統計知識やモデリング手法よりも重視する能力
――御社が求めるデータサイエンス人材とはどのような人物像なのでしょうか。
私たちはデータサイエンティストを育成しようとしているわけではありません。世の中ではデータサイエンティスト不足が問題視されていますが、データサイエンティストとコミュニケーションしながらビジネスの意思決定に寄与する「リエゾン」的存在の人材を育てようとしています。銀行ですから数字を扱うことは当然として、経験則に頼らずに意思決定をするには、数字をベースにビジネス仮説を立て、解決しなければいけない問題を的確にデータサイエンティストへ伝えることが求められます。
そのために必要なのは、データサイエンティストの仕事をある程度理解し、かつビジネスの意思決定ができる能力です。そうして、データサイエンティストと協業できる人材の育成に取り組んでいます。
――必要なのは、データサイエンティストとビジネス側の間をつなげる人材だと。
ビジネスには必ず解決しなければならない課題があります。その時に、「売上が下がっている」と伝えるだけでは不十分で、売上の中身やデータによる裏付けなど、データサイエンティストが理解できる言葉に置き換えることが必要です。加えて、仮説を提示した上で検証を依頼する必要がありますが、それはデータを日頃から使っていないとできないことなのです。
重要なのは、統計知識やモデリング手法よりも、むしろ伝える能力と読み取る能力です。仮説を実証するためにどのようなデータが必要かを突き詰めることができれば、そこから先はソニーグループのデータサイエンティストにサポートしてもらうこともできますからね。
ビジネス側も数字を見ていなかったわけではないと思いますが、どれだけ「自分ごと」として捉えることができていたかが違っていたと思います。数字が下がっているとしたら、その裏で何が起きているのか。そこを深掘りして、自社の狙いとお客様との間にギャップができているところまでは突き詰めていなかったのではないでしょうか。そこまでできるようになるには、やる気や興味がないと難しいと思います。