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人事労務事件簿 | #57

番組制作の労働時間を算定可能とし事業場外みなし労働時間制適用を認めず(東京地裁 令和5年6月29日)

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 事業場外での業務に係る労働時間の算定が困難な場合に、労働時間に係る算定義務を免除し、その事業場外労働については「特定の時間」を労働したとみなすことのできるのが「事業場外みなし労働時間制」です。しかし、その適用は労働時間の算定が明らかに困難な場合に限られます。今回紹介する事案でも、算定が難しいとする会社に対し、裁判所はみなしを認めませんでした。何により労働時間の算定が可能だと判断したのでしょうか。

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1. 事件の概要

 テレビ番組の企画制作の受託事業会社である被告(以下「Y社」)に雇用されている労働者の原告(以下「X」)が、Y社に対し、労働基準法(以下「労基法」)37条に基づく時間外および休日労働に対する割増賃金(以下「割増賃金」)の請求等を行いました。

 今回は、さまざまな争点から、事業場外のみなし労働時間制について取り上げます。

(1)当事者等

 Y社は、Y社のグループ会社である株式会社テレビ東京(以下「テレビ東京」)などで放送されるテレビ番組の企画制作の受託等を事業とする株式会社であり、通称を「PROTX」といわれています。

 Xは、Y社との間で、平成18年4月1日、契約社員として労働契約を締結し、平成19年4月1日、正社員(資格は主事)として労働契約を締結しました(以下「本件契約」)。

 Xは、平成29年10月1日付けで、制作センターから業務センター総務部兼番組管理部(以下「総務部」)に配置換えされる(以下「本件異動1」)まで、テレビ番組の演出およびプロデュースなどの番組制作業務(以下「制作業務」)を主たる業務とする制作センターに配置されていました。

 Xは、本件異動1以降、平成30年3月半ばまで、制作業務も担当していました。

 Xは、令和元年12月16日付で、制作センター付き庶務担当へ配置換えされました(以下「本件異動2」)。

 なお、Xは、平成25年7月に主事から副参事となり、現在も同じ資格です。

 本件請求期間当時、Xは、労基法41条の管理監督者に該当する者ではありませんでした。

(2)制作業務(テレビ番組の制作業務)

 テレビ番組の制作業務には、主として、番組の企画、取材、撮影、編集の各過程があります。

 企画は、取材対象者から話を聞き、資料の調査を行い、企画書案を作成し、Y社の顧客である放送局の担当者と打ち合わせ、番組の企画書を完成させる作業です。

 企画書が放送局に採用されると、Y社に発注されます。

 取材は、取材対象者を取材・撮影したり、現地を調査・撮影したり、資料の調査を行ったりする作業です。撮影は、上記取材での撮影およびこれで足りなかった映像の撮影を行う作業です。

 編集は、「オフライン」と呼ばれる映像の仮編集の段階、映像効果や文字を加えながら放送尺に合わせて作る「本編集」の段階、音の調整・音楽・ナレーション入れを行う「MA」という段階に分かれており、これらの作業は、Y社が編集作業場として利用契約を締結した企業の都内の複数事業所(以下「編集所」)で行っていました。

(3)Xの状況

 Xは、平成28年12月以降は、制作センターのJチーム長の下で、制作業務を担当し、平成29年10月1日の本件異動1によりその部署を離れましたが、平成30年3月中旬までは、自ら企画した番組「番組H」(以下「本件番組」)を完成させるために、Y社の取締役および直接の上司であるB部長の許可を得て、引き続き制作業務に従事していました。

 Xは、平成28年12月から平成30年3月中旬まで、1つの番組の制作業務を1人で行っており、1つの番組が完成するまでの間、その制作業務に2~8ヵ月間従事していました。

 また、Jチーム長から指示されて、他の者が制作を担当している番組の補助業務に従事することもありました。

(4)Y社の始業・終業時刻の管理

 Y社は、Xに対し、制作業務を担当している間は、直行直帰を許容していました。

 始業・終業時刻の報告は、スマートフォン、パソコンなどの端末からインターネットを通じてどの場所からでも入力可能な本件システムで行うよう指示していました。

 また原則として、出勤・退勤の都度、出勤・退勤のボタンを打刻(操作)し、打刻時刻を記録する方法で報告するよう指示していました。

 本件システムは、上記のほか、打刻編集の機能があり、始業・終業時刻を手動で入力したり修正したりすることもできました。

 本件システムは、打刻編集の機能を使って編集した履歴(日時および入力)が逐一記録されるものでした。

 本件システムには、1日ごとに備考欄が設けられており、残業・出張した際には、必ず備考欄に具体的な作業内容を入力して報告するよう指示がされていました。

 上記期間中のXの取材の場所は、国内が中心であり、首都圏以外(外国も含む)は事前に出張届が出されていました。

 首都圏内では、毎月、交通費の申請が領収証とともにされていました。

 また、取材先との会合費は、月ごとに領収証とともに、会合の目的・参加者および金額などがY社に報告がされていました。

 Xが撮影した映像には撮影時刻が記録されていました。編集でも完成映像ができると完成日時が記録される仕様となっています(作業中、定期的な自動保存の機能が作動し、その時刻が記録される場合があります)。

 また、編集所からY社に対し、番組ごとに編集作業を行った日付および時間帯が記載された見積書が提出されていました。

 Xは、Y社から、社用のスマートフォンを貸与され、常時これを携帯していました。

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この記事の著者

坂本 直紀(サカモト ナオキ)

人事コンサルタント、特定社会保険労務士、中小企業診断士、坂本直紀社会保険労務士代表社員。就業規則作成・改訂、賃金制度構築、メンタルヘルス・ハラスメント対策社内研修などを実施し、会社および社員の活力と安心のサポートを理念として、コンサルティングを行う。 ホームページに多数の人事労務管理に関する情報、規定例、...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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