など、深刻な問題を引き起こす可能性が高い。
高柴氏はグーグルの採用ポリシーを挙げ、「採用すべき人を見逃すより、採用してはいけない人を採用しないことが非常に重要」と指摘。「基準を下げずに自社に合った人、そして優秀であるITエンジニアをきちんと採用することに注力すべき」と訴えた。
そもそも選考とは「いっしょに働く仲間となれるか」を候補者、採用企業双方が見極める作業である。採用企業側は何となく数回面接して直感で判断するのではなく、各回で何を見極めるか目的をもって面接すること、そして、学歴や職歴のみで判断するのではなく、実務をシミュレーションしてスキルを見極めることが非常に重要となる。
高柴氏は、「特にITエンジニアは専門職で、さらにチームで仕事をすることが多い。だからこそ、他のメンバーと協力して働けるかを見極めるため、単なる面接だけではなく実務をシミュレートする選考プロセスに変えていくことが必要」と強調した。
ミスマッチを防ぐためハード・ソフトの両スキルを見極める
では、ITエンジニアの選考は具体的にどう進めるとよいのか。まず書類選考の段階では「職務要件の適合性」のみを見て判断する。人柄や雰囲気などはひとまず置いておき、職務だけにフォーカスすることが重要だ。
それから、「実務をシミュレートした面接」でハードスキルとソフトスキルの両面について見ていく。ハードスキルについてはデータ構造とアルゴリズム、コンピュータサイエンスの知識などを確認。ソフトスキルについてはコミュニケーション力や論理的思考、言語化、問題解決の能力などを見る。
そして、最後の「行動面接」で、候補者の過去の経験や行動が自社のバリューや行動指針と合うか、いわばカルチャーフィットをしっかり見定める。
以上の3ステップで合格となった候補者だけにオファリングをする。

逆に、悪い選考プロセスとしてよくあるのは、学歴や職歴を見て選考に進めるかどうか判断したり、面接での合否を面接官の属人的な判断に委ねたりするものだ。後者については「よく話すからいい感じ」「営業がうまそうなので」というように評価基準が面接官によってバラバラではいけない。さらに、現職の年収を基準にオファーすることも後のトラブルのもととなる。こうした面接を行っている企業は、高柴氏の肌感覚で約4割にも上るという。
選考が及第点であるかどうかのポイントには4つある。評価項目が整理され、課題を出してスキルをチェックできていること。複数の面接官の目を通したうえでフィードバックし、それをもとに総合的に判断すること。オファリングに関しても前職の年収を考慮しつつ、入社後の人事評価に関連付けができていること。そして、候補者を見極めるだけではなく、会社の魅力を訴求する効果も考慮されており、候補者にとっても良い経験となることだ。
さらに良くする方法として、スキルをチェックするための「コーディング試験」を、生成AIを意識したものに変更することが挙げられる。たとえば、自社で作問して出題する場合、数時間・数日かけて解くような大きな問題が多く、候補者の負担になりがちだ。それでは入社の優先順位が下がってしまう可能性が高い。一方、外部サービスを利用する場合、ライトで汎用的なものになるが、それだけで合否を決めてしまうことにはリスクが伴う。さらに、いずれについても評価者によって差が生じやすく、そもそも生成AIの影響で実力が見極めにくいという問題点がある。
入社後の高いパフォーマンスを予測する選考プロセス
それでは、最も良い、理想的な選考プロセスとはどのようなものか。高柴氏がその例として挙げるのが、グーグルの採用選考プロセスだ。グーグルは選考プロセスについて独自の哲学を持っており、その取り組みや成果についてはラズロ・ボック著『ワーク・ルールズ!』にも記されている。高柴氏は同書でも触れられているフランク・シュミットとジョン・ハンターが調べた19の評価方法のうち、5つについて紹介した。
入社後のパフォーマンスの高さを予測する「決定係数」が高いのは「ワークサンプルテスト」(0.54)であり、「職務経験年数」(0.18)や「学歴・年数」(0.10)はかなり低い結果となっている。ただし、ワークサンプルテストは採用された場合に担当する職務に似た仕事を1〜2日かけて実際にやってみるというもので、候補者には大きな負担となる。また、属人化を回避するために同じ質問をする「構造化面接」の決定係数は0.51で、自由に会話する「非構造化面接」の0.38よりも高い。

実際のところ、世界的なIT企業(ビッグテック)は次のような流れで選考を行っているという。
まずは45分程度の電話面接でスクリーニング。それから4〜5回の面接(各1時間)を実施し、候補者のコーディングスキルやコンピュータサイエンスの知識、問題解決能力などを評価(スコア付け)する。そして最後に「ハイヤリングコミュニティ(採用委員会)」にて、面接官から提出された「質問の内容」「候補者の回答」「面接官の評価」をもとに最終的な合否を決めていく。このとき、面接官のキャリブレーション(評価の共有やフィードバックの調整)などを通じて、評価の質を担保している。なお当然ながら、面接官はハイヤリングコミュニティに参加できない。

このような選考プロセスは理想的だ。しかし、実際に行おうとすると候補者はもちろん、面接官や採用担当者にかかる負荷も大きい。面接官はトレーニングを受けなければならないし、試験課題の作成などもたいへんだ。一般の企業でここまで実施していくことは現実的とはいいがたいだろう。
そこでハイヤールーが提案しているのが、ビッグテックの選考プロセスの軽量版といえる「スキル面接」だ。グーグルでは面接中に課題を出していっしょに解くというが、それでは面接官が事前に準備するものが非常に多く、深掘る要素を定めるのも難しいだろう。スキル面接では事前にコーディング課題を出しておき、面接の中で深掘っていくという手法でスキル(ハードスキル・ソフトスキル)を見る。

最新のITエンジニア選考プロセスをHireRooが支援
ハイヤールーのスキル面接では、ハードスキル、ソフトスキルのほか、カルチャーマッチを加えた3点を重視している。
ハードスキルは、アウトプットをもとに評価する。特に原理原則に近いスキルを確認することで、AI時代においても通用する評価を可能としている。

ソフトスキルは、面接時にフォローアップの質問を行いながら確認を行う。従来は職務経歴書を見ながら過去について聞くことが多かったが、スキル面接では「ユーザーが増えたときにはどうしますか?」というように具体的な課題をもとに質問を行い、面接官とコミュニケーションしながら解決策を導く。これにより、入社後いっしょに働いているシーンを想定したシミュレーションが実施できる。

カルチャーマッチについては、自社のバリューに基づいて「行動面接」を行いながら、過去のシチュエーションでどのような行動をとったか、しっかり深掘っていく。高柴氏は縦軸に評価項目、横軸に評価のレベルをとった「構造化面接の例」を提示し、面接官による評価のばらつきを最小限に抑える工夫を提案していることを紹介した。

さらに、準備・実施・改善のそれぞれの段階について確認しながら、より良い選考プロセスを構築していくためのチェックリストも一部紹介された。各項目を社内で実現できれば望ましいが、社外サービスを活用するのも一手といえるだろう。

セッションの最後に、高柴氏はスキル面接を簡単に実践できるサービスとして「HireRoo」を紹介した。HireRooは、AI時代にも対応するハードスキルを確認するためのコーディングや設計の課題を提供。人事担当者でも理解しやすい点数化やランク付けの仕組み、ITエンジニアの解答プロセスの詳細な分析機能、ChatGPTやGoogleなどの活用状況の確認機能などを備えている。これらをもとに「深掘り点」を洗い出して準備することで、面接も効率的に行える。
また、コピー&ペーストなどの不審な行動の検知機能や、AIによる評価支援機能を実装。さらに、構造化面接の実施をスキル面接、行動面接、状況面接などのノウハウ提供で支援するほか、面接代行サービスなども提供しており、ITエンジニアの選考プロセス改善を総合的にサポートできる体制を整えている。

さらに高柴氏は、「ITエンジニア採用の選考プロセスの改善に役立てば」と、選考プロセスの無料診断を実施していることを紹介。「気軽に問い合わせてほしい」と語り、セッションを終えた。
ITエンジニア採用に課題を抱える企業におすすめ!

HireRoo(ハイヤールー)は、ビッグテック水準の選考プロセスを導入し、AI時代にもITエンジニアの本質的なスキルを見抜くことができるサービスです。ハイヤールーが推奨する『事前に候補者が取り組んだ課題をもとに、面接でスキルや思考を深掘りし、より効果的にソフトスキル・ハードスキルを測る』採用選考手法「スキル面接」の実施により、採用ミスマッチを減らしましょう。
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