人事が知るべき、リワークに通ってもらうためのポイント
もちろん、リワークも魔法の杖ではない。吉田氏は人事へのアドバイスとして次のように話す。
「休職した人は、まず睡眠障害などで日常生活が満足に送れない状態がほとんどです。そこから日常生活が徐々に送れるようになり、社会生活にも復帰し、職場に復帰する——と段階を踏みます。ある程度の日常生活が送れるようになったら、比較的早期にリワークの提案をするのがおすすめです。というのも、本人が体力的にほぼ万全の体調になってからリワークの話をしても『これからさらに数ヵ月をかけてリハビリをするのか』と感じてしまい、なかなか行く気になりません」(吉田氏)
一般的にリワークに通う期間は3〜6ヵ月、ベスリのリワークでも2ヵ月間のプログラムに加え、産業医面談などで3.5ヵ月はかかる。「元気になったから働きたい」と思う本人にとって、さらに数ヵ月も復職が伸びるのはもどかしいだろう。休職から1ヵ月後くらいに、復職ステップとしてリワークを案内するのが、前向きに通ってもらうポイントだ。
また、「ルール化」もおすすめ。休職者によってリワークに行く人/行かない人がいると「なぜ、自分だけ?」と感じてしまう人もいることから、「半年以上休職した人」「休職が2回目以上の人」といった形でルール化すると、納得感を持って通ってもらいやすいという。
その他、リワーク施設側との連携も重要になる。
「繰り返しになりますが、適応障害は、環境と個人の適応がうまくいかないことによって発症します。リワーク施設が本人の話だけ聞いてしまうと、偏った情報でリハビリをしてしまい、本来の原因に対する解決策を考えられずに復帰してしまうことにつながります。正しい解決策を考えるためにも、企業から休職者に関する情報を共有してもらえるとありがたいです」(吉田氏)

休職者の対応に先手を打って、自信を持って復職してもらおう
現状、メンタルヘルス不調からの復職に関して、再発防止の観点から徹底的に取り組む企業はまだ少ない。企業ごとの対応もまちまちで、大企業では産業医面談を頻繁に実施していることもあるが、余力のない企業では診断書だけで従業員の状況を把握しているケースも多い。
「診断書だけで判断すると、どうしても休職者への対応が後手に回りがちです。復帰した後も職場に適応できそうかしっかりと考えるためには、休職者と定期的にやり取りをして、体調を確認するとよいでしょう。また、リワークに通っているとはいえ受け身にならず、能動的に復帰までのステップを示すことが人事部門の役割です」(吉田氏)
増加傾向にある休職者に対して、いかに自信を持って復帰してもらえるか。人手不足の昨今は、外部からの採用だけでなく、既存人材へのマネジメントも非常に重要といえる。企業だけでなく本人の幸せにもつながる手段の1つとして、リワークは今後広がっていきそうだ。
再休職を減らすリワークについて知りたい方へ
産業医と総務人事がつくった、再発防止に本当に必要なリワークに興味を持たれた方は、詳細や復職体験記が読める「ベスリのリワーク」 をご覧ください。