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将来の事業戦略を実現するためのケイパビリティ型人材マネジメント | 第2回

ジョブ型・スキル型の人材マネジメントはなぜ限界を迎えるのか ケイパビリティ型との比較で読み解く違い

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ケイパビリティ型の特徴と意義

 そこで注目したいのが、ケイパビリティ型人材マネジメントです。

 ケイパビリティ型は、将来の事業戦略を実現するために必要な「組織能力(ケイパビリティ)」を起点に、人材の獲得・配置・育成・処遇を連動して設計するアプローチです。ポイントは、ジョブ型やスキル型を否定するのではなく、これらを包含しつつ、「現在と将来」を同時に見据えて人材マネジメントを設計する点にあります。

 ここでいうケイパビリティとは、単なる個人スキルの集合ではありません。複数の人材・機能・知見が組み合わさることで、事業戦略を継続的に実行・変化させていく組織としての実行能力を指します。環境変化が激しい時代においては、こうした能力をいかに計画的に獲得・更新していけるかが、競争力の源泉となります。

 このアプローチの本質は、人事制度改革そのものではありません。経営戦略が“絵に描いた餅”にならないように、戦略立案段階から「どのケイパビリティが必要か」を定義し、現状の人材ポートフォリオとのギャップを把握したうえで、育成・配置・採用・外部人材の活用を一体で回していくことにあります。言い換えれば、ケイパビリティ型は戦略の実行力を人材面から支えるためのマネジメント思想です。

 さらに、人的資本経営が重視されるいま、どの能力にどれだけ投資し、その結果としてどのような価値が生まれているのかを可視化し、説明していくことが求められています。ケイパビリティ型は、人材投資を将来の事業価値と結び付けて捉える枠組みとしても有効であり、個社の人事施策にとどまらない経営アジェンダとして位置付けることができます。

ジョブ型とケイパビリティ型の比較

 ここまでで述べたことを整理すると、ジョブ型とケイパビリティ型の違いは、大きく分けて①人事制度を組み立てる際の「起点」と、②処遇や成長をどのように設計・運用するかという「運用設計」に分けられます。

①人事制度を組み立てる「起点」の違い

 ジョブ型やスキル型は「現在の事業」や「いま存在する職務・スキル」を起点として、人材配置や育成を設計します。これに対しケイパビリティ型では、将来の事業戦略を実現するために必要な組織能力(ケイパビリティ)を起点に人事制度を設計します。将来像から逆算して、求められる能力や役割を定義し、現状とのギャップを踏まえながら、育成や配置を戦略的に設計していく点が大きな違いです。

 たとえば、新規事業への転換を進める企業を考えてみましょう。従来の事業で求められてきた業務遂行力や既存スキルだけでなく、新たに市場機会を見極める力や、顧客課題を構造的に捉える力、さらには異なる専門性を持つ人材を横断的に組み合わせて価値を生み出す力などが求められます。

 ジョブ型やスキル型では、既存の職務やスキルを前提に人材配置や育成を検討するため、こうした新たな能力の獲得は個別施策として後追いで設計されやすくなります。一方でケイパビリティ型では、こうした将来に必要となる能力をあらかじめ定義したうえで、人材配置や育成を一体で設計する点に特徴があります。

②処遇や成長を含む「運用設計」の違い

 ジョブ型では、評価や処遇はあらかじめ定義された職務要件への適合度を軸に設計されます。育成も、現時点の職務を遂行するうえで必要なスキルの習得が中心となり、配置は既存の職務や役割を安定的に担うことを前提に行われます。

 スキル型では、個人が保有する能力やスキルの可視化を起点に、配置や育成が検討されます。評価や育成は、可視化されたスキル群を基礎に設計される点に特徴があり、現行の事業や役割との適合を高める運用が行われます。

 これに対してケイパビリティ型では、評価・育成・配置が将来の組織能力形成や事業戦略と一体で設計されます。評価においては、現在の成果や職務適応だけでなく、将来に向けた能力拡張や役割拡大への取り組みも考慮されます。

 育成は、中長期的な事業展開を見据えた能力獲得を意図して設計され、配置についても、固定的な職務単位ではなく、組織全体のケイパビリティ強化を視野に入れた柔軟な活用が行われます。こうした運用を支える手段として、AIやデジタル技術による能力の可視化や、社内タレントマーケットといった仕組みが活用されるケースもあります。

 このような運用の違いは、経営戦略の実行力を高めるための人材マネジメントの根幹であり、ケイパビリティ型の導入によって経営戦略と現場の人材施策が密接に連動する体制が構築できるでしょう。

[画像クリックで拡大表示]

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 今回は、企業内に広がる人材ミスマッチの実態を踏まえ、従来型の人材マネジメントの限界と、ケイパビリティ型が求められる理由を整理しました。人材不足と人材過剰が同時に発生する状況は、配置の問題に見えて、実は「将来の事業像」と「人材施策」をつなぐ設計思想の欠如がもたらす構造課題です。

 次回(第3回)は、ケイパビリティ型人材マネジメントの全体像と、推進の中核となる5つの柱(プロセス)をより具体的に解説します。段階導入の現実性や、AIを活用した可視化・マッチングのポイントも含め、実践的な導入ステップを提示します。

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将来の事業戦略を実現するためのケイパビリティ型人材マネジメント連載記事一覧
この記事の著者

久保田 勇輝(クボタ ユウキ)

アビームコンサルティング株式会社 執行役員 プリンシパル 人的資本経営戦略ユニット長

外資系コンサルティングファーム、ソフトウェアベンダーを経て、2022年にアビームコンサルティングに参画。20年にわたり人事戦略・タレントマネジメント領域を統括。現在は人的資本経営戦略チームのリーダーとして、経営・事業と...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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