生成AI活用には、明確な「段階」がある
生成AIの活用は、一足飛びに高度化するものではありません。現場の使い方やデータ活用の深さによって段階的に進むのが実態で、一般的には次のステップを踏みます。
Lv.1:生成AIサービスを利用
ChatGPTなどのサービスを使って、情報収集や文章作成、アイデア出しなどに活用している段階です。個人利用が中心で、AIが持つ一般的な知識だけで完結するケースが多いのが特徴です。
Lv.2:自社データを活用できる生成AIを利用
社内規程やナレッジなど、自社固有の情報をAIに連携し、個別の状況に応じた回答や分析ができるようになった段階です。 FAQチャットボットや、社内データを使った検索・分析などが代表例です。
Lv.3:生成AIで業務フローの一部を自動化
業務フローの中にAIを組み込み、承認やチェック、記録などの処理を自動化する段階です。例として、通勤手当の申請チェックでは、AIが申請内容をもとに社内規程や外部ツールを参照し、次のような観点で事前判定を行います。
- 要件を満たしているか
- 補助対象かどうか
- 差し戻しが必要か
AIが“処理”を担い、人は“最終判断”に専念する体制が整いはじめます。
Lv.4:AIエージェントが人を介さず業務遂行
AIが人を介さず、自律的に業務を実行する段階です。たとえば、従業員の状況変化に気づいて申請を先回りで案内したり、複数の情報を横断して提案するなど、エージェント的なAIの活用が期待されます。 このようにレベルを定義することで、自社の現在地や次に目指すべき方向性が明確になり、計画的な導入が可能になります。
活用が個人で止まる原因「4つの壁」とは
また、生成AIを組織に浸透させる際には、次の4つの壁が現れます。
Lv.0 → Lv.1 の壁:始めるための壁
最初の壁は、“始めるための壁”です。ガイドラインの整備、生成AIの使い方を学ぶ機会の提供、環境構築、経営層への説明など、スタートラインに立つための準備が求められます。
Lv.1 → Lv.2 の壁:インプットの壁
ここでは、AIに自社のデータを活用させるための“インプットの壁”が立ちはだかります。データ整備やプロンプト設計、セキュリティ対応に加えて、情報を部門内で閉じてしまう文化の克服も必要です。
Lv.2 → Lv.3 の壁:業務統合の壁
AIを業務の流れに組み込む段階では、技術面だけでなく組織の意識改革が求められます。フローの可視化やルール決定に加え、特に大きいのが「判断をAIに任せることへの心理的な抵抗」です。長年の経験に基づく“勘”や属人的なノウハウをどう形式知化し、AIと協働する体制を整えるか——ここが最も大きな分岐点となります。
Lv.3 → Lv.4 の壁:自律化への信頼の壁
最後の壁は、「AIが自律的に動くことへの信頼」と「部門をまたぐ情報連携」です。AIに委任する業務の線引きや、サイロ化された情報をどう扱うかといった、組織文化に関わる課題が主な論点になります。
特に多くの企業がつまずいているのは、「Lv.1 → Lv.2 の壁:インプットの壁」です。つまり、“データ整備”と“現場協力”が同時に必要になる難所といえます。
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以上、前編では、個人利用の急速な拡大や活用モデル、浸透を妨げる4つの壁などを整理しました。後編では、これらの壁をどう乗り越えるか——組織がすぐに実践できる「具体的な活用ステップ」を紹介します。

