価値観に応じた「道筋の示し方」のヒント
働く価値観の4タイプを踏まえ、それぞれの社員に「自社でキャリアを築く未来」を具体的に描いてもらうためのアプローチを考えます。
A:バリバリ成長志向型(仕事重視 × 目標志向型)へのアプローチ
このタイプは、明確な目標に向かって努力することを好み、仕事を通じて早く昇進・昇格したいという意欲が非常に高い層です。
道筋の示し方
トップマネジメントへの具体的なキャリアパス(例:最短何年で管理職、次に事業部長へ)を明示し、そのポジションに就くために必要なスキルセット、成果基準を明確に定義します。難度の高い目標や、裁量が大きい挑戦的なプロジェクトへのアサインメントをキャリアパスの一環として組み込みます。
B:スキル追求・探索型(仕事重視 × 現在起点型)へのアプローチ
仕事への意欲は高いものの、キャリアの目標は固定せず、今の仕事から興味を広げ、新しいスキルや専門性を追求したいという層です。
道筋の示し方
社内公募制度やFA(フリーエージェント)制度を充実させ、多様な専門職(スペシャリスト)としてのキャリアパスを明示します。部署異動や兼務、越境学習といった「探索の機会」を制度として用意し、「この会社にいれば、興味が向くままにスキルを深められる」という安心感を与えます。
C:両立志向型(生活重視 × 目標志向型)へのアプローチ
ワークライフバランスを重視しつつも、将来的に担いたいポジションや役割に向けて、ライフイベントに対応しながらキャリアを継続できる道筋を求めている層です。
道筋の示し方
両立支援制度やプライベートと仕事を両立させているロールモデルを提示します。具体的には、育児や介護と両立しながら専門性を発揮している社員の事例を紹介し、「ライフステージが変わっても、この会社で働き続けられる」という安心感を与えます。必ずしも組織マネジメントだけが目指すキャリアパスではなく、専門職や特定の領域でも安定的に活躍できる仕組み(複線型人事制度)も必要です。
D:コツコツ生活充実型(生活重視 × 現在起点型)へのアプローチ
働くうえでは生活やプライベートの充実を第一に考え、その中で今できることに取り組み、大きな変化を望まない層です。このタイプが「静かな退職」に陥るリスクを最も抱えています。
道筋の示し方
大きなキャリアチェンジを促すのではなく、「緩やかな成長」の道筋を示します。例として、「今の業務の質を向上させるためのリスキリング」や「業務改善による自己成長」を評価します。また、業務の中で小さな1歩で新しい経験を積める機会を上司が提供し、徐々に視野を広げるサポートが有効です。

