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未来へ駆動する「戦略人事」のヒント:AI時代の人・組織・制度を考える | 高業績チームをつくる方法

“スター人材”や“偶然”だけでは高業績チームは生まれない——人事が押さえるべき「10の視点」とは

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 制度や評価制度をどれだけ整えても、チームの成果が思うように上がらない。同じ違和感を抱えている人事部は少なくありません。個々の人材は優秀で、評価制度や育成施策も充実している。それでも現場を見ると、意思決定が遅い、会議が多い、変革が進まない——。こうした状況の背景には、「個人」ではなく「チーム」がどのように機能しているかという視点が、これまで十分に扱われてこなかったという構造的な課題があります。本稿では、EYが世界中のチーム支援の知見を基に整理した「高業績チームに共通する要素」の考え方を手掛かりに、日本企業の人事が、今あらためて向き合うべきチームづくりのエッセンスを10の視点にまとめて紹介します。

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高業績チーム——High Performing Team(HPT)を定義する

 VUCAと呼ばれる不確実な時代において、企業の競争力を左右するのは「戦略」や「制度」だけではありません。実行の主体であるチームが、どれだけ速く、かつ質の高い成果を出せるかが、企業価値に大きな影響を与える要素の1つです。

 まず、EYは、高業績チーム「High Performing Team(以下、HPT)」を、共通のビジョンを持ち、互いを信頼し、成果に対して責任を持ちながら、継続的に高い結果を出し続けるチームだと定義しています。

 重要なのは、一部のスター人材や個人の努力によって成立するものではないという点です。HPTは、チームとして「どのように協働するか」「どのように意思決定し、対話するか」といった日々の行動の積み重ねによって形づくられます。個人最適ではなく、チームとしての機能性に意図的に投資している点に、HPTの本質があります。

HPTを日常のチーム運営の中で実現するには?

 では、このHPTを実現するために、日常のチーム運営においてどのように実践することができるでしょうか? それには、次の10個の視点があります。

 「Shared Vision(共有ビジョン)」「Trust(信頼)」「Healthy Conflict(健全な対立)」「Accountability(アカウンタビリティ)」「Communication(コミュニケーション)」「Protocols(チームプロトコル)」「Overcoming Challenges(課題への向き合い方)」「Coaching(コーチング)」「Flexibility(柔軟性)」「Gracious Acts(感謝と称賛)」——これら10の視点は、チェックリストのように個別に導入するものではなく、相互に影響し合いながら、チームの関係性と行動を形づくり、結果として成果の質とスピードを高めていく要素です。

高業績チームに共通する10要素
高業績チームに共通する10要素

 次に、それぞれの要素と人事に必要な視点を解説します。

1. Shared Vision(共有ビジョン):チームは「目標」ではなく「意味」で動く

 高業績チームに共通しているのは、数値目標の明確さ以上に、「なぜこのチームが存在しているのか」が共有されている点です。会社や部門の方針は伝えられても、チームとしての存在意義が語られる機会は多くありません。しかし、多くのメンバーが「自分の仕事が、社会的な価値につながっている」と理解したがっています。

 人事としては、目標管理の仕組みや、部門KPIの展開にとどまらずにチーム単位で「存在意義」を言語化する対話の場づくりといった視点があるでしょう。

ヒント

 EYが支援した業務のデジタル化の事例では、幹部層に対して、デジタル活用の率先垂範をするように訴えました。現場が紙からデジタルツールに業務を変えていくという業務目標に対しても、その組織が持つサービスや顧客・受益者にとっての意味付けやその先の未来に対するイメージを語るように、リーダーに準備してもらいました。リーダーは、トップダウンで「やりなさい」というマネジメントスタイルを変えていき、大きな変革を乗り越えるためのリーダーシップスキルを再考してもらいました。

2. Trust(信頼):信頼は「仲の良さ」ではない

 HPTが指す信頼とは、居心地の良さではなく、率直に言い合える関係性です。たとえば、違和感を抱いたときに黙ってしまったり、上司の意見に異を唱えられなかったりするような状態では、どれだけ優秀な人材がいても、チームの知恵は集まりません。

 人事の視点としては、心理的安全性を“研修テーマ”で終わらせず、日常の会話や会議の在り方に落とし込むことが重要です。

3. Healthy Conflict(健全な対立):対立を避ける文化が、意思決定を遅くする

 調和を重んじ過ぎた結果、会議では全員がうなずき、会議後に不満が噴き出す、という光景が繰り返されます。HPTは、対立を恐れません。むしろ、異なる意見が出ることを前提に、どう扱うかのルールを定義します。

 人事は、意見の違いを価値として扱い、質の高い意思決定に必要なプロセスとして再定義することが求められます。

ヒント

 EYが支援するプロジェクトの中には、クライアントの中で限られた時間とメンバーで成果を追求していくタイプも多くあります。その際、クライアントの中で「Disagree and commit(反対でも、コミットする)」というスローガンを共有していただきました。もし、自分の意見と違う決定がなされた場合でも、チームで方向性を決めたら、自分もそれに対してコミットするというものです。お互いに違う意見があった場合でも、それをまず許容し、そのうえで1つの成果に向かってチームが一致団結するのに役立った考え方です。

4. Accountability(アカウンタビリティ):評価制度だけでは、アカウンタビリティは育たない

 メンバーに改善を促したいことがあっても、期末評価で伝える、と声掛けを先送りにすることはないでしょうか。HPTが行うのは、リアルタイムでの相互フィードバックです。上司から部下へ、ではなく、メンバー同士が行動や成果について声を掛け合う文化です。

 人事は、1on1や評価面談“以外”の日常で、責任が相互に循環する環境づくりを進めましょう。

ヒント

 EYが支援した例では、成果のコミットメントの会話が遠慮がちで、責任が曖昧になりやすいという課題がありました。そこで、そのチームの全員に、コミュニケーションタイプを分析するツールを使い、自分の傾向を把握してもらいました。そのコミュニケーションスタイルをチーム内で相互に開示し、相手のスタイルや自分のスタイルに合わせて、どうすれば、より成果に結び付く言葉掛けができるのか練習してもらいました。直接的な表現を好む人、組織の規範に沿った方法を好む人など、さまざまです。より効果的に行動の改善やチームの成果、組織間の協力、役割と責任について話し合うためのフレームを定義しました。

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人事部は「制度設計者」から「関係性のデザイナー」へ

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この記事の著者

佐野 香奈恵(サノ カナエ)

金融系シンクタンクを経て現職。
チェンジマネジメントプロジェクトを中心としたコンサルティングと、人事制度設計等の人事領域全般において、幅広い業界・テーマでの実績を有する。システム導入プロジェクトのチェンジマネジメント戦略、新規テクノロジー導入に伴う新しい働き方定着のためのチェンジマネジメント等。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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