データで見る電気機器業界のエンゲージメント傾向
まず、電気機器業界のエンゲージメントの傾向を見るにあたって、分析方法と分析結果をお伝えします。
分析方法
本記事では、リンクアンドモチベーションが提供する従業員エンゲージメント向上サービス「モチベーションクラウド」のデータをもとに分析を行います。この調査では、会社基盤や理念戦略などの「全体視点」から、直属上司の情報提供や支援行動、職場の目標共有や変革活動といった「現場視点」まで16領域において、従業員が会社に求める「期待度」と現状の「満足度」のギャップを測定しています。
分析結果
- 電気機器業界全体のエンゲージメントスコア平均は「48.4」であり、全国平均を下回る現状が浮き彫りになりました
- 他業界と比較して全体的に期待度が低く、「仕事内容」「施設環境」「判断行動」に対する満足度は全国平均との差が大きい結果となりました
- 階層別・年齢別のエンゲージメント比較では、特に若手(20代、30代)のエンゲージメントが他業界に比べて低いことが分かりました
- エンゲージメントの高い企業と低い企業の比較でも、特に若手(20代、30代)のエンゲージメントの差が大きいことが分かりました
考察——エンゲージメントの低い企業では「階層間の断絶」が生じており、若手に戦略や顧客価値が伝わっていない
ここで特に注視すべきは、階層および年齢別のスコアにおける顕著な「空洞化」です。部長層や課長層のスコアは全国平均と比べても遜色ないレベルを維持していますが、実務の中核を担い、次世代のリーダーである30代のスコアが大きく低迷しており、全国平均との差も最大になっています。また、20代も全国平均に届いていません。
さらに、同業界でも、低エンゲージメント企業の平均スコアが「42.7」であるのに対し、高エンゲージメント企業は「54.5」と、実に11.8ポイントもの大きな格差が生じていることが明らかになっています。
同じ業界でありながら、なぜこれほどまでにエンゲージメントの格差が生じるのでしょうか。業界全体におけるエンゲージメントとの相関性の高い項目のランキングを見ると、その答えが浮き彫りになります。
電気機器業界全体で、エンゲージメントとの相関性の高い項目の第1位は「階層間の意思疎通」、第2位は「顧客ニーズの伝達」となっています。これは、経営陣や上層部が描く事業戦略や顧客への提供価値が、現場の従業員まで伝わっているかどうかが組織のエンゲージメントに強く影響することを意味しています。
エンゲージメントが低い企業では、組織の目指す方向性と現場の動きが噛み合っていない「階層間の断絶」が起きている状況だといえます。
「管理部門 vs 現場」の構造が生まれる理由とは
このような階層の断絶が生じる背景には、日本の電気機器業界が長年抱えてきた「過去の成功体験」と「大組織病」が関係しています。
1980年代の日本企業は、高品質な製品をつくり、系列会社を通じた垂直統合モデルで大量生産・大量販売を行うことで大きな成功を収めました。しかし、この成功体験が足かせとなって、破壊的な新技術が生まれる中でシェアを奪われる「イノベーションのジレンマ」に陥りました。
過去のやり方を踏襲したり、市場の伸びに脅威を感じることで意思決定が慎重になる上層部や管理部門に対し、顧客や競合の変化を目の当たりにする現場との間で認識のズレが起きているのです。
実際のデータでも、30代の相関性が高い項目の上位には「部下の意見の傾聴姿勢」や「即時の意思決定」が、20代では「即時の意思決定」や「部署内役割責任の明示」が挙がっており、若手ほどズレを感じていることが分かります。市場の変化スピードに対して意思決定の遅い上意下達型の組織体質が、若手や中堅層の熱意を奪い、断絶を生み出す根本的な原因となっているのです。

