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日本企業はスキルベース組織を導入すべきか?「日本型スキルベース」のススメ | 第5回

“世界一学ばない国”は変われるか?「スキルベース社会」の実現で、日本も自ら人生と学習を設計する時代へ

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個人の意識改革なしに、日本版プラットフォームの成功はあり得ない

 エコシステムの形成とともにもう1つ、日本版プラットフォームの成否を握っているのは、個人の意識改革であろう。

 日本人は小中高校・大学で「受け身の教育」を受けている。社会に出てからも勉強は企業内研修が中心であり、受動的なものが多い。それゆえ、「学習は与えられるもの」との意識が強く、日本のビジネスパーソンは世界一勉強しないと揶揄される始末である。それは、「自らスキルを習得してアピールし、ジョブを獲得していく」という欧米人の意識とはかけ離れている。

 言うまでもなく、日本版プラットフォームは個人が能動的に活用してこそ存在意義がある。個人がさまざまな場面で学習し、資格を習得したり、証明書を獲得したりしながら、キャリア形成やさらなる学習意欲へとつなげていく。この基本的な流れによりプラットフォームに良い循環が生まれるのである。それゆえ、日本人の受動的・消極的な学習姿勢を改めない限り、日本版プラットフォームの成功はあり得ない。

 個人の意識を高めるためにはいくつかの手法があるが、啓蒙活動はあまり意味がなく、外部労働市場(中途採用)の活性化が最も有効であろう。人は必要性がなければ勉強しない。そうであれば、その必要性をつくり出してあげればよいのだ。

 また、日本版プラットフォームには、ネットワーク効果が働くと予想される。ネットワーク効果とは、人々が使えば使うほど、さらにそれを使う人々が増えるという効果をいう。ネットワーク効果はGAFAMのプラットフォーム戦略が有名だが、まさに検討中のプラットフォームもこの効果が大きいと思われるため、その活性化のためにはプラットフォーム戦略の手法が有効であろう。

 たとえば、最初のうちはコストをかけてキャンペーンを行い、半強制的に登録者や利用者を増やすなどの施策が考えられる。本稿ではこの程度の記述にとどめておくが、プラットフォーム戦略に基づく施策の検討が待たれる。

「自らの人生と学習を設計する時代」の実現へ——筆者の経験を例に

 個人の意識変革が完遂し、日本版プラットフォームの利用が活性化されたその先には、各個人が「自らの人生と学習を設計する時代」の実現が期待される。では、その「自らの人生と学習を設計する時代」とは、どのようなものだろうか。私事で恐縮だが、筆者の事例をご紹介する。

 筆者は新卒で民間企業に就職して、長年にわたりその企業1社で過ごしてきた。しかし、40代の頃、あることを契機に「大学教授になりたい」と思いはじめた。いま思うと誠にささいな理由であり、最初の頃は単なる「憧れ」に近い感情であった。そして、「10年以内に大学教授になる」との目標を立て、計画を少しずつ立案していった。計画の解像度を徐々に上げていき、まさにスキルのレベルになったとき、突如として目の前が開けた気がした。計画の合理性が増して、「目標に至る道」が現実味を帯びたのだ。

 ただし、これはイバラの道でもあった。理解すればするほど、10年間では時間が足りないのだ。働きながら大学院の博士課程に進学し、専門的な資格も取得し、学会でいくつもの発表を行い、膨大な量の海外論文をサーベイする必要がある。さらに最も大変なのは、数十本の論文を書くことである。また、その当時、知人に大学教授は1人もいなかったので、これら全てのノウハウを独学で習得する必要があった。その現実を目の前に突き付けられ、途方に暮れたのであった。

 この後日談は別の場で語るとして、このエピソードからいくつかの「気づき」が抽出できる。まずは目標を立て、計画を策定することの重要性である。次に、計画の解像度を上げて、スキルレベルまで落とし込むことも大切である。また、キャリア実現に至るためのノウハウの習得も必要である。

 今後、日本でも政府主導でプラットフォームが提供され、その周辺にはエコシステムが形成されるが、それらはこのエピソードの事例を支援するツールであってほしい。「もっと早く欲しかったなあ」と筆者に思わせるものであってほしい。そう願っている。

 さて、この先人類はAI革命の時代へ突入する。その世界では、AIの開発者のみならず、通常の生活者もAIを使いこなすことが求められる社会だ。そういった世界に人類が対応するためには、できれば事前にスキルベース社会を実現しておきたい。

 人にはおのおのの人生(ストーリー)があり、それを踏まえた学習がある。日本版プラットフォームがそれらを支える基盤となってほしいと期待している。

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この記事の著者

角田 仁(ツノダ ヒトシ)

1989年に東京海上火災保険に入社。主にIT部門においてIT戦略の企画業務を担当する。2015年からは東京海上のIT企画部参与(部長)および東京海上日動システムズ執行役員。2019年、博士号取得を機に30年間務めた東京海上を退職して大学教員へ転じ、名古屋経済大学教授や千葉工業大学教授を歴任した。現在...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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