候補者体験の向上:AI活用で見えた意外なポジティブ反応
AIを導入して見えた変化と、採用プロセスを見直したことによる手ごたえを山本氏が尋ねると、卯木氏は実際に得られたポジティブな変化を2つ挙げた。
山本 陽司(やまもと ようじ)氏
株式会社MIXI 人事本部/組織戦略部 部長
新卒で大手人材紹介会社へ入社し、製造業向けのキャリアコンサルタントに従事。人事としてのキャリアに挑戦するため、2016年にミクシィ(現MIXI)へ入社。中途採用や評価制度運用、グループ会社の人事労務支援を経て、2025年6月に組織戦略部の部長に就任。現在は、同部にて採用プロセスの変革やHRBP活動を通した組織づくりを推進している。
「1つは、候補者の選考体験の向上です。リモート面接の画面越しでも、メモを取る必要がないため、候補者と向き合った対話ができます。大事なテーマのときこそ、メモをしたくなって目線がずれてしまったり、深掘りが弱くなってしまったりするものですが、今はホットな話が出たときにそれを深掘ることに集中できます。候補者に対してもより誠実な対応ができるようになりました」(卯木氏)
加えて、AIによるメモによって引き継ぎの精度が上がったことで、前の面接と同じ質問をしてしまい、候補者に「1次でも言ったのに」と感じさせることが少なくなったという。
「たとえもう一度同じことを聞きたい場合でも、『1次面接ででこういう話をしてくださいましたけど』と切り出すだけで、印象が変わります。実際に、候補者から『ちゃんと見てくれている、引き継がれている』というお声をいただくこともありました」(卯木氏)
そして卯木氏が感じるもう1つのポジティブな変化は、「HRの付加価値」だ。
「採用はとても実務の工数がかかるものですが、AIによる工数削減によってリソースが生まれている点が大きな変化だと思います。採用だけじゃなく、各組織の課題を解決するために動けるようになりました。たとえば、入社いただく方によりよい入社体験を作れるような組織づくりにも、我々が入り込めていると実感しています」(卯木氏)
一方の新卒採用はどうだろうか。川原氏は、「面接品質の標準化」に手ごたえを感じていると述べる。
「新卒採用は、会社として若手に求めるスキルがどの職種であっても共通している部分があるため、中途採用よりも標準化しやすいと感じています。
たとえば、AIによる要約項目に、MIXIの共感性や共通コンピテンシーを組み込んでおり、面接で聞けていない項目はAIが未確認だと可視化してくれるため、面接官は次にどんな質問をすべきか自然に意識できるようになります。『なんとなく良かった』という感覚的な評価が排除され、システムが自然と面接の質を引き上げてくれる効果を狙っています」(川原氏)
AI活用の成果は、数字面でも顕著に表れている。
「2月半ば時点で約100件の面接を実施しましたが、人事が同席したのは13件のみです。同席率を約90%カットできており、90時間弱の時間削減になっています」(川原氏)
この生まれた時間について、川原氏は「育成や社員サポートなどより付加価値の高い業務に投資していきたい」と語る。

データの「点」を「線」へつなぐ:今後の展望と挑戦
プロセスを見直し、AIを活用した採用に手ごたえを感じている両氏。来年度以降はどのような挑戦を見据えているのだろうか。
「『変化を恐れないワークフローを追求すること』に尽きます。AIの登場により、1年前の正解が2ヵ月後には変わっているような世界観になりました。その変化にちゃんとついていき、意思決定をやり切ることが、未来に対する良い採用を、再現性を持って実現できることだと思っています」(卯木氏)
「AIの導入はゴールではなく、蓄積された構造化データを活用するところが本番です。活躍している社員の面接傾向や退職者の共通点をファクトベースで分析し、戦略的な集客につなげたいと考えています。また、面接データは、候補者本人の思考プロセスや強みのデータでもあります。これを活かし、1人ひとりに適した配属や初期育成プランニングにつなげ、これまでは選考という『点』だったものを、入社後の成長支援という『線』に変えていくことが目標です」(川原氏)
両氏の発言を受けて山本氏は、「MIXIの企業理念であるPMWV(パーパス、ミッション、ミクシィ・ウェイ、バリュー)を実現する、そのための強い組織をつくるというのが組織戦略部のミッションです。採用業務から始まったAI活動は、今後も磨き続けていきたいですし、これをスタートとして強い組織をつくるためのHRBP活動もより強化していきたい」と述べてセッションを締めくくった。
※所属・肩書は登壇時点のものです。

