登壇者

穴沢 真基(あなざわ まさき)氏
株式会社良品計画 人事部
2003年金融系SIerに入社し、資産運用系のシステム開発を担当。2007年アフラック(現アフラック生命保険株式会社)に入社。IT部門、米国駐在を経験し、2020年より人事部にて人事領域におけるテクノロジー活用に従事。2024年11月より株式会社良品計画に入社し、現在に至る。

吉田 健人(よしだ けんと)氏
株式会社物語コーポレーション 経営理念・D&I本部 人財戦略部 部長
物語コーポレーション 経営理念・D&I本部 人財戦略部 部長。現職では「myエリア制度」の導入を牽引。早稲田大学卒業後、総合商社、アウトソーシングサービス業界の2社で一貫して人事関連業務に従事。事業部制度から役員報酬制度の策定、能力開発、最大3万名規模の給与計算BPOのプロジェクトマネージャーなどを経験。事業戦略を意識した人事戦略の構築と実行を得意とする。
モデレーター

吉田 祐基(よしだ ゆうき)氏
株式会社カオナビ 事業戦略本部 カスタマーマーケティンググループ マネージャー
フリーランスのライターを経験後、編集プロダクションに就職。特に金融領域の雑誌・Webコンテンツ・PR誌制作を担当。その後、カオナビに制作ディレクターとして入社。会報誌「カオつく!」やWebメディア「人事のヨコガオ」の運営を担当するほか、「カオナビキャンパスLab」や認定資格「タレントマネジメントプロフェッショナル」などの立ち上げを経験。
大手企業の成長を支えるタレントマネジメント
——今日は「タレントマネジメントの成果ってどう測る? 『事業貢献』につながる人事施策」というテーマでお話ししていただきます。まずは各社の状況を教えてください。
穴沢真基氏(以下、穴沢) 良品計画の穴沢と申します。当社は無印良品を中心に生活にかかわる幅広い事業を展開しています。
特徴として、駅ビル内にあるような小型店舗から路面店まで店舗フォーマットが幅広い中で、本部が一律で企画するとそれぞれの店舗の力を最大限発揮できないという状況があり、「従業員1人ひとりが経営者目線を持つ“個店経営”」を掲げています。
一方で、これらは現場にとってとても難しい要求であることも把握しています。直近の状況として、新卒社員はおよそ入社3年で店長に就任するケースが多くなっています。かつてに比べると、十分な経験を積む前に店舗の売り上げ管理や人材マネジメントを担う状況が発生しているのです。
そこで人事部としては、経験の浅い店長でも適切な意思決定ができるよう、後押しとなる武器としてデータやシステムを提供していこうと考えています。その一環として、人にまつわるデータを集約した人事データダッシュボードや、タレントマネジメントシステムの活用を進めているところです。
吉田健人氏(以下、吉田) 当社は焼肉きんぐや丸源ラーメンなどの飲食店を展開している会社です。現在の従業員数は約1800名で、2030年には売り上げ3000億円を目指す規模感の中で人事を担当しております。
当社のタレントマネジメントの状況としては、データをしっかりと蓄積して更新するフェーズ、生産性を高めるフェーズを経て、現在はタレントマネジメントの最終的な成果を目指す領域に取り組んでいます。
タレントマネジメントの成果はどう測る?事業と従業員それぞれの視点
——それではさっそく、タレントマネジメントの成果についてお聞きします。まずは、それぞれの会社で成果をどのように定義し、どのように測っているのかを教えていただけますか。
穴沢 当社の場合は、明確に経営戦略に紐づく人事戦略があり、それが人事施策へとつなげていく構造になっています。目標達成のために世界に向けた、「出店拡大」「日本のオペレーションの普及」「商品開発体制の強化」「OMO強化」「マーケティング戦略」「生産性改善/SCM改革」「ITによる支援」「本業としてのESG」という「8つの成長ドライバー」を掲げており、それを達成するための戦略や施策として人事が何を行えるかを考えています。
したがって、タレントマネジメントの成果もこの成長ドライバーの指標で測定するのが当然の流れだと捉えています。
具体的な成果の指標は大きく2つです。1つ目は、事業戦略や事業成果に直結する指標です。店舗でいえば売り上げや生産性が重要であり、そういった観点に人事が関与し、最終的に事業成長に貢献できるかどうかで評価されるべきだと考えています。
2つ目は、人材確保や組織の状態を中長期的に捉える指標です。採用者数や研修参加者数といった一般的なデータに加えて、従業員の持ち株の保有率も数値化しています。これは事業成長の観点を従業員が持てるという意味で、個店経営にもつながっています。
これらの成果を測るためには、感覚ではなくデータを使ったコミュニケーションが不可欠です。そのため、私のようなテクノロジーやデータを扱える人材が人事部に加わりチームをつくることで、経営と現場をつなぎながら課題解決を目指しています。
——経営戦略と連動させて明確に指標を定義されている点が特徴的ですね。これに対して、物語コーポレーションさんでは成果をどのように定義されていますか。
吉田 当社では成果を、従業員視点と経営視点の2つで見ています。まず従業員視点。当社は、「個の尊厳を組織の尊厳よりも上位に置く」と謳っています。個人が満足して働かなければ事業は成長しないという根本的な考えがあり、人事もそれに則って施策を考えています。
従業員視点の指標としては、希望しているエリアにどれだけ配属されたかという希望エリアの配属率を計測しており、現在は約85%の達成率となっています。より適正な人事異動を行うためにどのようなデータが必要かを模索しながら取り組んでいます。
もう1つの経営視点については、従業員視点だけを追求して経営がうまくいかない事態を防ぐため、サクセッションプランの作成を進めています。予定しているポストに対して要件を満たす人材がどれくらい充足しているのかをシステムで管理し、運用していく取り組みを始めているところです。
穴沢 希望エリアの配属率が85%もあるんですね。驚異的ですね。これは個人と組織のバランスはうまく取れているのでしょうか。
吉田 そうですね、やはり急な人事異動は発生してしまうのですが、タレントマネジメントシステムを開けば必要なデータがすぐに見られる状態になっているため、異動を決めているブロック長がさまざまなデータを加味して判断してくれるようになったことが大きな成果だと感じています。

