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人事労務事件簿 | #63

受入企業から社外労働者に指揮命令があり黙示の労働契約が成立と判断(神戸地裁 平成17年7月22日)

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 派遣労働者に対しては、派遣先企業は業務の指揮命令を出すことができます。しかし今回紹介する事案では、派遣元企業が一般労働者派遣事業の許可を得ていなかったほか、派遣労働者の残業代を派遣先企業が支払うなど、実態として労働者派遣の体をなしていませんでした。そのため裁判所は、派遣労働者と派遣先企業との間に「黙示の労働契約」が成立していると判断。派遣労働者は、派遣先企業に対して労働契約上の権利を有する地位にあることを認めました。

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1. 事件の概要

 本件は、派遣元企業との間で期間雇用契約を締結してパートタイマーとなった原告ら(以下「Xら」)が、派遣先企業との間に黙示の労働契約が成立していること、期間雇用契約が実質的に期間の定めのない契約であること、派遣元企業による雇止めに合理的な理由がないことを主張して、派遣先企業に対して労働契約上の権利を有する地位にあることの確認および賃金の支払いを求めた事案です。

 今回はさまざまな争点から、社外労働者と受入企業との労働契約の成立について取り上げます。

(1)当事者等

①Y社

 被告(以下「Y社」)は、鉄道車両用のブレーキ装置、自動扉装置、連結装置、安全設備および同部品の製造、販売、保守、修理などを業とする株式会社です。

②Z社

 Z社は、損害保険の代理業および自動車損害賠償補償保険法に基づく保険代理業、Y社が委託する経理事務、福利厚生事務の処理に関する業務などを業とする株式会社です。

 Z社は、労働者派遣法に基づく派遣事業も目的として掲げますが、一般労働者派遣事業の許可を得ていません。Z社は、全株式をY社が保有するY社の完全子会社でした。

 Z社のD取締役(以下「D」)は、Y社の管理部総務人事部グループリーダーを兼務していました。

 また、Z社の本社は、Y社の神戸事業所内に置かれています。

③Xら

 Xらは、「勤務地Y社西神工場」「職種組立作業およびピッキング作業」という内容のZ社の求人広告を見て応募し、平成15年2月6日、神戸市西区所在のY社西神工場で実技試験(金属板にビスをはめ込む等)と面接を受け、同月21日、Z社とパートタイマー労働契約を締結し、入社しました。同契約では、同年3月31日までが試用期間とされました。

 Xらが上記労働契約を交わした際、Z社のE部長のほか、Y社総務課のF氏も立ち会いました。

(2)Xらの勤務状況

①XA

 従業員XA(以下「XA」)は、Z社とY社との間の業務委託契約(以下「本件委託契約」)に基づき、Y社の西神工場油機製造課研磨班(511班)で研磨作業に従事しました。

 XAの場合、6名いる従業員のうち、Z社の従業員はXAのみでした。XAは、Y社の研磨班班長の指揮命令を受け、研磨作業に従事していました。

 マシニング班における作業の際は、マシニング班班長の指揮命令を受けました。従事した作業内容も、特にY社従業員と異ならず、Y社従業員と一体となって仕事をし、Y社から作業服の貸与を受けていました。

②XB

 従業員XB(以下「XB」)は、本件委託契約に基づき、同課組立班(519班)でバルブの組立作業に従事しました。

 XBの場合、6名いる従業員のうち、Z社の従業員はXBのみでした。XBは組立班班長の指揮命令を受け、バルブの組立作業に従事していました。

 従事した業務の内容も、特にY社従業員と異ならず、Y社従業員と一体となって仕事をし、Y社から作業服の貸与を受けていました。

③Xらの残業と有給休暇

 Xらの残業は、Y社班長の指示で行われ、有給休暇の取得については、Y社の従業員が使用している申請用紙を用い、Y社の班長に提出していました。なお、Xらは、Z社から、同社のパートタイマー就業規則を受け取っていました。

④Xらの評価と契約更新

 Xらは、平成15年3月半ば、Z社のE職域開発部長(当時はY社からの出向社員。以下「E部長」)から、同年4月1日以降、本採用とすると告げられ、新たにパートタイマー労働契約を交わしました。

 その際、E部長から、「時給を施用期間中の830円から831円にしますが、来年以降は各職場の評価により給与額を査定するので、各人によって格差が生じます」との説明がありました。

 また、本採用時の契約書には、6ヵ月間の契約期間の満了時には、社員充足状態、本人の能力、健康状態その他業務の都合を勘案し、契約の更新を行うか否かを決定する旨の記載がありました。

 同年9月末をもってXらの契約期間が満了することになっていましたが、同月29日、Xらパートタイマー労働契約を交わしていた従業員が集められて契約更新の手続きが行われ、雇用期間を平成16年3月31日までとするパートタイマー労働契約を新たに交わしました。

 XBは失念して欠席したため、同日、個別にZ社のE部長に呼ばれ、パートタイマー労働契約を交わしました。契約更新の際、XらはE部長より、「Y社企業倫理ハンドブック」を手渡されました。

(3)労働組合の加入と団体交渉

 XAは、労働組合である「あかし地域ユニオン」に加入し、平成15年11月6日、Z社との間での団体交渉が開催されました。

 XAは、あかし地域ユニオンとの意思疎通がうまくいかなかったため、同労組を脱退して「管理職ユニオン・関西」(以下「本件労組」)に加入しました。

 本件労組は、同月18日付で労働組合加入通知と、協議事項を「XAの雇用形態について」とする団体交渉申込書をZ社に送付し、同年12月4日、団体交渉が開催されました。

 この団体交渉には、Z社の取締役としてDが参加しましたが、偽装請負か否かということで話は進展しませんでした。

(4)Y社への事情聴取

 Y社は、同年11月ごろ、神戸公共職業安定所(以下「職業安定所」)による事情聴取を受けたため、本件委託契約が、労働者に対する指揮監督の点で業務処理請負としての要件(請負企業であるZ社による指揮命令)を充足していないと判断し、本件委託契約に代え、同年12月1日、業務請負基本契約(以下「基本契約」)を締結しました。

 基本契約では、期間が平成16年3月31日までとされ、Z社が、Y社西神工場で勤務するZ社の労働者を直接指揮命令する現場責任者を選任する旨の条項が定められました。

(5)2回目の団体交渉

 平成16年1月8日、Z社と本件労組との間の2回目の団体交渉が開催されました。XBは、同月22日、本件労組に加入し、同日付で加入通知をZ社に送付しました。

(6)Z社への是正指導

 職業安定所は、平成16年1月14日、Z社に対し、以下のとおり是正指導(是正のための措置)を行いました。

 当該業務の処理を適正な請負により実施するか、又は労働者派遣事業を行うことを中止すること。なお、労働者派遣事業を行うことを中止する場合は、当該業務に従事していた労働者がY社に直接雇用されるよう努めること。

(7)Xらの雇止め通知

 Xらを含むパートタイマー労働者6名は、平成16年2月6日、個別にZ社のE部長およびG氏に呼び出され、同年3月31日をもって、Z社とY社の請負契約が同日をもって終了するため、雇止めすると記載された通知書を渡されました。

(8)Y社への是正指導

 職業安定所は、同年3月5日、Y社に対し、以下のとおり是正指導(是正のための措置)を行いました。

次のいずれかの措置を講ずること。

  1. 厚生労働大臣の許可を受けた事業主(許可申請を行っている場合を含む)から労働者派遣の役務の提供を受けること。
  2. 適正な請負により業務を処理させること。
  3. 労働者派遣の役務の提供を受けることを中止すること。なお、労働者派遣の役務の提供を受けることを中止する場合は、当該業務に従事していた労働者を直接雇用するよう努めること。

(9)Xらの雇止め

 Xらは、平成16年3月31日、基本契約が終了したとして、雇止めされました(以下「本件雇止め」)。

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この記事の著者

坂本 直紀(サカモト ナオキ)

人事コンサルタント、特定社会保険労務士、中小企業診断士、坂本直紀社会保険労務士代表社員。就業規則作成・改訂、賃金制度構築、メンタルヘルス・ハラスメント対策社内研修などを実施し、会社および社員の活力と安心のサポートを理念として、コンサルティングを行う。
ホームページに多数の人事労務管理に関する情報、規定例、書式等を掲載中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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