とにかくカルチャーを大切にして成長してきた
「スモールビジネスを、世界の主役に。」をミッションに掲げ、人事労務や電子契約など企業のバックオフィス業務を効率化するためのクラウドサービスを提供しているfreee。2012年に創業した同社が2019年に上場したときの従業員は約400名で年商は約50億円、6年後の2025年は2000名で年商は約330億円と成長を続けている企業です。
そんな同社に約100名の時期に入社し、今日までの成長を支えた1人が、本書『freee 成長しまくる組織のつくりかた』(大和書房)の筆者 専務執行役員 CHRO 川西康之氏です。本書では、freeeの組織づくりに深く関わってきた川西氏の実体験をとおして、同社が試行錯誤してきた組織づくりのエッセンスを紹介。ミッションとカルチャーを“しつこいほど”大切にしてきた理由とその浸透方法を共有します。
常に「freeeらしさ」が漂う同社では、2000人規模の組織となったいまも同社独特のユニークなポイントが保たれているというから驚きです。次に一例を挙げます。
- 「超フラットな組織」。「役職はただの機能」と本気で思っている
- 創業初期からオフィスに「社員の遊び場」がある
- 夏休みには「子連れ出社」が歓迎される
川西氏は、同社が“成長しまくる”組織となった理由は、これらのような独自の企業文化にあり、組織づくりのことを「企業の成長を支えるうえで最も重要なレバレッジポイント」だといいます。
freeeでは、創業初期の段階から、ミッションやカルチャーを軸とした組織づくりに積極的に経営資源を投下してきました。(中略)その理由は明確です。組織の制度や文化は、組織の規模が小さいほど設計・検証がしやすく、のちの成長を支える強固な土台となるからです。(p.25~26)
上長を「ジャーマネ」と呼ぶ 人事施策を徹底解説
とにかくミッションやカルチャーの浸透にこだわってきたことが伝わる本書では、「行動指針」「採用」「評価制度」「自律型組織」といった切り口で、同社がこれまでに実施してきた施策が具体的に紹介されています。
たとえば同社には、「ジャーマネ(役職問わず、上長のこと)」「ハッピー(バグのこと)」「ネスト(オフィスのこと)」といった「freee語」が数多く存在し、メンバー間でも違和感なく使われているといいます。
言葉は個人の思考を変え、行動を変え、組織の空気を変え、やがて組織そのものを変える力を持っています。だからこそカルチャーに本気で取り組むなら言葉にも本気でこだわる。それがfreeeの一貫したスタンスです(p.81)
また、コロナ禍ではすぐにフルリモートを導入し、一方で今では原則出社に回帰したという同社のスピード感と意思決定も興味深いエピソードでした。
最後には、特別対談として創業者であるCEO 佐々木大輔氏と「『進化を止めない組織』をつくる」というテーマの対談が掲載されています。本書で徹底的に語られてきたミッションとカルチャーに関する総まとめであり、同社トップである佐々木氏の言葉と本書のメッセージがぶれていないことが、本書の説得力を高めます。
自社のミッションやカルチャーと向き合うきっかけに
ところで、みなさんの中には、「ミッションやカルチャーは企業ごとに異なるのだから、本書を読んで参考になるのだろうか」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、川西氏は「組織づくりにおいてすべての企業に共通して重要なことがひとつある」といいます。
それが何なのかは本書で確認いただくとして、私はその指摘がとても腑に落ちました。人的資本経営の重要性が高まり、「経営戦略と人事戦略の連動」が求められ、人事変革が求められている現在。暗中模索の状態で取り組みを進めている人事部門も少なくないのではないでしょうか。川西氏の指摘は、組織づくりにおける1つの指針として参考になるのではないかと感じました。
「自社のミッションやカルチャーはなんなのか」と考え、「自社が成長するための組織づくり」に向き合うきっかけとなる1冊です。とても分かりやすく整理されているため、仲間といっしょに読むのもよいのではないでしょうか。ぜひお手に取ってみてください。

