生成AIの進化により求められる「バーサタイリスト」と「資質のいつつぼし」が拓く可能性
松岡 生成AIの進化が人に与える影響を考慮し、これからの人材は複数の軸を持つ「バーサタイリスト(多能化人材)」であることが求められるとお考えだそうですが、こちらについても教えていただけますでしょうか。
花田氏 日本企業にはゼネラリストが多いといわれます。ゼネラリストといっても、全く専門性なく仕事をしているのではなく、浅い深掘りはしながら仕事をします。しかし、そのレベルの深掘りは生成AIがやってしまうようになる。深掘りのない仕事はなおさら生成AIがやってしまう。そんな時代に必要な人材像は、今までのゼネラリストとスペシャリストというような2つの区分では語れない。バーサタイリストでなければならないと考えています。
バーサタイリストになるというのは、人間にしかできない深掘りできるゾーンを次々と増やしていくということです。たとえばエンジニアであれば、建築設計もできるし、機器設計もできる。化学プロセス設計もできるし、プロジェクトマネジメントもできるというような感じですね。あるいは、文系/理系の枠を越え、文系出身で人事を担当している人材が、自分の業務時間の3割は技術系業務(プロジェクト管理)もしていますというイメージです。
もともと、日本は技術立国で成長してきたわけです。やはり技術レベルの高い、国の礎となる産業が今以上に進化していくことが産業発展の大前提となるのではないかと思います。多様な方にエンジニアリングにチャレンジしていただきたいし、その可能性を生成AIが高めていく。その意味でも、バーサタイリストという考え方が重要だと思っています。
松岡 ありがとうございます。バーサタイリストについては、ハードスキルに加え、ソフトスキルのような人材の「資質」の可視化について取り組まれているそうですね。こちらについてもご紹介いただけますか。
花田氏 いろいろな業務を経験していく中で得られる知識、プロジェクトマネジメントやリーダーシップといった能力、これらとは別に資質が人間のバリューを考えるうえで不可欠だということから、チャレンジしました。
氷山モデルにたとえると、成果を支える能力や知識よりさらに深い層にあるのが資質です。生まれながらに持っている性格と、10代くらいまでに生活習慣などから決まってくる特性を合わせて資質と呼んでいます。
私たちのプロジェクトチームは、資質を「胆力」「洞察力」「好奇心」「素直さ」「客観性」の5つに集約しました。この「資質のいつつぼし」の組み合わせによって多様な人材像が形成され、チームビルディングや個人のキャリア形成に役立つと考えています。
たとえば、胆力の器の大きさが1升瓶の人と、4合瓶の人がいて、同じ3合分の負荷がかかっているとします。あと3合分の胆力の負荷を注ごうとすると、1升瓶の人はまだ大丈夫ですが、4合瓶の人はオーバーフローしてしまいますよね。ただ、仮に好奇心の4合瓶を持っていたら、その瓶に注げばよい、というような考え方です。
資質のいつつぼしは、社員全員が自身の資質を認識して磨き直すことで「社員全員の戦力化」を実現し、日本全体の生産性向上にも貢献できると期待しています。現在、この資質をアセスメントするツールの開発を進めています。
松岡 ありがとうございます。資質のいつつぼしは、全部について100点を取ってくださいということではなく、いつつぼしの中でいろんな星の取り方があってよいということで、いろいろなタイプのリーダーが育っていったり、良いチームとかコミュニティがつくれたりするということで、展開の可能性が広がりますね。
花田氏 会社に来ている意義を考えると、業務することも重要ですが、コミュニティに入っていることも同じように重要です。日本企業には、こうしたコミュニティが少ないですよね。生成AIも活用しながら、資質もタグに加えてコミュニティをつくることで、ウェルビーイングの向上にもつながります。

