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人的資本経営 Executive Deep Diveレポート | #2

生成AI時代に求められる多能化人材へ 日揮HDが描く人事機能の「船中八策」と人的資本経営の実践

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変革を進めるための3段階の目標設定「ルーフショット」「シーリングショット」「ムーンショット」

松岡 本日伺ったお話の中で、花田様がユニークな人事施策を次々と考案し、実践し、着実に変化を起こされていることが、たいへん印象的でした。これから変化を起こそうとされている日本企業に対して、どこから手をつければよいのか、人を動かし、変革を進めるためのヒントをいただくことはできますか。

花田氏 なかなか難しいところですよね。会社から社員に対して何の説明もなく、たとえば、いきなり「10年先を考えるとジョブ型人事です。ゼネラリストではもうだめです。あなたはスペシャリストになりなさい」と言われても、社員がそこに向かって継続的に努力するのは難しいですよね。私はそういったことはやり方ではなく、なぜそれをするのかというWHY(理由)の見える化が重要だと考えています。そして、WHYの見える化を行うため、私は次の3段階に分解した目標設定をイメージしています。

変革を進めるための3段階の目標設定

As-Is(現状)

  1. May-Be/Can-Be(業務改善で到達できるレベル)
  2. To-Be(業界で勝ち抜くために必要なレベル)
  3. Would-Be(夢のような目標)
(花田様の講演内容より野村総合研究所が作成)
(花田様の講演内容より野村総合研究所が作成)

目標段階 ①May-Be/Can-Be:目標達成のためのシーリングショット

花田氏 最もよく注目されるAs-Isと②To-Beの間のギャップですが、②To-Beは、自分たちを取り巻く環境の変化や技術の進化を十分に反映せず、単なる業務改善だけでできるようなラインで引いてしまってはいけないと思います。

 そのようなラインを私は①May-Beと呼んでいます。大体ここまで行くかもしれないとか、ここまで行けばいいやとか、できると分かっていること(Can-Be)も含まれます。少しジャンプすれば届くような天井にたとえたシーリングショットですね。

 会社としては、改善すれば解決できるような課題に向き合うだけでは、先人が行ったことの繰り返しになるので、仕事の魅力度は上がりません。

目標段階 ②To-Be:目標達成のためのルーフショット

花田氏 ②To-Beというのは、このような状態にならないと業界の中で勝ち抜いていけないという、普通の業務改善だけでは絶対に届かないというラインですね。これは、常に見えているがなかなか届く高さではない屋根にたとえたルーフショットです。

 誰しも変わりたくないし、たいへんな取り組みはあまりやりたくないですよね。しかし、②To-Beと①May-Beを分けて見える化をする。それでギャップを見て、シーリングショットでは足りなければ、絶対にルーフショットを決める。そして成功すれば将来のバリューに結び付くとなると、やり方が絶対的に変わってくる。仕事に興味も湧いてくる。

 これが②To-Beと①May-Beを分けて見せる意味です。

目標段階 ③Would-Be:目標達成のためのムーンショット

花田氏 ②To-Beの上には仮定法過去の③Would-Beがあると思っています。必ずしも実現しない夢というのがどの企業においてもあるはずです。これはいわゆる世の中でいうムーンショットですね。夢が語れるような目標が③Would-Beのムーンショットです。

 人事戦略で考えると、いま足元を見据えて実施すべきことだけでなく、10年後や15年後といった将来を見据えたときに、今から準備しておくこともあるはずです。私は頭の中をそのように整理し、あるべき姿を捉えて、日揮の人的資本経営に取り組んでいます。

松岡 シーリングショット、ルーフショット、ムーンショットという3段階の目標設定からWHYを紡ぎ出せるかどうかが、リーダーが組織を動かすため、変革を実現する文化を醸成するために非常に重要ですね。ありがとうございました。

モデレーターから一言(編集後記)

 花田様とは、このイベントのために数回打ち合わせをさせていただきました。花田様が毎回、ご自分の言葉でお考えや日揮グループでの取り組みについて熱く語ってくださるので、打ち合わせ終了後の私はいつも、大切なお話を聞かせていただいたという尊さでしばらく次の仕事が手につかず、クールダウンに少し時間がかかってしまったことを正直に申し上げます。

 またご登壇の後、ご自身の土木工学出身というバックグラウンドから、次のように語っていらっしゃったことも印象的でした。

 「日本企業には人と人に斜めのつながりがあり、これが企業の強さにつながっています。たとえば、構造物には風などの外力がかかるのですが、これに柔軟に対応して吸収してくれるのがブレースや筋交いという斜材で、これがないとものすごく太い柱が必要になってしまう。それが組織のサイロ化といえます。

 だから、斜めのつながりをつくるようにしています。他の部門、他のチーム、他の会社のCHROといった社内外の斜めのつながりが多くなり、アームレングスが長くなると、モーメント力が強くなってくる。そんな新たな人と人のつながりにチャレンジしてもらいたいなと思います。

 参加者の皆様とともに、私も本当に勉強させていただきました。ありがとうございました」(花田氏)

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この記事の著者

松岡 佐知(マツオカ サチ)

ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会 上席研究員
野村総合研究所 コンサルティング事業本部 人的資本経営ドメイン シニアプリンシパル

京都大学法学部卒業、London School of Economics and Political Science修士課程修了(MSC in Internationa...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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