「会社の未来を作るのは自分だ」 データが示した意外な真実
エンゲージメント向上に向けた施策を打つ際、多くの企業が従業員意識調査(サーベイ)を活用する。しかし、単に「不満が多い項目」や「満足度が低い項目」を改善すれば良いわけではないと、山崎氏は指摘する。
「重要なのは、各項目とエンゲージメントスコア(eNPS)との『相関関係』を見ることです。たとえば、同業他社と比較して『報酬』への満足度が低かったとしても、報酬とエンゲージメントの相関係数が低ければ、投資をしてもエンゲージメントは向上しません。影響度が小さい施策には投資をしないという判断基準を持つことが重要です」(山崎氏)
同社の分析では、経営環境の変化によって、エンゲージメントに影響を与える要因が様変わりしていたことが分かった。コロナ前は「仕事そのもの」「仕事量のストレス」「報酬」との相関が高かったが、コロナ禍以降は「経営方針」と「教育機会」がトップ2の重要項目へと変化していたのだ。
さらに、サーベイのフリーコメントを分析すると「経営再建に貢献したいから現状を知りたい」「会社の未来をつくるために経営戦略を学びたい」という前向きな意欲を持っていることが明らかになった。
「当初は『市場価値の高い人から辞めていくのではないか』と危惧していましたが、実際は逆でした。残ってくれたのは『会社の未来をつくるのは自分だ』という気概を持つメンバーたちだったのです。ならば、彼らが望む機会を提供しようと決めました」(山崎氏)
こうして同社は、2023年に「業務的機会提供」「教育的機会提供」「経営との対話・メッセージング」の3つを柱とする人事戦略を展開した。中でも力を入れたのが教育投資だ。
経営再建に貢献したい、学びたいという社員の声に応え、ビジネススクールへの派遣などを実施。リスキリングを目的として始めたわけではなく、社員の希望に応えた結果、それが戦略の柱となったのである。

