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【特集】外国人IT人材の採用・活用 最前線 | Part 1

優秀な外国人エンジニアが入社し、長く活躍してくれる条件・施策とは何か――JELLYFISH 取締役 新城 優氏に聞く


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 IT技術者の人手不足は深刻さを増すばかりだ。求人倍率も6倍を上回る。この問題への有効かつ現実的な対応策として外国人エンジニアの需要が急激に伸びていると、海外人材紹介のエージェントとして注目を集める株式会社JELLYFISH 取締役の新城 優氏は語る。日本企業が外国人エンジニアを自社の人材として雇用する上での課題や、成功のポイントなどを同氏にうかがった。

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爆発的な海外人材需要の伸びと「日本語よりもスキル重視」へのシフト

 新城氏によれば、外国人エンジニアを求める日本企業は、2017年の夏ごろから急速に増えてきたという。ちなみに、2018年4月現在の引き合い状況を前年同期比で見ると、伸び率は200%を超える勢いだ。JELLYFISHも昨年まではさまざまな職種の海外人材を扱っていたが、企業からの要望に確実に応えるため、現在はTech領域企業、特にエンジニアの紹介をメインにしている。

 「数として増えているだけでなく、求められる人材像もかなり変化しています。当社が海外人材の紹介を始めた2014年頃は、IT エンジニアでも日本語ができるのが必須要件でした。それが最近は、日本語能力試験3級(日常的な場面で使われる日本語を、ある程度理解できるレベル)程度でも構わないと変わってきています」(新城氏)

新城 優氏
新城 優(しんじょう・ゆう)氏
株式会社JELLYFISH 取締役。
大手人材紹介会社退職後、 株式会社JELLYFISHの取締役と兼任して人材事業統括を行っている。海外現地での人材ビジネス立ち上げ、日本での外国人材ビジネス立ち上げを連続して行っており、特に外国人材ビジネスに造詣が深い。

 中でも中小規模の企業では、日本語必須にこだわらないケースが多い。人数が少なくフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションが可能なため、完璧な会話の能力がなくても何とか意思疎通できるし、ITエンジニアの場合はお互いにコードを見るだけでもほとんど用が足りるのだという。

 さらに、ベンチャー企業の場合、「資金調達はできたが人の募集が難しい」といった切迫した事情があるほか、グローバル展開が前提であるため、そもそも日本人である必要が少ない。ブロックチェーンが分かればよいなど、「エンジニアとしての要件を満たせば、日本語能力にはこだわらない」という、小規模で開発指向ならではのフットワークの軽さもある。

 なお、JELLYFISHに登録しているのは、90%以上が日本に在住している外国人だという。わずかに留学生もいるが、日本の就職市場では留学生は新卒にカテゴライズされてしまう。同社を利用する企業のほとんどは即戦力を求めているため、国内での勤務経験があり、雇用習慣や商習慣などにもある程度通じている経験者が需給の大半を占めていると、新城氏は説明する。

「スキルがあるから」ではなく「仲間に育てる」気構えがないとダメ

 外国人エンジニアと一口に言っても、能力は人によってさまざまだ。日本企業が求める外国人エンジニアの、“即戦力” のスキルレベルはどれくらいなのか。

 「お客様によって業務や必要なスキルがそれぞれ異なるので、一概に『このレベル』と示せる指標はありません。『これが必要』というよりは、むしろ『お客様の求めるスキルレベルに達している』こと自体が、即戦力かどうかの判断基準といったほうがよいかもしれません。それだけに、当社がお客様とエンジニア双方の希望をよく吟味しながら、最適なマッチングを行う責任を強く自覚しています」(新城氏)

 とはいえ、求人の申し込みがあった際に、最短の時間で効率よく紹介できる環境は整えておく必要がある。その一環としてJELLYFISHでは、登録してきた外国人エンジニアの日本語能力のレベルをある程度、階層分けしてリスト化している。

 ただし、新城氏は、日本語能力ばかりに着目するのは得策ではないという。入社してきた外国人エンジニアがいくら会話に堪能でも、きちんと受け答えしてくれる仲間がいなくてはコミュニケーションそのものが育たない。また、日本語の会話はかなりできる人でも、細かな商習慣や日本社会独特の含み、言い回しなどは、そのつど周囲が教えてあげなくては分からないこともある。

 「日本語が分かるから」と採用しただけでは、組織の一員になることは難しい。特にJELLYFISHの紹介する人材は、すべて正社員採用が条件となっている。それだけに「仲間に入れて育てる」視点が不可欠だ。

 「そういう意味で、社内に英語ができて必要な時にサポートしてあげられる日本人社員がいるとか、積極的に研修を実施して外国人を自分たちの組織に取り込もうという意欲の高い企業は、やはりうまくいっているケースが多いですね」(新城氏)

 “飲みニケーション”などの環境を積極的に作って理解を深めていくといった点は、日本人と何ら変わるところはない。「日本人が来ないから外国人を入れよう」ではなく、自分たちのビジネスを一緒に担う仲間として受け入れる気構えや土壌がないと、せっかく迎えた優秀な人材がいつまでも馴染めないで終わってしまう可能性もあると、新城氏は指摘する。

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この記事の著者

工藤 淳(オフィスローグ)(クドウ アツシ)

出版社や制作会社勤務の後、2003年にオフィスローグとして独立。もともと文系ながら、なぜか現在はICTビジネスライター/編集者として営業中。 得意分野はエンタープライズ系ソリューションの導入事例からタイアップなど広告系、書籍まで幅広く。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

市古 明典(IT人材ラボ ラボ長)(イチゴ アキノリ)

1972年愛知県生まれ。宝飾店の売り子、辞書専門編集プロダクションの編集者(兼MS Access担当)を経て、2000年に株式会社翔泳社に入社。月刊DBマガジン(休刊)、IT系技術書・資格学習書の編集を担当後、2014年4月より開発者向けWebメディア「CodeZine」の編集に参加。その後、資格学...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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