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HRモダナイゼーション ~グローバルのベストプラクティスに学ぶ日本人事への提言~ | 第4回

タレントマネジメントのための報酬戦略 従業員のパフォーマンス・リテンションを向上させていく方法

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Pay for Talent Managementの実践

 グローバル先進企業の報酬制度の枠組みを説明しましたが、報酬戦略の本質はその実行プロセスにあります。報酬制度を人材のパフォーマンス・リテンション向上に有効機能させるには、ピープルマネージャーが鍵となります。

 グローバル先進企業では、組織・人材マネジメントの主体はピープルマネージャーです。ピープルマネージャー(以降「マネージャー」と記載する部分もピープルマネージャーを意味する)とは、部下を持つ上司・組織長のことです。自身がプレイヤーとなることなく、チームメンバーの活躍により組織パフォーマンスを発揮すべき、という考え方からそう呼ばれています。

 マネージャーはチームメンバー1人ひとりのパフォーマンスを高めることで組織目標を達成することが求められていることから、組織・人材マネジメントに責任を持ち、責任に応じた権限を持っています。ですので、チームメンバーの処遇についてもマネージャーがある程度の決定権を持っています。

 KPI連動型のSTIについては、取り決めたルールに則り機械的に計算されますが、KPI非連動型のSTIやターゲット年収の昇給は、マネージャーが自組織に与えられた賞与原資、昇給原資をもとに自身の裁量で配分します。賞与や昇給の原資はチームメンバーのターゲットボーナスや組織業績などをもとに計算・配賦されます。

 評価結果、報酬レンジの位置などから昇給ガイドラインが出ますし、HRBPやマネージャーの上位者が内容を確認することはありますが、チームメンバーのパフォーマンス・リテンションの影響を最も受ける直属のマネージャーの判断が最も重視されます。

 ガイドラインの枠内であればマネージャーの配分結果がそのまま反映されますし、ガイドラインの枠を越えた処遇についても、理由を説明して承認を得られれば可能となります。原資は組織間での不公平感が出ないように配賦されているため、上位の評価会議で金額や配分を変えられてしまうということは通常ありません。

 具体的には、「年間のパフォーマンスに応じて賞与を配分する」「総合的なパフォーマンス・ポテンシャルから昇給分を配分する」「同一グレード・同一評価のメンバーについて、報酬レンジの位置を見て昇給率に差をつける」「会社・組織にとって辞めてほしくない重要な人材なのでRSUを多めに付与する」など、チームメンバーの状況を見て細やかな処遇決定をします。さらに経験を積むと、上位組織の予備原資の獲得やオフサイクル昇給の活用など、さまざまな手段を使ってチームメンバーの処遇改善とエンゲージメント向上に取り組めるようになります。

 また、STIとLTIはその特徴を理解して使い分ける必要があります。STIは短期業績に対する報酬なので、ローパフォーマーだけでなく、そもそも短期的に成果を出すことが難しい仕事を担当している人にも厳しめの評価をしなければいけない場合があります。このあたりの運用を曖昧にすると制度が形骸化してしまいます。

 短期業績で評価しづらいけれども継続してがんばってほしい場合は、リテンション策としてのLTIが有効に機能します。LTI制度の導入事例では、一定役職以上一律、全従業員一律といった付与を行う場合があります。それも良い取り組みだと思いますが、現場に裁量を持たせるほうがLTIの特徴を活かせます

 また、マネージャーが報酬配分の主体となることで、マネージャーに裁量を与えるだけでなく、原資配賦がシンプルになる傾向があります。各組織への原資配賦は必要ですが、その後の個人への処遇は各組織のマネージャーの裁量によるので、組織間で細かなルールを調整する必要はありません。一方、人事が主体となって賞与支給・昇給を行う場合、現場から上がってきた評価などを考慮しつつ、原資予算と整合する組織横断の計算ルールが必要になり、細かな計算や係数調整で忙殺されることも少なくありません。

 このようにピープルマネージャーは、現場の第一線にいる上司であっても、報酬制度の仕組みを理解し、チームメンバーのパフォーマンス・リテンションを向上させる処遇をすることが求められます

 グローバル先進企業では、キャリア自律の仕組みが整っていて、通年でオープンなジョブポスティング(社内公募)が行われています。チームメンバーが応募先ポジションに合格して異動が決定すれば、現在の上司に止める権利はありません。本来前向きにキャリアをつくる制度ですが、上司が理不尽な対応をすると、チームメンバーがネガティブな理由で組織を離れてしまうこともあります。日本企業では社内公募制度をオープンに実施していないことが多いですが、日本においても社外への転職をキャリアパスの選択肢の1つと考える人が増えてきているので、現場上司のピープルマネージャー化は検討すべきです。

 「日本企業の現場上司は報酬制度の目的を理解した処遇なんてできないよ」と思われるかもしれません。グローバル先進企業のマネージャーにとっても簡単なことではありませんが、「上司=ピープルマネージャー」という文化や報酬制度の仕組みが定着していることからキャッチアップしやすい環境ができています。マネージャーになる前から、部下の立場で自社の報酬制度を理解しており、マネージャーになるということはチームメンバーの処遇決定にも責任を持つという認識があります。

 マネージャーが報酬制度を使いこなすためには、自組織の報酬に関するデータが必要になります。チームメンバーの属性情報(グレード・等級、現報酬、昇給状況、評価結果など)、対象グレードにおける報酬レンジやその中の位置(コンパレシオ、レンジペネトレーション)などです。また、人事は適切なデータを適切な人材に開示する仕組みを整える必要があり、ピープルマネージャーはデータの定義や活用の仕方を理解する必要があります。

[画像クリックで拡大表示]

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 今回はタレントマネジメントのための報酬戦略として、グローバル先進企業の報酬の考え方と制度の枠組みを説明しました。報酬制度を有効活用することで、自組織・チームメンバーのパフォーマンス・リテンションを向上できます。しかしそれには、ピープルマネージャー主体の実行プロセスとすることが重要です。HRモダナイゼーション推進の参考にしていただけると幸いです。

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この記事の著者

籔本 レオ(ヤブモト レオ)

ワークデイ株式会社 チーフHRストラテジスト。外資系コンサルティングファームにて、HRトランスフォーメーションを中心とした人事領域のコンサルティングに従事。その後、 事業会社(日本企業)に移り、人事部門の立場から戦略的なHRオペレーティングモデルへの変革をリード。Workdayに入社する前は、外資系...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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