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価値創造ストーリー構築を意識した人的資本開示が進むも、開示項目は固定化—デロイト トーマツ調べ

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 デロイト トーマツ グループ(以下、デロイト トーマツ)は、TOPIX100構成銘柄企業を対象に2025年3月期までの有価証券報告書を用いて、人的資本の開示内容および役員報酬の実態を調査・分析した。

 人的資本開示調査は次のとおり。

人的資本を起点にした企業の価値創造ストーリー構築に必要なポイントを押さえて、開示を行う企業が年々増加

 人的資本を起点にした企業の価値創造ストーリー構築の取り組みが、どの程度実施されているか明らかにするため、価値創造ストーリーの具体化に必要な「経営戦略と人材戦略の連動」「人事施策と指標・目標との連動」について、計4つのポイント(A~D)から、開示内容を分析した。

A. 人的資本投資を通じて創出する成果(アウトカム)を定義しているか
  • アウトカムを定義(実施)している企業は18%、一部実施している企業は29%だった
  • 前年開示を抜本的に書き直す企業は少ないが、文章の肉付けや体系整理によって人材戦略の背景や目的を明確化させ、経営戦略につながるストーリーを充実化させる企業が目立った。人事施策を並べただけの開示から進歩が見られている
  • 一方、人材戦略が経営戦略で掲げるどの財務価値を意識しているものなのか、踏み込んで説明する企業はまだ一部であった
B. 経営を見据えたありたい姿に対する課題が明確化されているか
  • ありたい姿および現状の課題の双方の記述を実施している企業は8%、いずれかの開示にとどまっている(一部実施している)企業は50%であった
  • 指標・目標の設定を通じてありたい姿および現状の課題を定量的に把握している企業もあると見られ、定性的な開示は前年からの伸び幅が小さかったと考えられる
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C. 各施策と指標の関係性が整理されているか
  • 施策と指標の関係性を整理する企業(一部実施含む)は、前年の45%から56%へ増加。人的資本に関する指標を、ただ「指標・目標」欄で列挙するのではなく、施策テーマとのつながりを意識し、体系的に整理する工夫が見られた
  • 一方、多様な取り組みに力をいれていることは十分に伝えられているにもかかわらず、開示指標が「女性管理職比率」などの法的開示が求められる多様性指標や総合指標としての「エンゲージメントスコア」といった最小限の数にとどまる企業も一部見られた
D. 指標を活用し、各施策の進捗状況の検証・説明がされているか
  • 目標や、経年推移などによる重点施策の進捗を検証・説明している企業(一部実施含む)は前年の77%から84%へ増加。人的資本開示が3年目を迎える中で、社内データの蓄積・整備が整いつつある。ただし、グループやグローバルでのデータ収集・管理においては、エクセルでのやりとりなど、作業上課題が残る企業もまだ多いと見られる
  • 一方、進捗状況の開示として前年分のみの開示にとどまる企業や、過去より目標の年度が変更されず、中長期スパンでの取り組み目標が見えない企業も一部あった。中長期先を見据える投資家にとっては、中長期目標こそが重要な場合がある。時系列でのデータの充実化とともに、必要に応じて目標の随時見直しも、一部企業にとっては今後求められる
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開示された指標は前年から大きな傾向の変化がなく、各社が開示する指標はおおむね固定化してきている

 各社が開示した人的資本に関わる指標を、「人的資本可視化指針(内閣府)」の分類を参考に集計し、傾向を分析した。

  • 開示指標の前年調査からの差は全体的に小さく、おおむね多くの企業で採用指標は固定化してきている。一方、「エンゲージメント」(56%→63%)、「育児休業」(40%→45%)の関連指標は一定の増加が見られた。最も多くの企業で採用されている指標は、前年同様に「ダイバーシティ」(91%)であった
  • ダイバーシティを詳細に見ると、「ジェンダー」に関する指標が圧倒的に多く、「国籍」「障がい者」「キャリア採用」に関しては施策として言及はあっても指標設定は限定的であった
  • 人材育成に関する指標としては、1人当たりの研修費や研修受講率などの「育成(研修)」関連の他、デジタル人材数や自律的なキャリア支援制度の利用率などを含む「スキル・経験」に関する指標が目立った
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企業が取り組む人事施策は、「従業員サーベイ実施」「健康・メンタルサポート」が特に多い

 人的資本にかかる取り組み開示において、多くの企業で取り上げられた内容は次のとおり。

従業員サーベイ実施
  • 多くの企業で共通した取り組みとしてみられたのは「従業員サーベイ実施」であった。人材戦略の総合指標としてだけでなく、個別施策(企業バリューの浸透など)の効果や潜在課題の把握など、幅広い目的での活用がみられた
  • 単に「サーベイを年に1回実施し、結果を分析しています」といった記載だけでなく、結果評価や課題に対するアクションまで詳細に説明している企業もあった。よい点だけでなく、悪かった点も素直に開示することで、PDCAが機能していることを読み手に伝えられている事例だとしている
健康・メンタルサポート
  • 次いで多く見られたのは「健康・メンタルサポート」である。人的資本経営への関心が高まる前から健康経営の実践が政府主導で促進されてきていたことで、すでに取り組みが浸透していたことが要因とだいう
  • 一方、健康経営の実践が目的になってしまい、どのように自社の経営戦略とひも付くのか、説明が不十分な企業も一定数見られた。人的資本経営において、どのように健康経営との相乗効果を生み出していくのか、踏み込んだ説明が重要とだいう
そのほかの取り組み
  • そのほか、人材育成や女性活躍の推進の文脈で、「リーダー/経営人材研修・育成」や「子育て・介護などとの両立支援」「学習機会の提供」「社内ポジションの公募」にかかる取り組みが浸透していた
  • 「リーダー/経営人材研修・育成」については選抜研修やビジネススクール派遣など、「子育て・介護などとの両立支援」については、セミナー実施や保育(託児)所の設置、相談窓口の開設、費用補助制度など多岐にわたる取り組みがみられた

 次いで、役員報酬実態調査は次のとおり。

短期インセンティブにESG要素を組み込む企業は42%で、前年比6ポイント増

 役員へのインセンティブ導入状況について、前年調査同様、98%の企業が短期インセンティブ(以下、STI)もしくは長期インセンティブ(以下、LTI)のいずれかを導入していた(STI:97%、LTI:94%)。STIにひも付く業績指標としては「当期純利益」が44%の企業で採用されており、前年調査同様、最多であった。

 続く最多採用指標は「ESG指標」(42%)で前年調査から6ポイント増加。2023年調査、2024年調査においては、ともに「営業利益」が当期純利益に次ぐ指標であったが、サステナビリティ経営が推進される中で役員の短期コミットメントとしても「ESG」が増進している。

 LTIにおける「ESG指標」の採用は52%で、前年同水準であった。続く「TSR(株主総利回り)」は、前年から6ポイント増加で、40%の企業で採用されていた。2年連続での増加であり、欧米同様の投資家重視の報酬設計が浸透してきている。

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ESG要素をSTIもしくはLTIに反映する企業割合は、前年を上回る78%

 ESG要素をSTI・LTI問わずに役員報酬に反映させる(目標管理指標の中でESGを取り入れるケースを含む)企業の割合は78%で、2022年調査から継続して右肩上がりの結果となった。特に、短期インセンティブでESG連動が進み、昨年の41%から48%へ7ポイント増加している。

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 STIもしくはLTIにESG指標をひも付ける企業(77社)について、具体的なESG指標のテーマ別に採用割合を見ると、「人的資本活用」が62%(前年比2ポイント増)で、前年同様に最も高かった。従業員調査で取得したエンゲージメントスコアや女性管理職比率を指標とする企業が目立つ。人的資本経営に対する投資家やステークホルダーからの関心が高い状況において、役員のコミットメントが引き続き欠かせない。次に採用割合が高いテーマはCO2やGHGの排出量削減を指標とする「気候変動」で、55%(前年比4ポイント増)である。

 気候変動は、長期的な取り組みとして位置付ける企業が多く、LTIにESGをひも付ける企業(49社)のうち59%が採用しているテーマである。LTIにおいては「人的資本活用」(53%)を採用する企業の割合を上回る。STIにESGをひも付ける企業(48社)では、気候変動を採用する企業割合は31%にとどまる。

 しかし、前年結果と比較すると、LTIでは気候変動を採用する企業割合に大きな変化は見られなかったものの、STIにおいては21%から10ポイントの増加が見られた。気候変動に関して、短期的に取り組みの成果を役員に求める動きが進んでいる。

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 海外(英国・米国)企業の状況を見ると、ESG要素を報酬に反映する日本企業の割合(78%)は、91%の企業で連動が進む英国企業(FTSE100企業)に依然及ばない。一方、米国企業(S&P500銘柄の時価総額上位100社)(70%)よりは高い結果であった。英国は、デロイト トーマツでデータが確認できる2021年以降、継続して90%を超しており、ESG要素を役員報酬に組み込む企業割合は頭打ちになっている。

 米国では、ESGに対する保守系からの圧力が高まっており、ESG指標の採用が伸び悩んでいる。今後、指標の見直しやひも付け割合を低減させる企業が増加する可能性もあるという。米国でビジネス展開する日系企業は、米国市場の状況にも留意しながら、役員報酬にどのようにESG要素を組み込むか検討していくことが欠かせないとしている。

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 なお、調査の概要は次のとおり。

  • 調査期間:2025年6~7月
  • 調査目的:持続的な企業価値向上に向けたTOPIX100構成銘柄企業の最新の取り組み状況を、有価証券報告書を用いて人的資本および役員報酬の観点から調査し、現在の日本企業の立ち位置を把握するとともに、今後の取り組みに向けた洞察をまとめる
  • 調査内容:
    • 人的資本開示調査:「サステナビリティに関する考え方および取り組み」にて開示される人的資本に関する戦略および指標・目標の開示状況・内容
    • 役員報酬実態調査:「役員の報酬など」にて開示される役員の報酬制度、構成、業績評価指標など
  • 調査対象企業:2025年3月31日時点のTOPIX100構成銘柄のうち、2025年6月30日までに直近決算期の有価証券報告書を開示した99社

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労務管理から戦略人事、日常業務からキャリアパス、HRテクノロジーまで、人事部や人事に関わる皆様に役立つ記事(ノウハウ、事例など)やニュースを提供しています。

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