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2025年7月29日(火)@オンライン

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インタビュー《人材育成》| DXに向けた取り組み

全社員がDXを自分事化する! ファミリーマートのデジタルリテラシー向上と実践重視の研修

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 成長期から成熟期へと移行し、激しい競争環境に置かれるコンビニエンスストア業界。その中で株式会社ファミリーマートは、デジタル技術の活用を成長の鍵と捉えている。同社は「チャレンジするほうのコンビニ」として、デジタル化を推進するためのDX人材育成に注力。全社員約5000名を対象に、経済産業省のデジタルスキル標準(DSS)をベースとした、初級から上級まで3段階の育成プログラムを設計した。本記事ではイベント「ExaWizards Collaboration Day 2025」において、同社 管理本部 人財開発部 部長の大石卓也氏が行った講演の模様と、講演後に大石氏と同部 社員教育・DX人財育成支援グループ マネジャーの佐藤義則氏に伺った話をお伝えする。

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事業成長に向け社員にデジタル化推進の意識を持たせる

 国内に1万6365店、海外に8629店(2025年10月末現在時点)と巨大なコンビニエンスストア事業を展開するファミリーマート。しかし、市場は1970年代から急速に成長したものの、近年は店舗数が横ばいとなり、成長期から成熟期へと移行しているという。加えて、eコマース、他業態との競合の脅威が顕在化。さらには、激しい気候変動や国際情勢の不安、インフレによる経費上昇といった厳しい事業環境が続いている。

 このような状況下において、同社は前年度までの中期経営計画で、コンビニエンスストア事業の基盤強化と、その基盤を活用した新規ビジネス拡大による新たな成長の好循環創出を目指した。その実現手段の1つとして「デジタル最適活用」を掲げ、ファミペイアプリや無人決済店舗、人型AIアシスタントなどのデジタルツール導入を進めている。

 ただ、これらのデジタルツールが効果を最大限に発揮し、生産性を高めるためには、社員自身がデジタル技術の活用意義を理解し、リテラシーを身に付け、デジタル化推進の役割を担う意識を持つことが不可欠となる。この認識に基づき、同社はDX人材育成に着手した。

 苦労したという人材育成施策の設計にあたっては、経済産業省が定める「デジタルスキル標準(DSS)」を参考に、社内の人材要件の定義を進めた。まず、全社員に必須の能力・スキルとして「DXリテラシー標準」を定義。さらに、DXを主導する人材の役割やスキルとして「DX推進スキル標準」を定義した。そして、デジタル技術をソリューションとしてプロジェクトを推進できる人材を「ビジネスアーキテクト」と位置付け、その育成を設計した。現在、同社のDX人材育成は3年計画の2年目の中間地点であり、計画どおりに進捗しているという。

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実践と成果にこだわる3段階育成プログラム

 ファミリーマートのDX人材育成は、初級・中級・上級という3つのレベルで構成されている。

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 初級レベルはDXリテラシーの習得が目標。DXを「自分事化」し、変革に向けた行動が可能な人材の育成を目指す。これは全社員約5000名を対象とし、来年度の完了を予定している。育成にはエクサウィザーズの学習プラットフォームサービスを活用し、eラーニングとアセスメントを実施[1]。これにより、全社員のスキルがアセスメントスコアとして定量化され、中級・上級プログラムへの選抜にも活用されている。

[1]: 「exaBase DXアセスメント&ラーニング」のプログラムである「DXリテラシー標準コース:eラーニング+アセスメント」を利用。

 中級レベルは2段階構成である。第1段階は、初級レベルでのアセスメントでビジネスアーキテクトへの適性が高いと判断された人材を選抜し、DX推進リテラシー研修を実施。この研修もエクサウィザーズのサービスを利用し[2]、業務改善につなげるためのプロジェクトマネジメントの土台づくりを行う。アセスメント結果に基づき、受講者ごとに理解度に応じた学習目標を設定できる仕組みも特徴だ。

[2]: 「exaBase DXアセスメント&ラーニング」のプログラムである「DXパーソナライズドプログラムwith Udemy business」を利用。

 第2段階では、直接的なデジタル技術の取り扱いに限定せず、業務改善を進めるうえで間違いなく必要となる力の成長に注力する。具体的には、ビジネスアーキテクトとして必要な一般的な経営知識、統計分析の知識といったビジネスリテラシーや、論理的思考による問題解決力を習得・訓練する[3]。これはデジタル技術活用の底上げを図り、DXを実践できる人材につなげることを目的としている。

[3]: 「BXリテラシー研修」「問題解決力向上研修」を実施。

 上級レベルは、身に付けた能力・スキルを業務で実践・活用することに主眼が置かれている。研修を受けて終わりではなく、受講後の行動と業務活用こそが重要とされており、同社が最も注力しているポイントである。

 上級レベルは3つの研修軸で構成される。1つ目の「DXプロジェクトマネジメント研修」では、ビジネスアーキテクトとして、デジタル技術を活用した業務改善プランを立案し、そのプロジェクトをマネジメントするノウハウを習得する。研修の最終回には、受講者が立案した業務改善プランを経営層にプレゼン。優れた案は実際に採用され、実現に向けて進められる仕組みとなっている。これにより、研修が現場の実践に直結することが保証されている

 2つ目の「データ活用研修」では、データ活用の基本から、Pythonなどのデジタルツールの操作や活用方法をハンズオン形式で習得する。ここでも実践重視であり、受講者は自組織の業務改善プランを立案し、上長へプレゼンを行う。受講後は、部署に戻り、自ら立てたプランを実行することで組織の生産性向上に貢献する。

 3つ目の「システム開発推進研修」は、コンビニエンスストア事業特有の、サプライチェーンの川上から川下まで多岐にわたるシステム開発案件に対応するため、事業部門側が要件定義できる人材を育成する。この研修の最大の特徴は、選抜された対象者が人事異動で1年間システム主管部署に配属され、OJTを中心に訓練を受ける点にある。復帰後は、元の部署においてシステム開発案件のリーダーとなり、システム主管部署と連携して案件を推進していく。

 一方、育成を進めるうえでの課題として、通常業務で多忙な社員から「忙しいからできない」という声が多いことがある。また、高度DX人材育成カリキュラムで習得した能力の価値を社内にアピールし、職場における研修への理解を進めることも今後の課題であると認識されている。

 ファミリーマートは、今後もAIを活用した業務支援などを視野に入れながら、DX人材育成を通じた企業変革に邁進していく方針である。

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この記事の著者

市古 明典(HRzine編集長)(イチゴ アキノリ)

1972年愛知県生まれ。宝飾品会社の社員、辞書専門編集プロダクションの編集者を経て、2000年に株式会社翔泳社に入社。月刊DBマガジン(休刊)、IT系技術書・資格学習書の編集を担当後、2014年4月より開発者向けWebメディア「CodeZine」の編集に参加。その後、2017年7月にエンジニアの人事をテーマとする「...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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