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データで見る従業員エンゲージメント<電気機器業界編>

なぜ電気機器業界は「若手の従業員エンゲージメントが低い」のか データで見える“階層間の断絶”と解決策


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電気機器業界におすすめのエンゲージメント向上施策とは

 こうした硬直化した現状を打破し、エンゲージメントを向上させるためには、まず階層間の断絶の解消が必要です。変革を起こそうとすると、組織内には「燃えやすい人」もいれば、変化を嫌って「消火しようとする人」も必ず現れます。しかし経営陣はそうした抵抗に囚われることなく、社内報などを通じて「本気で組織風土を変える」というメッセージを発信し続けることが重要です。

 制度面での有効な取り組みとしては、従来の年功序列から脱却し、上下の結節点となるマネジメント層を登用することが挙げられます。マネジメント層が経営の意思決定や市場の変化を素早く伝達し、社員1人ひとりの役割と責任を明確にし、市場価値を反映したフェアな評価を行うことで、20~30代が不満に感じている「役割責任の曖昧さ」や「不透明な意思決定」を解消し、自律的な挑戦を促すことができます。

電気機器業界のエンゲージメント向上ストーリー——富士通、NEC、日立製作所の例

 実際に、電気機器業界を牽引する大手各社は、独自のアプローチで大規模な組織変革とエンゲージメント向上を実現しています。

富士通:パーパスの浸透とポスティングの大幅拡大

 富士通は「IT企業からDX企業へ」という転換を掲げ、全社パーパスを策定しました。トップダウンの目標だけでなく、「Purpose Carving」という対話型ワークショップを通じて、社員個人の価値観やパーパスを言語化し、会社のパーパスとすり合わせる取り組みを行っています。また、ジョブ型人事制度の導入に伴い、会社主導の配置転換から、社員自らがやりたい仕事に手を挙げる「ポスティング制度」を大幅に拡大しました。

 たとえば、多様な人との会話を通して視野を広げ自らキャリアを考え行動するためのヒントときっかけを得る、対話中心の参加型ワークショップ「キャリアCafe」では、2021~2024年度にかけて、のべ2万5638名が参加。また、16の質問に答えることで今のキャリアオーナーシップの状況を診断し、行動のヒントを提供する「キャリアオーナーシップ診断」は、2022~2024年度で累計3万6979名が活用しています。社員1人ひとりが、キャリア志向や強みに応じて目標を掲げ、自律的に学ぶオンデマンド型教育プラットフォームである「Fujitsu Learning Experience」では、2024年度の受講者数、学習時間ともに2020年度比で5倍以上に伸びています。その結果、グローバルのエンゲージメントスコア平均が6年間で63%から69%へと確実に上昇しています。[1]

NEC:組織のフラット化と1on1による対話文化の醸成

 NECは2022年、意思決定のスピードを上げるため、約150あった組織を約50に統合し、8つの階層を原則6つへとシンプル化しました。2025年度に向けて全社員を対象としたジョブ型人材マネジメントを導入し、適時・適所・適材を実現しています。[2]

 同時に、グループ会社であるNECソリューションイノベータでは、心理的安全性を高めるために「アサーティブコミュニケーション」や、感謝を伝え合う「Thanks/Praise」制度を導入。上司と部下の対話の質を高める「1on1ミーティング」の実施率は80%を超えており、エンゲージメントスコアの大幅な改善(前年度比+7.5pt)に成功しています。[3]

日立製作所:「ラストマン精神」によるV字回復

 2008年度、国内製造業で過去最大となる7873億円の赤字を計上した日立製作所は、この危機を契機に社会インフラ事業への集中を軸とした事業構造改革を断行しました。その際、全社員に対して「最後の責任は自分が取る」という「ラストマン精神」を徹底的に浸透させました。

 また、社内カンパニー制を導入して各部門に経営責任を持たせ、「全社という隠れ蓑」をなくすことで、社員1人ひとりに強烈な当事者意識を持たせることに成功し、歴史的なV字回復を果たしました。[4][5]

おわりに

 日本の電気機器業界が、従来の「ハードウェアを売る」ビジネスから、「知恵とテクノロジーで社会課題を解決する」ビジネスへと進化するためには、上意下達型の組織体質からの脱却が急務です。

 データが示す通り、変革の鍵は「階層間の断絶」を修復し、現場の若手・中堅層に明確な役割と挑戦の機会を与えることにあります。経営層が本気で組織を変革し、パーパスと個人のやりがいを結びつける仕組みを整えたとき、日本の電気機器業界は再び世界をリードするイノベーションを生み出していくことでしょう。

[1]: 富士通株式会社 取締役執行役員専務 CHRO 平松浩樹氏「企業価値を高める富士通の人材戦略

[2]: 日本電気株式会社「2025中期経営計画の実現に向けた事業体制の改革について

[3]: NECソリューションイノベータ株式会社「人的資本レポート2025

[4]: 株式会社野村総合研究所「『知的資産創造 2017年8月号』特集 日本の電機産業復活に向けて 電機産業の事業構造改革

[5]: NTT東日本株式会社「全社員に「自分が責任を取る」精神で日立はV字回復

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この記事の著者

花岡 健太(ハナオカ ケンタ)

株式会社リンクアンドモチベーション コンサルタント モチベーションエンジニアリング研究所 研究員。
東京大学農学部卒業後、大手損害保険会社を経て中途入社。従業員エンゲージメント向上サービス「モチベーションクラウド」やコンサルティングを通じて、100社超の組織変革を支援。現在は、研究員としてデータ分析・活用も担う。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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