ステップ2:リスク管理は“範囲”でコントロール
データ連携ではセキュリティも重要ですが、厳格すぎるルールでプロジェクトを止める必要はありません。安全に進めるポイントは、「情報の種類ごとにAIアクセスの範囲を決める」ことです。
事前に次のような線引きを行えば、安全かつ段階的に利用範囲を広げられます。
- 規程や公開文書:すぐ連携可能
- 給与・評価など機密データ:マスキングや分離が必要
- 個別情報:厳格なアクセス制御
ステップ3:現場協力は「伴走者」として獲得
現場の協力を得る際、トップダウンで指示するだけでは不十分です。
「自分の仕事が奪われるのではないか」「新しいタスクが増えるのではないか」こうした不安が先行すると、どれだけ方針が立派でも協力は得られません。
鍵は、現場の面倒な作業をいっしょに解決する「伴走者」になることです。
たとえば、スカウトメール作成に時間を割いている担当者に対し、「このプロンプトを使えばたたき台が数分でつくれるので、推敲に時間を使えるようになりませんか?」と提案し、いっしょに画面を見ながら試してみるのです。
このような小さな成功体験を積み重ね、成果を部門内で共有することで、組織全体に「AIは使える」という前向きな感覚が広がります。
ステップ4:AIと人の役割分担を明確化する
自社データとの連携基盤が整ったら、次は「業務フローへの組み込み」を行います。ここで重要なのは、AIと人の役割を明確にすることです。
- AIが担う領域
-
- ルール化できる処理
- 申請内容と規程の照合
- 文章や資料のドラフト作成
- 情報検索や要点整理
- 人が担う領域
-
- 最終判断・例外対応
- 倫理的判断
- 共感や対話が必要なコミュニケーション
- キャリア支援や育成
AIは「判断の材料」を整え、人は「最終判断と対話」に集中する。この役割分担こそが、業務の質を落とさず効率化を実現するポイントです。
これからの人事は、AIが提示する選択肢に対して「自社らしさ」と「人への配慮」を組み込む判断者へと役割がシフトします。AIは思考を補助し、質問や資料に応じた材料を提示してくれますが、それが自社に合うかどうかは別問題です。制度設計も、施策立案も、自社の歴史や風土を踏まえた判断があってこそ、従業員の心に響くものになります。
忙しい人事が、必ずしもプロンプトを完璧につくり込む必要はありません。AIに「たたき台」をつくらせ、何度も対話しながら質を高め、最後に人事としての判断を加える。この意識の転換こそが、壁を乗り越える鍵となります。

